男性看護師座談会 Vol.３ 「美容医療の客層に変化　男性に人気の施術と未成年の二重施術をやらずに返した理由は？」

　美容医療の現場に立つ男性看護師に集まってもらい、座談会を開催。女性看護師とは違った視点もあり、美容医療を検討するときのヒントにもなるかもしれない。第3回は、参加した男性看護師の勤めている美容クリニックでの客層の変化について。

──美容クリニックに訪れる方の男女比率、ここ数年での変化は？

髙橋: うちのクリニックに来院される方の２、３割は男性ですから、だいぶ増加していると思います。SNSやテレビでも男性の美容について報じられることが増えましたよね。

──少し前は１割程度だった。男性は具体的にどのような施術を？

髙橋: 以前勤務していたクリニックでは、ひげなど体の脱毛が多かったです。現在のような皮膚科がメインのクリニックに勤務し始めた頃は、「男性は減るのかな？」と思っていましたが、そんなことはなかったです。

　お伝えしたカスタマイズ治療（男性看護師座談会 Vol.2）は、男性も多いです。うちは、思春期の世代はいらっしゃらないんですけど、20代後半から30代、40代の方がいらっしゃいます。エイジングのお悩みで、くすみ、今までに積み重ねてできた日焼けのシミ治療などが多いですね。

　きっかけとしては、パートナーの方に言われたり、奥様に言われたり、奥様に連れられてこられる方もいらっしゃいます。

──男性も意識が高まっている。

髙橋: 以前、勤務していたクリニックに、某有名俳優の方がいらっしゃって。「共演している俳優のほくろやシミが気になってしょうがない。なぜあのままなのか」と不思議がっていらっしゃいました。

　例えば、コマ撮りしている時に、相手の目を見ないといけないのに、ホクロを見ている。そうすると、監督さんに「『今アゴを見たでしょ』と指摘され、使えなくなったことがある」とおっしゃっていました。

　その方は、美意識がすごく高まった結果ですよね。自身の美意識が高まることで、人の美容、ホクロなども気になる方はいるようです。

──美意識、すごく高まっている。こうじさんのクリニックではどうか？

こうじ: うちのクリニックは皮膚科が女性よりも多く、7対3ぐらいで男性が来てくれています。男性だと若い方が多いですよ。
20代、30代の男性が、年齢的にニキビを気にしてこられますね。施術では、特にダーマペンが多いです。

──最近の20代男性の美意識はすごく高い。

こうじ: そうなんです。最近の20代の男性は、メイクをしている方も多く、この６〜７年で男性たちの意識は一層高まったように感じます。「ちょっと生きにくいんじゃないか？」と心配になるくらいです。

　自分達の20代前半の時は、服や遊びにお金をかけていたんですけど、お肌にお金をかけなきゃいけない時代になってしまったので、「大変だな……」と思うんですね。

　一方で、若い頃から肌の重要性に気付いて、ケアが始められるということは、ずっとその綺麗な状態で過ごしていけるのでうらやましさもあります。早くからのケアで、シミの光老化も防げますし、たるみやシミも予防できます。

　スキンケアを「昔からすれば良かった」というお客さまは、すごく多いんです。

──若い頃からの肌ケアには利点も多そう。外科の方はどうか？

こうじ: 外科は、9対1で女性の方が多いです。男性は美容整形はしない方が多いです。

髙橋: 少々敷居が高いですよね。

こば: うちも、鼻を高くしたり、二重にするなど「綺麗になる」「可愛くなる」という治療は、基本的には女性がほとんどです。

こうじ: 男性って何より痛がりなんです。「痛そう」とか「ちょっと怖い」と、みんな言います。

──女性は、出産など経験すると痛みに強くなる方もいる。

こば: うちは、レーザー、シミ治療は女性が多く、男女比率でいうと9対1です。男性は角質層、皮膚が厚い分、シミが透けるなどがない。肝斑も出てこないですよね。色ムラを気にされる方や、美意識の高い方はレーザーをやるんですけれども、男性はあまり色ムラを気にしない。ファンデーションも塗らないですし。

　ニキビ治療は、7対3、6対4くらいで男性の方が多いですが、皮膚治療は感覚的に女性が多いですね。

　外科のほうはクマ取りなどエイジングの施術を除くとほぼ女性ですが、エイジングの施術も含めると男性が多く、6対4くらいで男性です。クマ取りをされる方が多いのです。

──インスタでも、取ったクマを載せることが流行っている。クマ取りは、お笑い芸人の宮迫博之さんがやられていた施術か？

こうじ: あれはハムラ法ですね。

髙橋: 膨らんでいる部分の脂肪を、くぼんでいる部分に移動させる方法ですよね。

こうじ: そうですね。宮迫さんが行った施術は、再配置といって、目の下の膨らんでいる部分の脂肪を骨膜から取って、もう一回クマになってくぼんでいる部分の骨膜に括り付けて再配置をするハムラ法というものです。単に脂肪を取ってしまうと目の下の皮膚がへこむので、移動させて再配置をするこのやり方だと無駄なく調整できるんです。

