
老化は誰にとっても関係する問題。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
「アンチエイジング」と言っても、何となく若く見せるという話ではなく、今回のコラムで言うのは、本当に寿命を延ばすような医療を指している。
ヒフコNEWSで何度も抗加齢医学が世界的に盛んになっていることを伝えているが、これを本当に日本で応用していくには高いハードルがある。関係者と話す機会があったので、そのようなことを考えた。
その辺りを改善していく必要があるだろう。
アンチエイジング医療と制度の壁、日本での実現は可能か

XPRIZE Healthspan。(出展/XPRIZEウェブサイト)
XPRIZE Healthspanという、海外で総額150億円の資金をめぐって、老化速度を遅らせる技術を競い合うコンペが注目されている。世界から400チームが参加したとされるが、先日、上位40チームが勝ち抜けて、およそ25万ドル(1ドル144円とすると、日本円で約3600万円)の賞金を得たが、今後は、これの応用にこぎ着けるかが、優勝するための必須条件になる。
単純に動物実験で老化が遅れましたというのではなく、人に技術を応用して、老化が遅れると示す必要があるので、大がかりな試験が行われることになる。
日本で、このような老化を遅らせるための試験をできるかというと、簡単ではない。
日本では、国民全員に保険が適用されている中で医療が行われており、ここで、老化防止のための医療が行えるかといえば、老化は病気と見なされていないわけだから、保険でアンチエイジングの医療を行うのは不可能だ。
既存の病気の治療を行う中で、ついでに新しい老化予防の技術を検証するといったアプローチも考えられる。細胞や組織などの老化を防ぐ効果が確認されれば、その薬などは老化予防の効果があるのではないかという話だ。しかし、それでも保険診療の中で行えるかというのは課題になる。
自由診療であっても、実体が見えにくい実験的な医療を試験的に行うには、医療機関の倫理委員会による審査が必要であり、簡単ではない。
もし仮にできたとしても、通常の美容医療と異なり、老化予防の医療は、見た目が良くなるということにとどまらず、病気のなりやすさも含めて、老化が阻止されるという内容になるので、ある意味で、それは保険医療そのものに近い性格を帯びてくるとも考えられる。そうした時に、老化予防の医療が日本で堂々と行われるということは、社会的に受け入れられるのかという問題も起こる可能性がある。
とはいえ、有望な技術があるときには、もっと実用化に向けた動きを取りやすくする必要はあるだろう。
肥満症治療から見るアンチエイジング医療の未来

老化していく。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
アンチエイジングの医療を見ていると、肥満症の治療の盛り上がりが連想される。
これはヒフコNEWSで以前にも触れているが、2000年前後は、体重を減らす薬はあったものの、肥満は病気だという認識があまりなかったと記憶している。それが、今では日本では肥満症、海外では、臨床肥満という言葉があり、肥満は病気だという認識が出てきている。
肥満症には、明確な定義があり、それに対してGLP-1受容体作動薬をはじめとした薬が使われるようになっているが、肥満症の定義に当てはまらない人の中でも肥満症の薬は人気を博して、品不足を起こしている。
では、老化で似たようなことが起きるとどうなるかが気になる。老化の速度を防ぐ薬ができたときに、老化にも、病的な老化というのが出てくる可能性が考えられるのだろうか。老化を遅らせる薬は、病的な老化の人にのみ使用すべきで、通常の老化には使うべきではないという考えが出てくるのかもしれない。
これは、そうなりづらいのかもしれない。不老不死の人がいない限りは、老化は誰しも関連するものになる。老化を遅らせる薬ができたときには、それは誰にでも使える権利がありそうだ。
では全員が老化予防の薬を使うことになるのか。その辺りは、有効性や安全性に加えて、倫理的、社会的、経済的な問題も出てきそうだ。
美容医療もそうだが、技術が進歩したときに、それをどのように利用すべきかという、ルールをもう少し分かりやすく、作っていくことは重要なのだろう。
