ボツリヌス療法の効果は気候に左右される可能性がある。
英国の研究グループが、2024年7月に米国形成外科学会(ASPS)の公式論文誌で発表した。
日照量がボトックスの効果に及ぼす影響
ボツリヌス療法は神経に効果を発揮する薬。眉間のシワのように、筋肉が緊張してシワを作る状態を改善するために使われる。
世界で見ると、非外科治療の中ではボツリヌス療法は最も多く実施されている治療であり、2022年には年間870万回以上が実施されたと推測されている。
ボツリヌス療法の効果に影響する要素は複数あり、筋肉量、性別、年齢などが知られている。一方で、今回注目されたのは気候の影響だった。
今回の研究では、英国の研究グループが高日照のマルタ共和国と低日照のロンドンという2つの地域でボツリヌス療法を受けた女性を比較して気候の影響を調査した。
高日照グループは292人、低日照グループは231人が参加した。マルタ共和国では夏季に、英国では冬季に治療を受けたときの効果がそれぞれ調べられた。
いずれのグループも、経験豊富な形成外科医が標準的な技術により額の筋肉にボトックス注射を行った。医師が注射を行い、追加の受診時に完全に筋肉のまひを達成するために必要な追加投与量が測定された。
気候に基づくボトックス治療の調整が必要
明らかになったのは、高日照のマルタ共和国で夏季に治療を受けた場合、ボツリヌス製剤がより多く必要になることだ。
具体的には、低日照グループでは平均投与量が27.3ユニットだったのに対して、高日照グループでは29.2ユニットと多くの量が必要だった。追加投与量も低日照グループでは平均1.98ユニットだったが、高日照グループで2.24ユニットとやはり多くの量が必要だった。
この差が生じる理由として、日照量の多い地域では額の筋肉が発達し、頻繁に機能するためである可能性が指摘されている。また、気温の上昇や日光そのものが製剤の効果に直接影響を与える可能性もあると考えられている。
この研究結果は治療費に大きな影響を与えないものの、医師のテクニックや治療の方法に影響を与える可能性があるという。
日本でも地域によって日照量は変わるため、ボツリヌス療法の効果を考える際に参考になるのかもしれない。