2024年10月18日、厚生労働省が「「美容医療の適切な実施に関する検討会」第3回会議を開催する。
医師が注目する「直美」問題
- 直美→ 初期研修を終えた直後に後期研修を経ずに美容医療に進む医師を指す。こうした若手医師が増加している。
- 美容医療の問題→ 未熟な施術による健康被害や、高額な費用を伴う不要な施術など、トラブルが増加している。
- 形成外科医師の懸念→ 「直美」では医師としての倫理観が十分に身につかないことが問題視され、国の対応が注目されている。
第3回では、有識者からの意見が示される予定で、医学会から見た美容医療の課題や提案などが出される予定になっている。このほか前回からの意見への対応や医療の質の向上についての問題が話し合われる予定だ。
それについてはヒフコNEWSでも速報でお伝えする予定だ。
これに先立って、10月17日から第33回日本形成外科学会基礎学術集会が都内で開催され、そこで国内の形成外科関連の医師に話を聞く機会があった。私は特にテーマを絞らずに、「形成外科に関連した動きで何に注目しているか」と聞いたところ、異口同音に「直美の問題に注目している」という答えが返ってきた。ほかにも当然形成外科分野の臨床の問題などもあるとは考えるが、美容医療における直美の問題がどうなるかに、形成外科の医師は関心を持っている。
念のために補足すると、直美というのは、医学部を卒業した後に、2年間の初期研修を終えた直後から、美容医療の道に進むことを指している。日本の制度では、医師が一般の臨床で医療を提供するためには、2年間の初期研修が義務付けられており、そこでは医師としての基本を身に付ける必要がある。それを終えた後、専門性を磨くために後期研修に進むことができるが、そうではなく、美容医療に直接進むという選択をする医師が増えている。直接、美容医療に進むから直美という。
形成外科の医師は、美容医療のトラブルが増加していることも注目していた。トラブルの中でも健康に関する被害が起こる背景として、未熟な施術が行われている可能性があるとの見方がある。また、美容医療の現場で、必要ではないと思われる施術が無理やり行われて、施術を受けた人が後悔するような事例、高額な施術費で経済的な被害が起こっていることも問題になっている。
形成外科の医師からは、「直美では医師としての倫理観が身につかないことを懸念している」という声が聞かれた。
念のために、なぜ形成外科の医師が美容医療に関心を強く持つかについても補足すると、形成外科とは、けがや先天異常、がんによって体の形が整わない状態になった人を治療し、形を整える医学の分野で、この専門分野の中に美容医療の領域も含まれているからだ。そのため形成外科の医師にとっては美容医療は重要なテーマになる。
形成外科分野の医師に話を聞くと、直美ではなく、初期研修を終えた後において、形成外科の専門性を十分に磨いた上で、美容医療の道に進むことが望ましいという考えが聞かれる。
形成外科の医師は、直美を選ぶ若手医師が増える状況に対して、国がどのような対策を打つのかに注目していると言える。
規制強化が進むオーストラリアの医師の声
- TAAT国際会議→ 「The 1st Aesthetic and Antiaging Tokyo(TAAT)」が日本形成外科学会基礎学術集会の一環として開催され、海外からも医師が参加。
- オーストラリアの美容医療規制→ 規制強化が進められており、特にタスマニアではフィラー施術が認められた施設でのみ実施可能。現地の医師は規制を前向きに捉えている。
- パパドプーロス医師の意見→ 美容医療は一般医ではなく、認定された専門医が行うべきだとし、規制強化を歓迎している。
日本形成外科学会基礎学術集会では、国際会議として「The 1st Aesthetic and Antiaging Tokyo(TAAT)」も開催され、海外からの医師も参加していた。
オーストラリアで美容医療に取り組む形成外科医のDR.TIM院長、ティム・パパドプーロス氏が講演していたため、オーストラリアの医師としての立場の意見を聞いた。オーストラリアは美容医療の規制強化を継続的に進めており、日本で美容医療のルールについての議論が進む中で、その国の医師が規制強化についてポジティブに捉えているのか、あるいは意外とネガティブにとらえているのかに関心を持ったからだ。
例えば、オーストラリアでは全域で規制強化が進められているものの、タスマニア島では特に規制が厳しく、フィラー施術は認められた施設でのみ実施できるようになっている。
パパドプーロス氏は、「美容医療が一般医(GP)で行われるのではなく、学会に認定された医師が行うようになる。規制は良いことだと考えている」と述べた。オーストラリアでも美容医療に関連したトラブルが起きており、それをきっかけに規制強化が進んでいるが、現場の医師はそれを前向きにとらえていると確認された。
これから厚労省の検討会でどのような方針が示されていくだろうか。