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ステマと美容医療 Vol.7 ステマ規制の対象になるケースとは、消費者庁による検討会を振り返って考える⑦

カレンダー2024.1.10 フォルダー連載・コラム

ポイント

  • ステマ規制のための法律案とその運用基準がまとめられた
  • ステマのグレーゾーンを排除する配慮もなされた
  • ステマ規制を実効性のあるものにするための課題
ステマはルール違反。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

ステマはルール違反。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 2023年10月1日から、ステルスマーケティング(以降ステマと表現)は、景品表示法違反となった。

 ステマ規制するにあたり、2022年9月16日から12月27日まで8回にわたって行われた、消費者庁による「ステルスマーケティングに関する検討会」を振り返りながら、美容医療の利用者が注意するべき点について考えていく。今回は、検討会に関連した一連の記事の最終回となる。

広告と判別できるかどうか

広告と分かる?写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

広告と分かる?写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 7回目の検討会は、これまでの議論を踏まえ、ステマを規制するための「不当景品類及び不当表示防止法」(以下、景品表示法)で告示する内容、および運用基準の方向性を含む検討会としての報告書の案が事務局から提示され、それに対して各委員が意見を述べる形で議論が行われていた。

 ステマを規制するための対策として、景品表示法第5条で示す「不当表示」として新たに指定する方向性でこれまで議論されてきた。

 最終的に、指定告示の具体的な文言として、「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの」とする案がまとめられた。

 つまり、事業者(広告主)が自ら供給している商品やサービスについて広告する際、消費者にとって「広告である」と判断することが難しいものを規制する、という案である。

 また、今回の法律において、規制の対象となるのは商品、サービスを供給する事業者のみであり、事業者から広告や宣伝の依頼を受けたインフルエンサーなどの第三者は、規制の対象にはならないとされた。

ステマを規制で重要な事業者の関与

事業者の関与が重要。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

事業者の関与が重要。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 実際に規制が始まった後、どこからがステマになるのか事業者があらかじめ判断できるように、どのような表示がステマに該当するのか、もしくは該当しないのか、具体的な運用基準についても案が示されていた。

 まず、「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示」に該当するかどうかについては、「事業者が表示内容の決定に関与した」とされる場合であるとされた。

 さらに、「事業者が表示内容の決定に関与した」とされるものについて、もしくは「関与したとされない」ものについて、具体的な基準が示された。

 たとえば、事業者の役員や従業員が表示内容を決めている場合は、当然ながら「事業者が表示内容の決定に関与した」こととなる。

 事業者自身が表示内容を決めなかったとしても、インフルエンサーやレビューサイトの投稿者などの第三者に「表示内容を依頼して表示させた」場合は、事業者が表示内容の決定に関与したとされるようだ。

 これに対し、第三者が自主的な意思で表示をした場合には、事業者が表示内容の決定に関与したとはされないという。

「#PR」などの表示がない広告は規制される

便益タグで見分ける。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

便益タグで見分ける。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 また、「一般消費者が当該表示であることを判別することが困難である」に該当するかどうかについては、一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっているかどうかを、表示内容全体から判断することとされた。

 こちらについても、「事業者の表示であることが明瞭になっているもの」もしくは「明瞭となっていないもの」について、具体的な基準が示されていた。

 例えば、「#広告」「#PR」「#協賛」「#プロモーション」などの便益タグが表示されていれば明瞭に広告であるとみなされ、広告であるにもかかわらず表示されていない場合は、ステマとして規制の対象となるようだ。

 また、便益タグの表示はされているものの、短い時間しか表示していなかったり、周囲の文字よりも小さい表示であったり、他の文字より薄い表示である、といった場合は「消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっていない」こととなり、こちらも規制の対象となるという。

パブリックコメントで2点が追加

お金でゆがめられる評価。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

お金でゆがめられる評価。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 7回目の検討会が終わった後、消費者庁は2022年12月2日~15日の期間で、報告書の案に対するパブリックコメントを募集し、国民からの意見を広く集めた。8回目の検討会では、パブリックコメントの結果を踏まえ、報告書案の最終的な取りまとめが行われた。

