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エクソソームをもっと理解するための9つキーワード、「EVs」「ISEV」「miRNA」「CQA」……日本再生医療学会の講演から振り返る

カレンダー2024.3.24 フォルダー 国内

 エクソソームは美容医療で話題になることが多いが、医療全体にとって大きな注目を集めるようになっている。

 2024年3月21日から23日まで新潟市で第23回日本再生医療学会が開かれたが、エクソソームへの注目度は昨年と比べても大きかったように見えた。

 その講演でよく話に出てきた用語を参考に、今後もエクソソームに関連した話題の中で語られることが増えてくると予想される9つのキーワードを紹介する。

「細胞外小胞」の中の一つ

キーワード1「EVs」

 EVsとは「細胞外小胞」を意味する「extracellular vesicles」の略称で、細胞から分泌される微小な膜構造を持つ粒子のこと。

 この中には様々な「機能性分子」を含み、この機能性分子は細胞同士がコミュニケーションを取り合うツールとして機能している。エクソソームはEVsの中でも特に細胞内の「エンドソーム」と呼ばれる泡状の構造物から発生する粒子で、サイズが約100nm(ナノメートル、ナノは10億分の1)のものをいう。エンドソームは細胞の物質交換を司る重要な役割と持ち、エクソソームはこのエンドソームから生まれるものとして、細胞間コミュニケーションの鍵を握っている。この仕組みが美容医療を含めて医療分野で応用されようとしている。

キーワード2、3「ISEV」「JSEV」

 エクソソームに関連して、国際的な団体と日本の団体が存在する。ISEVは国際細胞外小胞学会(International Society for Extracellular Vesicles)、JSEVは日本細胞外小胞学会(Japanese Society for Extracellular Vesicles)の略称。

 2011年にISEVが設立され、ISEVは細胞外小胞の定義や名称の整備、研究に関するガイドラインなどの制定を行っている。ISEVからは、細胞外小胞を一括して「EVs」という名称の使用が推奨されるなど、エクソソームに関わる世界的な方針が定められることが多く、今後も注目されることが予想される。

細胞から発生するエクソソーム。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

細胞から発生するエクソソーム。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

キーワード4、5、6「CD9」「CD63」「CD81」

 エクソソームを抽出する方法には、粒子の表面に存在するタンパク質を目印として利用する手法がある。「CD9」「CD63」「CD81」は、細胞のタイプを表しており、エクソソームはこれら3つのタンパク質を持つことが特徴であることが知られている。

 エクソソームは幹細胞などから分泌されるが、エクソソームだけを収集することに課題がある。そのときにエクソソームを見分けるためにCD9、CD63、CD81を持つ細胞のみが選択されており、エクソソームの品質についての話題が出たときに、このキーワードも重要な考え方として注目される可能性がある。

キーワード7「miRNA」

 miRNAは「マイクロRNA」の略称で、エクソソームに含まれる機能性分子の一つとなる。

 miRNAは、細胞間コミュニケーションのときに重要な役割を果たす。一般的にRNAというと、DNAからタンパク質が合成されるプロセスで、その情報を伝達するmRNA(メッセンジャーRNA)がよく知られている。それに対して、miRNAはタンパク質の合成には直接関与しないものの、DNAからタンパク質が合成されるプロセスにおいて調整役として機能することが知られている。エクソソームの機能について理解するときに、miRNAが話題に上ることがある。

2025年めどにエクソソームの品質管理に関わるガイドライン作成へ

細胞外小胞、エクソソームに関連する話題が注目された第23回日本再生医療学会。(写真/編集部)

細胞外小胞、エクソソームに関連する話題が注目された第23回日本再生医療学会。(写真/編集部)

キーワード8、9「CQA」「ICH」

 CQAは 2024年の第23回日本再生医療学会総会で頻繁に語られた言葉だった。これは「critical quality attributes」の略称で、エクソソームの品質に関わる重要な品質特定のことをいう。日本語では、「重要品質特性」と表される。ICHは、「医薬品規制調和国際会議」を意味し、医薬品の品質、安全性、有効性に関するガイドラインを定める国際的な組織のことをいう。

 エクソソームは細胞から発生するものであり、品質のバラツキが課題となる。この品質を一定に保つためにCQAに焦点を当てて、それが一定の基準を満たすようにすることが重視されようとしている。品質管理に当たってはICHのガイドラインが参考にされる。第23回日本再生医療学会総会の「EV研究の臨床への展開、国際標準の中で今、日本が進めるべきことは(JSEVとのジョイントシンポジウム)」での国立医薬品食品衛生研究所生物薬品部長の石井明子氏の講演によると、日本でも25年をめどにエクソソーム関連の品質管理に関わるガイドライン整備が進んでいるという。今後、エクソソームの実用化が進んできたときに話題になることが増えると予想される。

 エクソソームに関連する用語としてはほかにもあるが、日本再生医療学会の講演を振り返り9つを抜き出した。今後、エクソソームは本格的な実用化に進んでいくと予想され、ここの挙げた言葉を聞くことも増えることになりそうだ。

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ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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