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発展途上のエクソソーム、美容医療への期待とリスク

カレンダー2024.1.23 フォルダー最新研究

ポイント

  • 美容皮膚科の医学誌でエクソソームの現状が解説されている。
  • エクソソームは病気の治療や美容医療などへの応用が検討されている。
  • 有効性を裏付ける研究の多くは細胞や動物の実験。
エクソソームの効果や安全性とは?写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

エクソソームの効果や安全性とは?写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 エクソソームをめぐっては、国内外で事故が報告されており、エクソソームについて心配の声も上がっている。国内では規制の動きもある。

 2024年1月、美容皮膚科の医学誌でエクソソームの一般の医療や美容医療分野での応用についての最新情報が公開された。これを踏まえて、エクソソームの課題について振り返る。

エクソソームはどのような働きを持つのか

エクソソームは膜に囲まれた粒子。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

エクソソームは膜に囲まれた粒子。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 米国の皮膚科研究グループが美容皮膚科の医学誌であるジャーナル・オブ・コスメティック・ダーマトロジーで報告している。

 エクソソームとはどういうものか要点を列挙すると次の通り。

  • エクソソームとは? → エクソソームは、私たちの体の中の細胞から出る小さな粒子。それぞれの粒子は脂肪の層に包まれ、細胞が健康を保つために必要な物質が入っている。
  • エクソソームの役割 → これらのエクソソームは、細胞同士が情報を伝え合うのに重要な役割を持っている。体の中で細胞がコミュニケーションを取るのを助ける小さなメッセンジャーのように機能する。

 エクソソームの機能と、どのような利用が考えられているかを整理すると次のようになる。

  • 特定の細胞をターゲットに → エクソソームは、特定の細胞だけを狙って治療するような活用が考えられている。
  • バイオマーカー → 病気を診断したり、どれくらい進行しているかをチェックするために役立てられることが考えられている。
  • 治療薬のデリバリー → エクソソームは、薬剤を効率的に病気の部位に届けることができると考えられている。
  • ワクチン → エクソソームは、免疫の反応を引き出すことで、予防や治療に使われることも考えられている。
  • 遺伝的なリプログラミング → 細胞の遺伝的な性質を変えて、病気を根本から治療することも考えられている。
  • 細胞の周りの環境を変化 → 細胞の周りの環境を整えることで、組織の修復や再生を助けることが考えられている。

 このような機能を生かして、がんの治療や病気の早期治療、再生医療、美容医療などへの応用が考えられている。次のような研究が行われている。

病気の治療におけるエクソソームの研究

  • 心血管疾患やがんの治療効果を検証 → 心血管疾患やがんなど、いろいろな病気の治療でエクソソームの効果が検証されている。
  • 薬の運び屋 → エクソソームは「薬の運び屋」で使われる可能性があり、薬を効率的に体の必要な部分に届けられないか検討されている。
  • 外傷性脳損傷や炎症性皮膚疾患への応用 → ケガによって脳にダメージを受けた状態を治すための研究が進んでいるほか、アトピー性皮膚炎などの皮膚に炎症を起こす病気の治療のための研究が進められている。

美容医療におけるエクソソームの研究

  • 傷の治療や若返り → エクソソームは、傷の治りを早めたり、皮膚を若返らせるのに役立つ可能性が検討されている。
  • 抜け毛や脱毛症の治療 → 抜け毛や脱毛症の治療についての研究が進められている。

国内外で事故が発生

幹細胞の培養上清液で死亡事例。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

幹細胞の培養上清液で死亡事例。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 一方で、エクソソームの課題や限界については次のように書いている。

  • エクソソームの新しさ → エクソソーム療法はまだ新しい方法で、今のところ、動物や細胞を使った研究がほとんど。
  • FDA承認と標準化の欠如 → エクソソーム注射は、米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けておらず、治療法も標準化されておらず、安全性については明らかではない。
  • 慎重な判断が必要 → エクソソームの使用を考えている人は、潜在的なリスクについて理解する必要がある。効果や安全性を確認するためにさらに多くの臨床試験が必要。

 エクソソームをめぐる注目すべき出来事として次のようなことがある。

  • 米国ネブラスカ州で、エクソソームを使用した治療を受けた人が病気になる事故が発生。
  • 日本でも、エクソソームを含むとされる幹細胞培養上清を使った治療で死亡事例が報告されている。
  • 美容医療の分野ではすでにエクソソームが利用されているが、日本再生医療学会はその規制の必要性を指摘。

 エクソソームの利用には大きな期待が寄せられている一方で、多くの課題もあり、それらを解決していく必要がありそうだ。

参考文献

Yousefian F, Espinoza L, Yadlapati S, Lorenc ZP, Gold M. A comprehensive review of the medical and cosmetic applications of exosomes in dermatology. J Cosmet Dermatol. 2024 Jan 16. doi: 10.1111/jocd.16149. Epub ahead of print. PMID: 38226413.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38226413/

エクソソーム規制強化、美容医療ルール作りに注目、日本再生医療学会が厚労省で提言
https://biyouhifuko.com/news/japan/4254/

エクソソームとPRP、2030年に向けて大幅成長の予測、その理由とは?
https://biyouhifuko.com/news/japan/4224/

エクソソームの安全性に注目集まる理由、幹細胞培養上清液での死亡事例の報告がきっかけに
https://biyouhifuko.com/news/japan/4036/

再生医療連載Vol.3 エクソソームとはそもそも何か──第22回日本再生医療学会総会の会議を通して考える
https://biyouhifuko.com/news/column/1159/

エクソソームの応用を加速させるか、PMDA科学委員会が「EV」の品質と安全性に関する報告書を発表
https://biyouhifuko.com/news/japan/798/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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