 パブリックコメントの結果、46の個人・事業者・事業者団体・消費者団体・匿名の人から164件の意見が提出されたという。

 その内容を受けて、運用基準案の「事業者が表示内容の決定に関与したとされない」場合の例として、以下の2点が追加された。

 『ECサイトにおいて、出店者が購入者に対し、レビュー投稿の対する謝礼として次回割引クーポン等を配布する場合であっても、購入者が自らの自主的な意思に基づいてレビューを投稿したと客観的に認められる場合』

 これにより、たとえレビュー投稿の謝礼としてクーポン等の謝礼を受け取ったとしても、レビューをするかどうか、またレビューの内容について事業者側から指示を受けていない場合は、規制の対象にはならないとされた。

 『事業者から、表示内容を決定できる程度の関係性にない第三者に対し、表示を目的とした無償提供ではなく、単なるプレゼントとして商品等の贈呈を行った結果、当該第三者が自主的な意思に基づいて表示を行ったと客観的に認められる場合』

 これにより、商品サンプルなどを受け取った上で商品レビューや感想を書いた場合であっても、自主的な意思で行った場合は、ステマ規制の対象にはならないといえるだろう。

 また、複数の商品やサービスの価格を比較できるアファリエイトサイトについては、「サイト上にある1件ずつの情報について広告であると表示をしなくても、サイト上の情報全体が広告であるということが表示されていれば良い」とされた。

美容医療にも関連する専門家の意見

ステマの課題。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

ステマの課題。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 最後に、検討会の各委員から報告書の最終的な取りまとめに向けた意見が表明された。その中から、美容医療の利用者にも有用と思われるものを紹介する。

 「ステマ規制を執行した後に、規制をかいくぐるような新たな手法であったり、抜け道のようなものが判明してくると予想されるので、今後に向けて規制のアップデートが必要ではないかなと感じている」(立命館大学経営学部准教授 菊盛 真衣氏)

 「ステマが違法であるということを、広告主・広告関連事業者・メディア・マーケットプレイス・SNSなど情報関係者だけでなく、一般消費者にどう認識していただくかということが重要。特に、事業者からの利益供与に伴う一般消費者の口コミについては、これが違法であるということに気付いていない消費者が非常に多い。ステマがなぜいけないのかということは、消費者の情報技術の利用における適切で責任ある行動規範と言われている『デジタルシティズンシップ』の教育の一環として考えていく必要がある」(一般財団法人日本情報経済社会推進協会 主席研究員 寺田 眞治氏)

 「ステマはクローズな世界で行われ、発覚したときにはもう手遅れということも多い。そうならないためにも、通報窓口、特にインフルエンサーから通報できるような窓口を速やかに作っていただくことを期待している」(全国消費生活相談員協会 福永 さつき氏)。

 委員からの意見を見ると、ステマを規制すれば問題が無くなるわけではなく、規制を作ることはスタートであり、そこから事業者や消費者も巻き込んで活動していく必要があると考えているようだ。

 私たちはステマが起きやすい社会に生きている。ステマが消費者に悪影響をもたらし、被害者となってしまうのを避けることはもちろん、ステマに対する理解を高めなければ、私たち自身が加害者になってしまうこともあるのだろう。

 ステマの規制が始まった現在においても気を緩めることなく、情報を受け取るときも、発信するときも、常に冷静で客観的な判断を心がけたいものである。今後も、ステマ関連の動きはウオッチしていく。

参考文献

ステルスマーケティングに関する検討会
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/meeting_materials/review_meeting_005/

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Author

永田未来

永田未来

フリーライター。主婦と生活社を経て独立。美容やヘルスケア関連を含めた多彩な分野で執筆やインタビュー取材に対応。日本で数少ないヘアライターとしての執筆にも力を入れている。音楽誌および女性誌編集者の経験をベースにした分かりやすい情報発信を強みとする。

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