
大学では美容医療にどう取り組む?画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
大学と美容医療との接点が、ここにきて目立っている。全国的に一気に広がっている状況ではないかもしれないが、公開されている情報をたどると、寄附講座、教員の人事、診療体制の協力といった複数の形で関係が構築されつつあることが明らかになっている。
美容医療が大学の教育や研究の枠組みに入り込み始めた点が注目される。今後、どのように動きが広がっていくか注目される。現状や課題について考察する。
寄附講座や外部の美容医師と協力

和歌山県立医科大学。(写真/kinowaka CC 表示-継承 3.0)
- 寄附講座が広がる→ 和歌山県立医科大学では、美容皮膚科や美容外科の寄附講座が設置された。
- 教員招へいも進む→ 客員教授や臨床教授として、美容医療の医師が大学教育に関わる例が見られる。
- 大学との接点が具体化→ 美容医療が教育や研究の場で存在感を増している。
象徴的な動きの一つが、和歌山県立医科大学のケース。
同大学では、美容医療関連企業のジェイメックの寄附により、2024年4月から2026年3月まで「光学的美容皮膚科講座」が設置された。この講座では、美容皮膚科学および皮膚科学に基づき、レーザー機器や新たな治療機器の研究を行うほか、美容医療に関わる医師の教育などが目的とされた。
さらに、同大学では医療法人惠和会の寄附による「美容外科講座」も、2022年7月から2025年6月まで設置された。この講座では、美容外科学および形成外科学の手術によらない治療法の開発を含め、研究が進められていたとされる。
大学で美容医療を教える人材も広がりを見せている。基本的には形成外科や皮膚科、美容外科といった部門で協力関係が築かれている。
例えば、神戸大学では、美容クリニック院長が、形成外科や美容外科分野の客員教授として就任している。このほか東京医科大学や日本医科大学でも美容皮膚科分野の医師が客員教授として関与していた。
昭和医科大学でも、美容外科クリニック関係者が客員教授や兼任講師として複数関わり、臨床現場の医師が大学の教育に関わる。
一方、富山大学でも、複数の外部からの美容クリニック院長などが臨床教授や診療指導医として関与する体制が診療科のウェブサイトの中に明記されている。
大学が個別に動く流れはどこまで?

東京中央美容外科(TCB)運営する医療法人が各院の院長を個人事業主とすることで消費税負担を軽減する仕組みを採用していたとされ、2025年に国税庁から約9億円の追徴課税を受けたことが報じられた。(写真/Adobe Stock)
- 個別の動きが先行→ 大学と美容医療の連携は広がっているが、統一したルールは見えにくい。
- 人事が議論を呼ぶ例も→ 東邦大学の客員准教授就任では、連携した美容クリニックの評価が議論に。
- 教育制度は発展途上→ 学会や資格制度が分かれており、全体として整理された仕組みは十分ではない。
こうした外部の美容医師との協力は、これまでもあったことだが、ここに来て大きく注目されている。
東邦大学では2026年4月、東京中央美容外科(TCB)を展開する医療法人グループの理事長が客員准教授として就任することが公表された。任期は2028年3月までとされ、学生や研修医、医局員に対する美容外科分野の教育・指導を担う役割が明示されている。
一方で、この人事は議論を呼んだ。同グループをめぐっては、運営する医療法人が各院の院長を個人事業主とすることで消費税負担を軽減する仕組みを採用していたとされ、2025年に国税庁から約9億円の追徴課税を受けたことが報じられている。美容外科業界内でも経営手法に対する評価は分かれ、今回の大学側の起用についても、SNS上では疑問の声が上がるなど、反応は一様ではなかった。
また、東邦大学側には同グループと関係を持つ医師が在籍し、人的なつながりが背景にあると見られる。
この事例は、大学と美容医療の接点について考える一つのきっかけになった可能性がある。
大学と美容医療の関わりは、これまで各大学の個別の判断やネットワークに依存する形で構築されてきたと見られる。寄附講座や客員教授を置く動きは広がりつつあるが、現時点では統一的な方針や枠組みが存在しているとは言い難い。
各大学の美容医療との関わりに賛否が生じたとしても、国内で統一的な方向性や教育のルールが整っていなければ、現在進んでいる連携の動きは、何らかの決定的な問題が指摘されなければ止まらないと考えられる。
美容医療に関する教育のあり方への関心は高まっているものの、体系的な教育制度が整っているとは言い難く、結果として個別の大学や医局単位での取り組みにとどまっているのが実情だ。
学会も複数に分かれており、統一した資格制度の仕組みになっていない。自由度が高い一方で、全体的に統一された動きにはつながりにくい状況になっているともいえる。
今後、学会や大学がどのように関与し、教育や研究、診療の枠組みとして整理していくのかが問われる局面に入っている。
東京大学の不祥事が示す透明性ニーズの拡大

透明性が求められている。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 透明性が重要に→ 大学が外部の医療機関や企業と連携する際、説明責任が強く求められている。
- 背景に東大の不祥事→ 寄附講座をめぐる問題が、ガバナンス強化の必要性を浮き彫りにした。
- 今後の課題→ 大学と美容医療の関係を続けるには、ルール整備と透明性の確保が欠かせない。
もう一つの重要な論点が、情報公開と透明性だ。大学がどのように美容クリニックや企業と協力していくのか、社会の目線は厳しくなっている。
その背景にあるのが、東京大学で発生した寄附講座をめぐる不祥事である。臨床カンナビノイドに関する社会連携講座などで不正が発覚し、関係した教授が逮捕される事案となった。この問題を受けて、同大学では組織体制の見直しが進められ、東京大学が直接管理する形に病院組織を再編することになった。ガバナンスの強化が図られている。
この事例が示しているのは、外部連携が拡大する一方で、コンプライアンスやガバナンスへの要求が一段と厳しくなっている。
大学と外部の医療機関や企業との連携は今後も広がるとみられ、その前提として、教育、研究、臨床の各領域において社会的に説明可能な価値を示し続けることが欠かせない。またどのような利害関係があるかの説明責任が問われる。
大学と美容医療の関係も例外ではない。接点が注目されている今、それをより良い形に続けていくためには、統一したルールに加えて、透明性と正当性の確保が重要になるだろう。
今後、この分野は具体的な連携の動きとともに、制度の整備の点からも動向が注目される。
参考文献
光学的美容皮膚科講座(和歌山県立医科大学)
https://www.wakayama-med.ac.jp/kenkyu-sankangaku/sankangaku/kifukouza/04.html
美容外科講座(和歌山県立医科大学)
https://www.wakayama-med.ac.jp/kenkyu-sankangaku/sankangaku/kifukouza/19.html
