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なぜトルコでは美容外科に形成外科専門医の資格が必須なのか、韓国、米国、トルコとの比較から見える日本の課題、第68回日本形成外科学会総会・学術集会より【編集長コラム】

カレンダー2025.4.17 フォルダー連載・コラム
第68回日本形成外科学会総会・学術集会。(写真/編集部)

第68回日本形成外科学会総会・学術集会。(写真/編集部)

 海外では美容外科の経験が形成外科の専門医資格に必須とされている。では日本においても、美容外科の手術を行う医師には、形成外科の専門医資格は必要になってくるのだろうか。

 2025年4月17日、海外の医師が第68回日本形成外科学会総会・学術集会の「形成外科と美容外科の関係性の再考:まずは各国の現状を知るところから始める」と題した講演で、各国の状況について紹介した。

海外では形成外科と美容外科が一体

江南区の一帯には美容医院が密集する。(写真/編集部)

江南区の一帯には美容医院が密集する。(写真/編集部)

  • 海外では形成外科専門医に美容外科の経験が必須→ 韓国(200件)、米国(500件)、トルコ(100件)といった国々では、美容外科手術の経験が専門医資格取得に求められており、試験に占める割合も高い。
  • 形成外科と美容外科の関係性→ トルコや米国では、形成外科が美容外科を含んでいる形になっている。日本ではこの関係性が弱い。
  • 直美現象と専門医の関係→ 日本では、初期研修後に専門研修を経ず美容医療に進む「直美」が年間200人に達し問題視されている。韓国でも専門医資格を持たない医師が美容医療を行うケースがあり、課題になっている。

 海外では、形成外科の専門医資格を得るために美容外科の経験が必須とされており、これは各国に共通する特徴として印象的であった。具体的には、韓国、米国、トルコの医師が講演で各国の状況を報告しており、形成外科専門医資格取得の条件として必要な美容外科の手術件数は、韓国で200件、米国で500件、トルコで100件となっている。一方で、日本では美容外科の経験は問われておらず、一切求められていない。

 また、専門医資格を取るための試験において美容外科の問題が占める割合については、韓国とトルコは20~25%で、米国は年によるということだった。日本では、2~3%とやはりウエートは海外よりも低い可能性がある。

 少なくとも韓国、米国、トルコにおいては、形成外科と美容外科は密接に結びついている。美容外科を行う上で、形成外科の資格が重要視されており、形成外科が美容外科を含んでいるという認識が当然になっているといえるのだろう。

 日本では、専門医制度において形成外科と美容外科の関係性が薄い。

 今回、トルコのバユンドゥルヘルスケアグループ病院の形成外科医、アリリザ・エルチョーチェン氏によると、トルコは美容外科を行う医師の資格についてのルールが厳格だ。具体的には、美容外科を行う医師には形成外科の専門医資格が必須とされている。一方、日本では、美容外科の手術を行うに当たって形成外科の専門医資格は必須とされておらず、この点は大きく異なっている。エルチョーチェン氏はトルコの形成外科と美容外科の歴史を説明していたが、形成外科が発達するのに伴って美容外科が発展したという背景から、形成外科医が美容外科を手掛けるという形が自然な流れで形成されたようだ。一方、トルコでは、資格の条件を満たさない美容外科手術が摘発されるような事例もあるといい、厳しい制度によって美容外科手術の質を保っている体制になっている。

 米国ノースウェスタン大学のアキラ・ヤマダ氏は、再建手術と美容外科手術は、視点を変えただけで本質的に共通するものであると説明し、両者に共通する教育が必要であると強調した。

 ヒフコNEWSで伝えているが、米国では形成外科以外の医師による美容手術がトラブルを引き起こしていることが問題になっていた。課題は米国にもあるものの、日本と比べると、形成外科と美容外科の結びつきは、日本よりも強い印象を受けた。

 韓国JW美容外科クリニックのヨンジュン・キム氏は、韓国では、医師の9割が専門医資格を取得し、残る1割が専門医資格を取らない(一般医と呼ばれる)と紹介。この専門医資格を持たない医師のうち半数が美容医療に進み、その99%は外科領域以外を手がけていると説明した。ヒフコNEWSでは、1年前の同学会の取材から、韓国における美容医療従事医師の半数が専門医資格を持たないと伝えたが、韓国では美容医療と専門医制度との関係性は日本と同様に複雑であるように見えた。

