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ステマと美容医療 Vol.2 ステマを疑う目が求められる、消費者庁による検討会を振り返って考える②

カレンダー2023.11.12 フォルダー連載・コラム

ポイント

  • ステマと判断することが難しい「グレーゾーン」の投稿やレビューも存在
  • ステマの基準が曖昧なままでは、消費者がステマの加害者となる可能性も考えられる
  • 消費者による報告により、ステマが起こりにくい土壌を育てられる可能性

 2023年10月1日から、ステルスマーケティング(以下、ステマ)は、景品表示法違反となった。ステマとは、広告であるにもかかわらず、広告であることを隠すこと。とくに化粧品・美容・健康系といったコンプレックスにかかわる商材に多いとされ、美容医療とも無縁でない。

 規制が制定される以前のステマの実態とは、どのようなものだったのか。そして、今後広告を見る場合に気をつけることはあるのか。規制の制定にあたり、2022年9月16日から12月27日まで8回にわたって行われた、消費者庁による「ステルスマーケティングに関する検討会」を振り返りながら、美容医療を検討するに当たり注意すべき点について考えていく。今回は第2回。

法規制がない時点でのステマの実情

ステマが紛れている。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

ステマが紛れている。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 2回目の検討会は、事業者と事業者団体による「ステマを防止するための取組状況」および「ステマ規制に対する考え方」をヒアリングする内容で行われた。

 参加した企業は、広告代理店であるオプト、広告主とインフルエンサーをマッチングさせるプラットフォームを運営するリデル、化粧品の口コミサイト「アットコスメ」を運営するアイスタイル、「TikTok」を提供するBytedance、「Twitter(現X)」の運営会社の合計5社。

 オプトとリデルの説明によると、法規制がない時点においても、インフルエンサーに対して広告業務を依頼する場合は、PRと分かるように表示することを徹底しているようだ。

 しかし、実際としては、以下のような状況もあったという。

 「『#PR』という表示の認知が高い中で、広告主から『アド』や『スポンサード』『コラボ』といった、広告と分かりにくい書き方を要望されることもあった」(オプト)

 「ステマを行うとフォロワーの信頼性を失う(ので、やらない)と考えるインフルエンサーが存在する一方で、広告主から依頼を受けてPRを行うと、フォロワーからの信頼を失ってしまう(ので、ステマを引き受けた)というインフルエンサーも一定数存在する」(リデル)

 さらに、ステマと発覚した際のインフルエンサー個人の対応にも差があり、修正などに応じなかったという例もあるそうだ。

ステマにおいて「グレーゾーン」は存在するのか

どこからがステマ?写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

どこからがステマ?写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 広告であることを隠す、明らかなステマが存在する一方で、「ステマに当たるのか判定できない」といった、グレーゾーンの投稿やレビューがあることも否定できないようだ。

 具体的には、サンプルのプレゼントや、「ハッシュタグをつけてSNSに投稿すると、抽選でプレゼントがもらえる」といった場合はステマになるのだろうか。

 上のような例は、「投稿をマストにしなければステマにはならない」など、企業によって線引きをしている場合が多いという。

 さらには、「ポイントの付与ならばPR表記はしなくてもいい」「イベントなどに招待し、物を提供した分についてはPR表記が必要だが、体験に関しては不要」といった、独自の解釈を用いる企業も存在するそうだ。

 いずれにしても、統一された規制がない状態では、一般の消費者にとってはどこからがステマであるのか認識しにくいのが現状である。

 さらには、知らない間に自らがステマの加害者となってしまう可能性もあるのかもしれない。

消費者同士がけん制し合える可能性

ステマを疑う。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

ステマを疑う。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 例えば、「レビューを投稿すると代金をキャッシュバック」「3000円ほどの商品を、レビューすることで実質100円で買える」といった話を聞いたことはないだろうか。

 もしかすると、美容医療においても、傾向が類似した広告が存在したことがあるかもしれない。

 法規制がない状態においては、このような条件下で購入したものを「一般消費者」としてレビューすることは、グレーゾーンに位置するとみなされているようである。

 その対策として、アイスタイルでは、該当するような商品が「購入品」としてレビューされた場合、会社側で口コミのフラグを「モニター」に変更し、投稿者に連絡をして媒体のポリシーを説明しているという。

 さらに、ユーザー側から「この投稿はおかしいのではないか」と通報できる機能もあり、実際に通報が届くこともあるという。

 ユーザーから「報告する」といったアクションができる機能は、様々なプラットフォームに存在し、それを使って消費者同士がけん制し合い、ステマが起こりにくい土壌を作っていくことは望ましいかもしれない。

 ただ、企業が変われば基準に差があり、グレーゾーンが存在する中で、消費者がステマを見極めることは難しいと言えるだろう。

 投稿やレビューに関わるルールが複雑であったり、厳しくなりすぎたりすることで、参考になるはずであった口コミなどが減少してしまうことも、懸念される要素の一つである。

ステマのない土壌を築いていくために

ステマの課題。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

ステマの課題。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 検討会に参加した「TikTok」や「Twitter(現X)」をはじめ、様々なプラットフォームにおいては、あらかじめ広告と個人の投稿を分ける仕組みが取られている。

 しかし、そもそもステマは広告と分からないように行うことが目的のため、この方法でステマを防止することは難しいようである。

 さらに、SNS上で「不正レビュー」の募集が行われている可能性についても、その投稿のみで、投稿者に「媒体に対するポリシー違反」を訴求できるか、という点では判断が分かれるようである。

 参加した企業の中には、法規制の必要性を訴える企業も複数あり、その「実効性の担保」に加え、「各手法はサイクルが早いので、それに対応できる法規制が望ましい」といった意見も挙げられた。

 広告を見る立場においても、「これはステマなのではないか」という視点を持つことに加え、新しい手法に対して違和感を覚えられるような、「踊らされない意識」が必要なのだろう。

参考文献

ステルスマーケティングに関する検討会
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/meeting_materials/review_meeting_005/

第1回 ステルスマーケティングに関する検討会(2022年9月16日)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/meeting_materials/review_meeting_005/029951.html

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Author

永田未来

永田未来

フリーライター。主婦と生活社を経て独立。美容やヘルスケア関連を含めた多彩な分野で執筆やインタビュー取材に対応。日本で数少ないヘアライターとしての執筆にも力を入れている。音楽誌および女性誌編集者の経験をベースにした分かりやすい情報発信を強みとする。

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