2024年は美容医療の分野でも最も注目された話題は「直美(ちょくび)」であると言えるだろう。医学部を卒業した後、2年間の初期研修の後に直接美容医療に進むことを指したものだ。
これが美容医療のトラブルにつながるなどと問題視されたが、今後は美容医療の枠にとどまらない対応策が練られることになる。
医学会は「危険」な兆候と見なす
そもそも直美の問題が注目されたきっかけの一つは、23年12月に日本医学会連合が厚生労働省に提出した「専門医等人材育成に関する要望書」だった。
この要望書の中では、「医学部卒業生や臨床研修医が十分な臨床的修練を経ずに保険診療以外の領域への大量流出(確定的な数値ではありませんが、2023年度の関係諸機関の調査で、美容領域で医学部2つ分に相当するような多数の新規の医師採用がありました。)に繋がる危険をはらむこと」と指摘された。
美容医療に流れる医師数が医学部2つ分に相当するとの指摘は大きな影響を与え、専門医資格を持たずに美容医療に進む医師の多さが問題視されるようになった。直美を「危険」な兆候と見なし、解決すべき課題と位置づける医学会の立場がうかがえる。
厚生労働省は24年7月から11月にかけて「美容医療の適切な実施に関する検討会」を合わせて4回開催した。この中でも美容医療の道に新たに進む医師の中に直美を選んだ医師が増えていることが報告された。直美を選んだ医師は通常、形成外科のような専門研修を受けずに美容医療に進んだため、手術の技術や医師としての倫理に欠けているのではないかという指摘がなされた。
検討会の中ではたびたび直美について触れられたものの、ヒフコNEWSで昨日伝えているように、検討会の議論の報告書案の中では、直美は検討の対象外として整理された。
注目される「総合的な対策のパッケージ」
厚労省は「医師偏在対策推進本部」を発足させ、医師偏在という課題を解決する中で直美問題も議論される見通し。地方で医師不足が深刻化する一方、大都市に医師が集中する傾向がある。そうした中で、国として美容医療に進む医師の増加にどのように対応するかが注目される。
ヒフコNEWSで伝えているように、ここで注目されるのは「総合的な対策のパッケージ」というものである。厚労省は未来健康活躍社会戦略の骨子案(上図)として既に1ページでまとめており、開業規制などの対策により、直美の流れを抑制しようとする動きが推測されている。
9月に行われた社会保障審議会医療部会において、美容医療に関連した以下の指摘があった。「先ほど地域医療支援病院で管理者になるためには、医師少数区域で一定期間働いて認定されるという話がありましたが、美容医療に携わる人も、一定期間医師少数地域で働いて社会貢献をしていただいてから美容医療に従事するようなことを課してもいいのではないかなと思うぐらい、何らかの対策を講じていく必要があるのではないかなということが、まず一つです」
美容医療に大きな影響を与える動きなので、今後の展開が注目される。