 日本の状況については、神戸大学客員教授の原岡剛一氏が紹介したが、年間200人近くの医師が、医学部卒業後、2年間の初期研修を終えた後、専門研修を経ずに美容外科に進む『直美』の進路が問題視されている。日本も韓国と同様に9割近くが専門医資格を取っているが、美容医療を手掛ける医師が必ずしも形成外科の専門医を持っているわけではない。海外の状況を踏まえると、日本では今後どのような制度が求められるのか考えさせられた。

日本における制度的な課題

「直美」を念頭に、初期研修後に保険診療経験を従事させるなどの規制を提案。(出典/日本病院会)

「直美」を念頭に、初期研修後に保険診療経験を従事させるなどの規制を提案。(出典/日本病院会)

 日本では、美容外科の資格制度をめぐり、さまざまな課題が指摘されているが、海外の状況を踏まえると、制度的に次の3点が浮き彫りとなるのではないか。

  • ①既に美容外科を標榜している医師の専門性の評価
  • ②若手医師が専門医制度を経ずに美容外科へ進む流れの是非
  • ③形成外科専門医制度における美容外科教育の位置づけ

 一つ目は、既に美容外科を手掛ける医師の専門性の評価。日本では、形成外科系の日本美容外科学会(JSAPS)と、形成外科以外の医師が中心の日本美容外科学会(JSAS)が存在し、それぞれが1000人を超える医師の会員を擁している。

 このような状況下で、海外と同じように美容外科の手術をするために形成外科の資格が必要だということになれば、大きな混乱につながりかねない。一方で、海外で当たり前のように形成外科の中に美容外科が含まれている状況になっているのを理解すると、日本の制度も今後、変化していく可能性があるとも考える。

 第2に、若手医師が専門医制度を経ずに美容外科へ進む傾向だ。国内では、「直美」の進路が問題視されている。医学界や厚生労働省では、専門医資格の取得を促す方向で制度の見直しが進められている。美容医療の医師の間でも、直美の医師は、将来的に技術面で課題を抱える可能性があるとの懸念も、美容医療の現場からは指摘されている。現時点では、はっきりとしていないが、今後は、美容外科を志す医師が形成外科の専門医資格を取得するのが一般的な進路となる可能性が考えられる。

 第3に、形成外科専門医認定制度における美容外科の位置づけ。形成外科専門医資格を取得した後に美容外科を志す流れが一般化した場合、海外と比べて課題となるのは、「専門研修段階で十分な美容外科の実務経験を積む機会が確保されているか」および「専門医認定試験に美容外科に関する出題を適切に組み込めるか」という2点だろう。

 こうした状況を踏まえると、日本における美容外科制度の見直しにおいて、次の3点が主要な課題となるだろう。既に美容外科に従事している医師の専門性や資格をどう扱うか。第2に、若手医師が専門医制度を経ずに美容外科に進む進路の在り方。第3に、形成外科専門医認定制度における美容外科の位置づけ。

 第68回日本形成外科学会総会・学術集会の講演を聴いて、これらの制度的課題について改めて考える契機となった。海外も課題は多いと見えるが、海外のシステムを踏まえて、日本の制度をどうすべきか、議論は活発になる可能性もある。日本の美容外科において、どのような資格などの制度が望ましいと考えられるだろうか。

参考文献

日本の美容医療、課題と展望 日本美容外科学会JSAPSの前理事長の大慈弥(おおじみ)裕之氏に聞く
https://biyouhifuko.com/news/interview/253/

「元祖直美」美容医療30年の医師が直美問題を語る、今なら迷わず形成外科に行くと述べる理由、ジョウクリニック理事長重本譲氏
https://biyouhifuko.com/news/interview/9848/

美容外科は究極の形成外科、切り離すことはできない、「形成外科医は美容外科も担う」、千葉大学形成外科教授 三川信之氏に聞く Vol.1
https://biyouhifuko.com/news/interview/10287/

韓国の美容外科教育は大学病院でも、18の研究会が力発揮、美容医療を敬遠しない形成外科、日本形成外科学会で議論
https://biyouhifuko.com/news/japan/6742/

美容医療での死亡の衝撃広がる、カリフォルニアで無資格の小児科医が脂肪吸引で事故、美容外科に規制強化への動き、米国形成外科学会などが声明
https://biyouhifuko.com/news/world/7118/

「直美」の問題は2025年にどう対処するとよいのか、「直美で十分」の意見に「いいね」が集まることに懸念、神戸大学客員教授の原岡剛一氏に聞く
https://biyouhifuko.com/news/interview/11067/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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