厚生労働省が第3回の「美容医療の適切な実施に関する検討会」を開催した。
既にヒフコNEWSでは、検討会で示された実態調査や厚労省が示した課題と対応策について記事にしている。
ここでは、検討会で話題に挙がった「美容医療診療指針」の扱いについて書く。
推奨されていないが実施される施術
- 検討会では→ 学会が共同でまとめた美容医療診療指針について議論され、美容医療に関わっている構成員とそうでない構成員の間で意見の違いが浮き彫りになった。
- 美容医療の現場→ 美容医療診療指針で推奨されていない施術が行われているという指摘があり、それが問題だという話が出た。
- PRP+bFGFの問題→ 各医院の判断で美容医療診療指針で推奨されていないが行われていることがあり、過剰な皮膚の盛り上がりやしこりなどの合併症が報告された。
- 報道の影響→ 合併症が報道され、美容医療トラブルの象徴的なケースとして問題視された。
検討会では、学会が共同でまとめた美容医療診療指針について議論されていた。美容医療に日常的に関わっている構成員と、普段関わっていない構成員との間で意見の違いが浮き彫りになっていた。
その内容は、美容医療の現場では、美容医療診療指針で推奨されていない施術が行われているとの指摘があり、それが問題だという話が出ていた。
こうした意見は、美容医療に普段関わっていない構成員から出されていたが、それに対して、美容医療に関わっている構成員からは、推奨されていない施術でも、効果があると判断すれば行うことがあるとの回答があった。美容医療に取り組んでいる構成員は、苦しい立場にあるように見えた。
検討会では、「推奨されていないが実際に行われている施術」が問題だと指摘されたが、その内容は具体的には特定されていなかった。
美容医療診療指針では推奨されていない治療がいくつか示されているが、この1年間の美容医療の話題を振り返った時に最も話題になった治療は一つであろう。それは、PRP(多血小板血漿)に塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を加えたPRP+bFGFと略される治療である。
これは血液の中にある血小板が成長因子を出すことを利用した治療で、日本国内では効果を高めるためにbFGFが加えられることがある。
そもそもPRPは皮下組織を増やすなどして、シワの改善などに利用されているが、bFGFを追加することで効果が高まるとされている。国内では、各医院の判断で、美容医療診療指針の推奨にかかわらず、PRP+bFGFが名称を変えながら実施されている状況がある。
一方で、国内ではPRP+bFGFによって、皮下組織が増えすぎて、しこりをつくったり、皮膚が過剰に盛り上がったりする合併症の報告があった。それが大きく報道されて問題になった。報道では、被害者への取材も行われ、推奨されていない治療が横行している問題が厳しく取り上げられ、美容医療トラブルの象徴的なケースとして扱われた。
ヒフコNEWSでもPRP+bFGFについて何度か取り上げてきた。被害を受けたという人が存在し、その治療に問題があるとする考え方がある一方で、薬剤の用量を精密にコントロールすれば安全に行えると説明する医師からも意見を聞いた。
美容医療診療指針に掲載されていない
- 業界ガイドラインの整備→ 検討会では業界ガイドラインの整備が進むことになったが、美容医療診療指針の扱いも考慮する必要がある。
- 施術を受ける人の関心→ 施術が自分にとってメリットがあるか、デメリットがあるかが重要な関心事である。
- ガイドラインの求められる内容→ 美容医療診療指針では、メリットとデメリットを分かりやすく示すことが求められている。
- 美容医療の施術評価の必要性→ それぞれの美容医療施術をどう評価するか考える必要がある。
検討会では、業界ガイドラインの整備が進むことになったが、それを作成するプロセスでは、既に作成された美容医療診療指針の扱いも考慮する必要があるだろう。
美容医療のトラブルが現実的に増えている中で、施術を受ける人にとって知りたいのは、ある施術が自分にとってメリットがあるのか、デメリットがあるのかどうかだ。
美容医療診療指針を含めたガイドラインでは、そのメリットとデメリットが分かりやすく示されることが求められるだろう。
果たしてそれがどこまで実現できるか。
現行の美容医療指針で示されている項目は、「シミ・イボ」「シワ・タルミ」「乳房増大術」「腋窩多汗症」「脱毛治療」の5分野に限られている。
世界で実施される美容医療の施術を考えると、美容医療診療指針に含まれていない施術が多く存在する。
例えば、まぶたの手術、鼻形成術、唇の強調など口回りの手術、脂肪吸引、腹部形成術、バストリフト、フェイスリフト、糸リフト、ケミカルピーリング、骨切りなどが考えられる。それぞれの施術の中にも、さらに細かい選択肢が存在する。
レーザー一つをとっても、現在はシミの治療としてレーザーが一緒くたになっているが、ナノレーザーとピコレーザーの違いは大きい。
シミやたるみの超音波治療や高周波(RF、ラジオ波)についても、HIFU(高強度焦点式超音波治療、ハイフ)が話題になる一方で、SUPERBやニードルRFといった治療も登場しているが、それらは美容医療診療指針に含まれていない。
こうした美容医療の施術一つ一つを評価すべきかどうか、考える必要がある。
さらに言えば、薬のように、偽薬と容易に比較できる治療とは異なり、外科的な要素を持つ美容医療では、容易に比較試験を行うことができない。顔の輪郭を変える骨切り治療は、他の治療と比較して効果を検証することが難しい。外科的な治療をどう評価するかも考える必要がある。
こうした問題は、日本国内だけで対処できるのか、国際的な協力が必要になる可能性もある。
ヒフコNEWSでも、ガイドラインの整備について今後取材を続けていきたいと考える。