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美容外科医をどう選ぶ?SNS「悪貨は良貨を駆逐する」、「直美」や「無資格者カウンセリング」など懸念、医師とNHKディレクターが意見交換、日本美容外科学会(JSAPS)に合わせ市民公開講座が開催

カレンダー2024.11.1 フォルダー 国内

 2024年9月20日、虎ノ門ヒルズフォーラムで「美容外科医の選び方」をテーマにした市民公開講座が開催された。

 この会は、日本美容外科学会(JSAPS)の第47回総会に合わせて会場内で開催されたもので、形成外科の専門医資格を持つ3人の医師に、一般消費者の立場としてNHKディレクターが加わり、合わせて4人が登壇して意見を交わした。

「直美」の増加でトラブル対応に課題

日本美容外科学会JSAPSが2024年9月に開催した市民公開講座。(写真/編集部)

日本美容外科学会JSAPSが2024年9月に開催した市民公開講座。(写真/編集部)

  • 美容医療相談の増加→ 原岡氏は国民生活センターのデータから、美容医療に関する相談件数が年々増加している現状を紹介し、信頼できる医師選びの情報が不足していると問題視した
  • 初期研修直後に美容外科へ進む医師の増加→ 医学部卒業後すぐに美容外科に進む医師(「直美」)が増えており、年間200人近くに達していると指摘。これは地方の医療における医師不足や、十分な訓練を受けていない医師が施術を行うリスクに繋がると懸念を示した
  • SNSの影響→ SNS上の情報が必ずしも信頼できないと指摘し、「グレシャムの法則」を引用。質の低い情報が優良情報を覆い隠すことで、施術を希望する人が誤った選択をする可能性があると警告した

 司会を務めたのが、神戸大学形成外科客員教授の原岡剛一氏(日本美容外科学会JSAPS理事、広報委員長)と、北海道大学形成外科教授の舟山恵美氏。登壇者は、藤田医科大学形成外科准教授の井上義一氏と、NHKディレクターの中島望氏。

 講演の冒頭では、原岡氏が、国民生活センターのデータを引用して、美容医療に関する相談件数が年々増加している現状を紹介し、信頼できる美容外科医を選ぶための情報が不足している状況を問題視した。

 その上で、初期研修を終えたばかりの医師が直接美容外科に進むケース、いわゆる「直美」が増えていることを指摘。年間医学部2つ分に当たる200人近くが美容医療に進む状況になっていることを紹介した。このことは地方の美容医療以外の医療を支える医師不足につながるだけでなく、十分な訓練を受けていない医師が美容施術を手掛けるケースを増やすことになる。結果として、いざトラブルになったときに対応できない事態が生じる可能性があることに懸念を示した。

 またSNSが美容外科医選びに与える影響も説明。原岡氏は、SNS上で広がる情報が必ずしも信頼できるものではないと警告し、「悪貨は良貨を駆逐する」という「グレシャムの法則」を引き合いに出し、質の低い情報が優良な情報を覆い隠す現象が生じていると指摘した。施術を受ける際にSNSや広告に頼りすぎることは、誤った選択を招く可能性が高く、慎重な情報収集と信頼できる情報源の活用が重要であると強調した。

無資格者のカウンセリングを問題視

日本美容外科学会JSAPSの市民公開講座は第47回日本美容外科学会総会に合わせて開かれた。(写真/編集部)

日本美容外科学会JSAPSの市民公開講座は第47回日本美容外科学会総会に合わせて開かれた。(写真/編集部)

  • NHK中島氏の意見→ 若者の間で美容医療が身近になっていると説明。価格低下が10代の手術希望の動機になっていることを指摘し、親子間での葛藤も増えていると述べた。また、SNS上の情報の信頼性に注意を促し、情報の質に差があると指摘
  • 舟山氏の指摘→ 一部医療機関が広告以上の高額な施術を強引に勧める「高額商法」や「囲い込み」の問題を懸念。無資格者がカウンセリングを行い、オプション追加で費用を上乗せする手法も問題視
  • 井上氏の意見→ 美容外科において、専門医の訓練が安全に直結することを強調。解剖学知識の重要性と、安全な施術に専門訓練が不可欠であると述べ、ファッション感覚での手術に警鐘を鳴らした

 登壇者からそれぞれの視点で、美容医療をめぐる状況と課題について意見が交わされた。

 一般の消費者の立場から登壇したNHKディレクターの中島氏は、10代の若者を中心に美容医療が身近になっている状況を説明した。価格が低下したことなどから、10代でも手術を希望する動機になっていることを指摘。親子間で美容手術を巡る葛藤が生じるケースが増え、親がどう対応すべきか悩む状況も紹介された。また、原岡氏と同じくSNS上の情報の信頼性に注意を促し、「SNSで発信される情報は必ずしも信頼できず、情報の質に大きな差がある」と述べた。

 舟山氏は、美容施術をめぐって、当初広告で示された施術料と比べて、はるかに高額な施術が勧められている一部の医療機関の状況に懸念を示した。「高額商法」や「囲い込み」といった強引に契約を結ばせる営業体制の問題のほか、医師ではない無資格者がカウンセリングをし、オプションを追加することで施術料を吊り上げる手法も問題視した。

 井上氏は、美容外科において専門医の訓練が施術を受ける人たちの安全に直結することを強調。特に解剖学の知識が重要であり、リスクを適切に判断し、手術を安全に実施するためには専門的な訓練が重要と述べた。美容外科がファッション感覚で受けられる風潮に警鐘を鳴らし、れっきとした医療行為であり、リスクが伴うことを再認識する必要があると指摘した。

 登壇者は、美容外科医を選ぶ際の具体的な提言として、医師の資格確認、医師との直接相談、情報を鵜呑みにしないこと、信頼できる医師を探すこと、価格や手術内容の透明性などを挙げた。

 美容外科医を選ぶときには、慎重に医師やクリニックを選び、手術を担当する医師と直接コミュニケーションを取り信頼関係を築くことが重要なのだろう。目下、厚生労働省で美容医療に関する検討会が開催される中で、美容外科医の選び方という観点からも、より信頼できる美容外科医や施設を選びやすい仕組みの整備が求められている。

参考文献

【美容医療の実態調査】カウンセラーや受付による無資格の違法診療明らかに、脳卒中や失明など合併症や後遺症の詳細も示される、厚生労働省「美容医療の適切な実施に関する検討会」第3回、前半
https://biyouhifuko.com/news/japan/9534/

美容医療トラブル対応に 業界のガイドライン整備へ、「直美」具体策は依然難題、年1回安全報告制度やSNSネットパトロール強化の見通し、厚生労働省「美容医療の適切な実施に関する検討会」第3回を開催、後半
https://biyouhifuko.com/news/japan/9555/

美容医療の「直美」問題と専門医資格を取得する意義、信頼ある美容医療を提供するための課題、共立美容外科理事長の久次米秋人氏に聞く、後半
https://biyouhifuko.com/news/interview/9492/

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ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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