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医療脱毛「100円トライアル」、トイトイトイクリニック、突然の経営破たんの背景を探る、医療法人社団雪焔会が破産手続開始決定申立、好立地、低価格アプローチでも経営破たん【編集長コラム】

トイトイトイクリニックの入るビル8階の医院名の表示。(写真/編集部)

トイトイトイクリニックの入るビル8階の医院名の表示。(写真/編集部)

 2025年2月5日午後7時、東京都新宿区。飲み屋が連なる新宿三丁目。人通りの多い一帯は、いつもの賑わいを見せていた。

 そんな好立地に医療脱毛や美容施術を提供していたクリニックの入るビルが見えた。外からはまだ看板が光っているのを見ることができる。経営破たんしたトイトイトイクリニックだ。

静かに閉ざされたクリニックの扉

トイトイトイクリニックの入るビルの案内。(写真/編集部)

トイトイトイクリニックの入るビルの案内。(写真/編集部)

 2025年2月5日、トイトイトイクリニックを運営していた医療法人社団雪焔会は、東京地方裁判所に破産手続開始決定を受けた。

 真新しいビル8階にある新宿医院を訪ねてみると、1階の案内板には「8F 営業しておりません」と手書きで書かれた紙が貼ってあった。

 8階に上がっても、誰もおらず、クリニックは開いていない。その扉にはやはり紙が貼ってあった。

トイトイトイクリニックの入り口には告示が貼られていた。(写真/編集部)

トイトイトイクリニックの入り口には告示が貼られていた。(写真/編集部)

告示書

医療法人社団雪焔会トイトイトイクリニックは令和7年2月5日付で東京地方裁判所に破産手続開始決定申立を行い受理されました。

 当然だが、中に入ることはできず、一つの医療脱毛などを提供した医療機関の終焉を感じさせた。

 エステ脱毛や医療脱毛の現状については、ヒフコNEWSで伝えているが、トイトイトイクリニックはどうだったのだろうか。そんなことが頭に浮かんだ。

 トイトイトイクリニックのホームページは閉鎖されているが、PR TIMESの宣伝記事には過去の情報が掲載されており、倒産時にも参考になる。他のウェブサイトの宣伝記事にもトイトイトイクリニックのPRが書かれていた。そうした記述をたどってみた。

 目を引いたのが、PRTIMESの宣伝記事にあった「100円トライアル」「500円VIO脱毛」といったキャンペーンメニューだ。

 脇や鼻下、手指の脱毛を100円で試せるというものだ。

トイトイトイクリニックの特徴だった100円体験脱毛。写真を改変。(出典/PRTIMESに掲載されたトイトイトイクリニックの宣伝記事)

トイトイトイクリニックの特徴だった100円体験脱毛。写真を改変。(出典/PRTIMESに掲載されたトイトイトイクリニックの宣伝記事)

 ごく低価格の体験脱毛は、エステ脱毛ではよくあるが、医療脱毛であっても100円で体験脱毛ができるというのは、トイトイトイクリニックのほかにはあまりない特徴ともいえる手法だったようだ。複数のクリニックを比べた宣伝記事がウェブ上に掲載されていたが、そこにはトイトイトイクリニックだけ体験脱毛ができることが示されていた。トイトイトイクリニックが作成したページだった可能性も否定できない。

 100円でなくても、VIO500円の体験メニューがあったり、男性向けには、980円でヒゲ脱毛を試せるトライアルメニューも用意していた。トライアルで人を集め、通常コースに誘導するのが、トイトイトイクリニックの狙いだったのだろう。医療脱毛でありながら、そこはまるでエステ脱毛のようだ。

広告の大量投下の中での厳しい状況

トイトイトイクリニックが通常営業されていたときの風景。(出典/PRTIMESに掲載されたトイトイトイクリニックの宣伝記事)

トイトイトイクリニックが通常営業されていたときの風景。(出典/PRTIMESに掲載されたトイトイトイクリニックの宣伝記事)

 通常のコースについても、低価格が分かりやすいのが特徴だ。宣伝記事では、「トイ式」と銘打ったコースを打ち出しており、頭金として5~10万円を支払い、その上で月額1000~1500円を60回払いする形になっていた。

 ただし、頭金については注意書きに小さく記載されるにとどまり、あくまで月額の支払い額である1000円程度が強調される書き方になっていた。

 つまり、トイトイトイクリニックは、超低価格で集客するアプローチを取っていたことがうかがえる。

 しかし、この方法では経営は立ちゆかず、破たんに至った。

 トイトイトイクリニックのこの状況をどう捉えればよいのだろうか。

 好立地で低価格を打ち出しても、人は集まらなかった。一つには、こうした状況を挽回するには、多額の広告投資が必要だと考えられる。一方で、エステ脱毛や医療脱毛は競争が激化する中で、どこのサロンもクリニックも広告を大量投下している状況だ。少し広告を出した程度では、埋没してしまう可能性が高い。結局経営破たんになった結果から判断すれば、トイトイトイクリニックは人を集めることに苦労し、八方塞がりになっていたと考えられる。

 新宿三丁目のビルを訪れ、関連の情報を見るにつけ、脱毛サロンやクリニックの厳しい状況を実感した。

 これを踏まえ、脱毛を受けている人は誰でも、契約書が手元にあるか確認するのが賢明だろう。

参考文献

医療脱毛トイトイトイクリニック運営の医療法人社団が営業停止、医療脱毛の苦境が表面化、東京商工リサーチが速報
https://biyouhifuko.com/news/japan/11138/

トイトイトイクリニック、営業停止で救済の動き、複数の施設が提案、一部のクリニックが都度支払いや施術の割引のプラン、過去のエステ脱毛大型倒産時と状況は変化
https://biyouhifuko.com/news/japan/11149/

トイトイトイクリニック、クレジット分割払いは止められる?契約者が今すぐ確認すべき「支払い停止」手続きの流れ、脱毛倒産の際にさらなる被害を避けるための注意点
https://biyouhifuko.com/news/japan/11171/

【訂正】
・見出しで破産開始決定と記載しましたが、正しくは破産開始決定申立です。お詫びして訂正いたします。(2025/2/19)

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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