──目の下の脂肪の再配置も男性に多い？

こば: 多いですね。20代のうちは二重の幅など上眼瞼、上瞼が気になるんですけど、30代になると下瞼が気になり始めます。老化は、ここ（下瞼）に出やすいんです。人の顔で目の下の皮膚は最も薄いですよね。
脂肪の付き方など、老化による「エイジングサイン」はさまざまありますが、最たるはクマなので「では取ってしまおう」と。

──老化を「元に戻したい」という施術を男性が好んでやる。

こば: そうです。クマ取りや糸リフトなどエイジングの治療がほとんどですね。年齢を問わず、男性の美意識は上がってきていると思います。

　一番びっくりしたのは、小学生や中学生のお子さんが、お母さんを引っ張って無理やり連れてきて、「二重施術をお願いしたい」と言っていたことです。

　男の子だと、最年少が中学3年生です。二重施術、やらなかったですけど。

──なぜか。成長過程だから？

こば: 理由は2個あります。1つは、骨格の発達と目の成長において、糸などが正常な成長発達を妨げる可能性があること。

　２つ目の理由は、こちらのほうが大事で、精神が未発達の状態で「可愛くなりたいから」と見た目を変えてしまうと、美醜感がコロコロ変わる子になってしまう。自分の顔として自分の顔を認識できなくなってしまう。「すぐ変えられるものなんだ」とは思ってはいけない。

──ずっと変えたい、になってしまう？

こば: そうです。整形を繰り返す、依存症のようになってしまう危険性があります。

──何歳からなら外科施術もOKとお考えか？

こば: 18歳を超えてからです。

　医療に従事する看護師として、正常な成長発達ありき、ということは大前提にあるので、皮膚治療は良いと思いますが、外科施術は成人以降ですね。

──体が未発達な上、心が不安定な思春期。一時的な感情や勢いでの整形は良くない、と。

　低年齢化はいわれているが、髙橋さん、こうじさんのクリニックにも来られるか。どのように対処されている？

髙橋: いらっしゃいますよ。中学生くらいでも、今は多方面から情報を得られますし、興味を持つ気持ちは分かります。

　僕が以前、対応させていただいた方は、親御さんがお子さんに対して「どうしても、自分の夢だった芸能事務所に入れたい」「どうしてもデビューさせたい」と言って、鼻、目、顎の整形を熱望して来られました。当時18歳。まだ18歳を成人とする前のお話ですので、先生も僕らもすごく止めました。「もう一度考えて」と。

　お子さんご本人は、ぼーっとしていて言われるがままというふうにお見受けしました。親御さんの思いだけが盛り上がって、一人歩きしているような雰囲気でしたので、成長発達の面も考慮し、うちでは丁重にお断りさせていただきました。

こうじ: うちは、高校生が最年少です。希望されても、すぐに戻せる埋没ぐらいしかお勧めはしないです。切ってしまうと元に戻らないので。話を聞いて、本人の強い意志、明確ななりたい像があれば、埋没でしたらやります。

　強く明確な気持ちを持っていない子は「やっぱり嫌だ」と気持ちがコロコロ変わります。人に言われたり、何かきっかけがあって美容整形を試みるわけですが、精神も未発達なので「やっぱり取りたい」となることが成人よりも多いです。だから、切ることはできないです。

──なるほど。心も体も未発達な未成年の美容整形施術は、周囲も慎重に向き合ったほうが良さそうだ。

看護師プロフィール　※50音順　敬称略

こうじ　新井孝二（29）
大学病院の小児科で３年間勤務した後、大手美容外科でリーダー・スタッフ指導を担当し３年半勤務。現在は立ち上げから携わった赤坂にあるイートップクリニックに勤務。同医院では、眉下の皮膚を切除する“ぱちキワ”が「二重幅が広がる！」と人気。ニキビに悩んでいたとは思えぬほどのツヤのある肌は、自身の美容研究の成果という。サプリメントの知識を常に集めている。美容看護師歴6年目。
Instagram → @e_coopi.a（美容ナース こーじ）

こば（31）
美容関連クリニックのオープンと同時にアルバイトとして入社し３年間勤務。現在は新宿にあるSHERIE CLINICに勤務し４年目。皮膚の重症治療にも携わる。また、男性美容ナースとしてSNSで情報発信を続け、Instagramのフォロワーは23年８月時点で2400人を超える。美容看護師歴は４年目だが、皮膚の解剖生理とスキンケアの研究を続け、勤務する皮膚科では管理職も務める。
Instagram → @dsk_glam（こば。）

髙橋良（48）
美容皮膚科のアルバイトから始まり、複数の美容クリニックで幅広く看護師業務を経験。現在は、東京・神谷町にあるTHE ONE.で主任を務める。細かな分析を行い、一人一人の肌に合わせたカスタマイズ治療が人気。よりよく年を重ねていく「ウェルエイジング」の考え方で、無理のない寄り添った施術を提案してくれる。学んだ美容知識を自ら実践し、年を感じさせない肌の状態を保つ。美容看護師歴16年目。
Instagram → @Theone__clinic（THE ONE. | 美容医療）

（写真／編集部）

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