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美容手術中の緊急事態、皮膚科医師の約半数が経験、気絶や低血圧、けいれんなど、トルコの研究グループが調査結果を明らかに

カレンダー2024.8.29 フォルダー最新研究

 美容医療のトラブルには手術中に起こるものもある。では、美容手術中の緊急事態はどれくらい起こるものなのか。

 トルコの大学の研究グループが2024年7月に報告した調査によれば、約半数の医師が皮膚科の処置や外科手術中に緊急事態を経験しており、約4割が美容手術中に同様の事態を経験したことがあると判明した。

気絶を起こすケースを経験

非外科的治療でも緊急事態に陥ることがある。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

非外科的治療でも緊急事態に陥ることがある。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 今回の論文によると、皮膚科の処置や手術は一般的には安全と考えられているものの、手術に関する緊急の合併症についてはあまり報告されてこなかったという。特に美容手術での実態についての研究が少なかった。

 そこで、研究グループでは、皮膚科の医師が日常的に直面し得る緊急事態の実態を調べるため、トルコの皮膚科を専門とする医師240人を対象としてウェブアンケートを実施した。

 調査によると、皮膚科医が最も頻繁に報告した緊急事態は「血管迷走神経性失神」(いわゆる気絶)で、これは皮膚科の処置および外科手術中で58%、美容手術中でも38.6%に発生した。また、低血圧や出血が28%、けいれんが10%という結果も示された。

 美容手術中では次の通りで、美容手術中でも気絶や低血圧/出血などの緊急事態が起きていることが分かる。

症状 人数 割合
血管迷走神経性失神 75人 38.6%
低血圧/出血 27人 13.9%
けいれん 11人 5.6%
アナフィラキシー 6人 3%
過換気症候群 6人 3%
心停止 1人 0.5%

※アナフィラキシーは、強いアレルギー反応によって全身に症状が現れること。また、過換気症候群は、緊張やストレスなどで呼吸が速くなりすぎて、呼吸困難になること。

ボツリヌス療法やフィラー注射でも問題は起こる可能性

気絶や低血圧などの緊急の合併症が報告されていた。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

気絶や低血圧などの緊急の合併症が報告されていた。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 緊急事態が発生しやすいと報告されたのは、特に皮膚の組織の採取(生検)や皮膚内部への注射中(ボツリヌス療法やフィラー注射など)などだった。例えば、生検中に血管迷走神経性失神が頻発していたほか、ボツリヌス療法やフィラー注射の施術中に同様の事態が発生しやすかったと報告されている。

処置 人数 割合
生検 82人 34%
皮内注射 65人 27%
冷凍療法 28人 12%
切除術 28人 12%
電気焼灼 14人 6%
爪の手術 19人 8%
皮膚移植 2人 0.8%

※冷凍療法は液体窒素でイボを取る時など、凍結させることで行う治療のこと。電気焼灼は高周波電流によって皮膚を焼く治療のこと。

 この調査では、皮膚科医の緊急事態への対応力の知識にも注目が集まっている。調査では、若手の医師や救命措置訓練を受けた医師が、緊急事態への対応に関する知識が高い傾向にあることが示された。一方で、ベテランの医師やプライベートクリニックで勤務する医師に救命措置に関する知識が不十分であるケースが見られた。研究チームは、皮膚科医が緊急事態に備えるために救命措置の定期的な訓練の重要性を強調している。

 この研究は海外のものであるが、非外科的治療でも緊急的なトラブルが起きる可能性があることをあらかじめ理解しておくことが重要だ。

参考文献

Kaya Erdogan H, Sahin Tekin M, Agaoglu E, Sanal Bas S, Acer E, Saracoglu ZN, Bilgin M. Emergency complications during dermatological, surgical, or cosmetic procedures: A cross-sectional study among dermatologists. J Cosmet Dermatol. 2024 Jul 20. doi: 10.1111/jocd.16479. Epub ahead of print. PMID: 39032133.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39032133/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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