美容外科手術を希望した後に、キャンセルを申し出た人が、クリニック側から高額な解約料を請求され、それに不満を抱き支払いを拒否したことによってトラブルが発生した。結果として和解に至り、その経緯が公表された。
国民生活センターが2024年10月9日に、トラブル解決の事例の一つとして発表している。
280万円の手術を事前にキャンセル
国民生活センターは「紛争解決委員会」で、消費者が巻き込まれたトラブルを解決する取り組みを続けている。これは『ADR(裁判外紛争解決手続)』と呼ばれる。同センターでは、ADRで対応したトラブルのうち、重要なケースを公表している。10月にもいくつかの事例を公表しており、この中に今回の美容外科手術の契約解除に関するトラブルが含まれている。
今回、問題となったケースで、交渉を申請した人物(以下、申請人)は、骨切りの技術を得意とする医師のSNSを見て、手術を希望するようになった。そこで23年7月下旬に、月1回クリニックで開催しているカウンセリングを受け、フェイスラインを整える美容外科手術『Vライン形成手術』を勧められた。10月下旬を手術予定日として280万円の契約を結んだ。
しかし、申請人によると、その後、10月上旬に、施術直後に人と会う予定ができたことから手術日の延期を希望。契約では、2カ月以内の延期は施術費用の20%を支払うことで最長6カ月の延期が可能とされていたが、クリニックは外部の医師に依頼しているため、医師の出張スケジュールを理由に延期ができないと回答した。キャンセルの場合は、手術料の50%が必要と説明した。
申請人は術後の「ダウンタイム(回復期間)」が予想以上に長くなる可能性があることも心配となり、10月中旬に、結局、手術の解約を申し出ることにした。これに対して、クリニック側は契約金額の80%にあたる約230万円のキャンセル料を請求した。
10月下旬、申請人は消費生活センターに相談したが解決に至らず、230万円の解約料に納得せず、信販会社に対しても支払いの停止を求めた。結果として、手術費用の50%に当たる和解金を分割払いする案が提示された。クリニック側は、手術の医師に加えて、麻酔科医や看護師3人の専門チームでの支払いが必要で、譲歩できないと主張した。信販会社も手数料を軽減し、月4万2000円の36回払い、合計150万円という条件を提示した。結果として、申請人はこの条件を受け入れたことで、最終的に和解が成立した。
キャンセル料を巡る紛争の経緯
美容外科手術は高額な費用がかかり、解約を希望した場合にキャンセル料も高額になりやすい。その際、手術予定日の延期や解約などの契約内容に関連してトラブルが発生することはよくある。今回のケースでは、280万円という高額な手術費用に対し、キャンセル料が80%(230万円)という大きな負担となり、術後のダウンタイムやリスクを心配し、キャンセルを希望することになった。
美容医療では、施術前のカウンセリングが重要だが、十分な理解がないまま契約に進むことがトラブルに発展する可能性はある。また、今回のように、医師のスケジュールや施術日程の調整が困難な状況では、キャンセルや日程変更が制限される可能性が高く、思わぬトラブルに直面することもある。美容医療の契約では、リスクや解約についての条件を確認することは重要だ。
もう一つ、このトラブルでは、医師がクリニックに所属していないことが問題となった。そうした医師の所属を確認しておくことには意味があるだろう。