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ステマと美容医療 Vol.4 ステマの自主規制はどうなっている?消費者庁による検討会を振り返って考える④

カレンダー2023.12.10 フォルダー連載・コラム

ポイント

  • 広告が健全に行われることは、消費者・広告主・媒体社の全てにメリットがあるという
  • 「ノンクレタイアップ」と呼ばれる、悪質な媒体による記事の売買もあるようだ
  • 情報を安易に信頼することで、悪質な情報が氾濫する危険性
情報の信頼性は?写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

情報の信頼性は?写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 2023年10月1日から、ステルスマーケティング(以降ステマと表現)は、景品表示法違反となった。これにより、美容医療も含めて、消費者による情報の収集に影響はあるのだろうか。

 規制の制定にあたり、2022年9月16日から12月27日まで8回にわたって行われた、消費者庁による「ステルスマーケティングに関する検討会」を振り返りながら、消費者が注意するべき点について考えていく。今回は第4回。

健全な広告活動のために

メディアの健全性。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

メディアの健全性。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 4回目の検討会は、2回目・3回目に引き続き、「ステマを防止するための取組状況」および「ステマ規制に対する考え方」をヒアリングする内容で行われた。

 参加した企業および団体は、朝日新聞(議事非公開)、インターネット広告事業を営む事業者等で構成される日本インタラクティブ広告協会、広告主等で構成される日本アドバタイザーズ協会(議事一部非公開)の合計3団体。また、検討会の委員を務める新経済連盟事務局政策部の片岡康子氏、WOMマーケティング協議会副理事長の山本京輔氏の2氏からも聞き取りが行われた。

 日本インタラクティブ広告協会は、インターネット広告の健全な発展と社会的信頼の向上のため、ガイドラインの策定などを行っているという。

 ガイドラインにはインターネット広告全般について、広告であることの明示と広告主体者の明示が規定してあるという。広告主がこれを遵守することにより、ユーザーや消費者は広告として発信している情報をあらかじめ広告だと知ることができると解説する。

 広告主にとってもステマと混同されるリスクが減ることは利益につながると見る。消費者に広告と理解された上でその広告を体験してもらうことで期待する広告効果が生まれやすいという。

 さらに、媒体社は記事と広告が区別されることで、媒体の信頼性と価値が維持される。つまり、ユーザーや消費者、広告主、媒体社の全てにメリットがあると報告された。

レビューのマーケティング効果

広告は広告と明らかにする。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

広告は広告と明らかにする。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 片岡委員が所属する新経済連盟からは、会員企業である楽天グループ株式会社が運営する、楽天市場におけるステマ対策について紹介された。

 楽天市場では、出店者から購入した商品やその出店者についてレビューを書き込める、「お買い物レビュー」という機能があるという。

 ユーザーが買った商品に関する感想などを投稿し、他のユーザーが買い物をする際に参考にするという機能だが、意図的に良い内容を書かせようとする、いわゆる不正レビューの問題があり、防止する取り組みを行っている。

 その一例として、レビューを書いたユーザーに対して、出店者側が特典を提供することについては一部認めているが、レビューを投稿した商品そのものに対しての値引きや、金券類の提供は禁止しているという。

 山本委員が所属するWOMマーケティング協議会(以下、WOMJ)は、インターネット上の口コミについて、業界の健全な育成と啓発をミッションとしているという。

 口コミやレビューを活用したマーケティングは、広告とは異なるものの、現状として宣伝の手法の一種といえるだろう。

 WOMJが公開しているガイドラインによると、宣伝を依頼するマーケティング主体からインフルエンサー、情報発信者に対して金銭や物品、サービスの提供がある場合、それを「関係性がある」と定めているという。投稿を通してプレゼントがあるような場合も当てはまる。

 そして、関係性がある場合には、「マーケティング主体を明示すること」「便益を受けたことを明示すること」の二点を必要にしている。金銭が関連した場合には、「#プロモーション」「#協賛」「#PR」などの便益タグと呼ばれる分かりやすい印を使うように求めている。また、物品やサービスを受けているときには、「#物品提供」「#プレゼント企画」などの便益タグが使える。

 美容医療で言えば、インフルエンサーがクリニックから金銭や物品、サービスを受けているならば、「関連性」があり、誰から金銭などを受け取っているかを示し、便益タグも示すことが重要と解釈できるのだろう。

悪質な媒体による記事の売買

届けられる情報は良質?写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

届けられる情報は良質?写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 広告としてみなされている手法のひとつとして「ネイティブ広告」と呼ばれるタイプの広告がある。

 ネイティブ広告とは、デザインや内容、フォーマットが、媒体社が編集する記事やコンテンツの形式や、提供するサービスの機能と同様でそれらと一体化しており、ユーザーの情報利用体験を妨げない広告を指す概念だという。

 代表的な例として、ニュースサイトの記事形式の「スポンサードコンテンツ」や、ウェブ上の記事の見出しや要約の間に挿入される「インフィード広告」などがあるとされている。

 ネイティブ広告には、ユーザーが情報に入りやすいといったメリットがあるといわれるが、媒体による編集記事であるとの誤認を招きやすいことから、必ず広告であることの明示と広告主体者の明示が必要とされている。

 しかし、悪質に「編集記事を買う、売るという行為」が過去に問題となったといわれ、それらは「ノンクレタイアップ」と呼ばれ、ステマに分類されている。

 もしも信頼していた媒体において、そのような行為が行われていたとしたら、消費者はどのようにすればよいのだろうか。

良質な情報に触れるために

ステマの課題。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

ステマの課題。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 消費者にできることの一つとして、レビューや人気のインフルエンサーなどによる投稿、媒体による記事などを参考にしながらも、単独の情報のみで消費を決定せずに、様々な情報を収集することが望ましいだろう。

 そして、一定の媒体においてのみ評価が高い、といった情報を見たときには「ステマかもしれない」と思える冷静な視点を持つことが大切といえそうだ。

 さらに、「プロモーション」「スポンサード」「協賛」「PR」といった表示の有無を確認することも必要かもしれない。あらかじめ広告と分かっていれば、「広告ならば事実を多少誇張した表現(パフィング)が行われている」ということを、消費者はあらかじめ了解できるはずだからである。逆に、広告であるにもかかわらず、こうした表示がなければステマであり、距離を置くべきだ。

 そうした了解のもとで広告が健全に機能していてこそ、利害に関係なく「個人や媒体としての意見」を発信している投稿やレビュー、編集記事の信頼性が高まるといえるだろう。

 美容医療にまつわる情報を収集する際にも、できる限り冷静で客観的な視点を持ち、多くの情報の中から信頼できる情報を選び出すことが求められそうだ。

 消費者がそのような用心深さを持つことで、もしかすると悪質な情報が氾濫する危険性も減らしていけるのかもしれない。

参考文献

ステルスマーケティングに関する検討会
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/meeting_materials/review_meeting_005/

第1回 ステルスマーケティングに関する検討会(2022年9月16日)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/meeting_materials/review_meeting_005/029951.html

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Author

永田未来

永田未来

フリーライター。主婦と生活社を経て独立。美容やヘルスケア関連を含めた多彩な分野で執筆やインタビュー取材に対応。日本で数少ないヘアライターとしての執筆にも力を入れている。音楽誌および女性誌編集者の経験をベースにした分かりやすい情報発信を強みとする。

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