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目のクマ取り 「表ハムラ」と「裏ハムラ」の選び方、知っておきたい選択の判断基準、神戸大学客員教授、RE_CELL CLINIC医師 原岡剛一氏に聞く Vol.2

カレンダー2024.11.28 フォルダーインタビュー

 前回のインタビューでは、脱脂術の課題と対処法を伝えた。今回は、目の下のクマ取りにおける「表ハムラ」と「裏ハムラ」という2つのアプローチ法に焦点を当てる。これらの手術法は、クマの状態や皮膚のたるみ、目の下の溝など、一人ひとりの状態に応じて選び分けられる。神戸大学客員教授で、RE_CELL CLINIC医師 原岡剛一氏は、表ハムラと裏ハムラ、そして脱脂術、すべての手術に対応できる医師に手術を任せることが大切だと考えている。その理由や各手術の特徴について話を聞いた。

原岡剛一(はらおか・ごういち)氏。(写真/編集部)

原岡剛一(はらおか・ごういち)氏。(写真/編集部)

原岡剛一(はらおか・ごういち)氏
神戸大学客員教授 RE_CELL CLINIC医師

  • ハムラ法の概要→医師の名前に由来する下まぶたの手術法で、「表ハムラ」と「裏ハムラ」の二つに派生
  • 表ハムラの特徴→まぶたの表側を切開し、たるんだ皮膚を切除しながら眼輪筋や靭帯を処理。脂肪を移動させて溝を改善し、眼輪筋を吊り上げて固定することでまぶたを引き締める
  • 裏ハムラの特徴→まぶたの裏側からアプローチし、皮膚を切らずに脂肪を移動させる手術法。眼輪筋を傷つけず、より自然な仕上がりが期待できる

──手術をする上では、まぶたの表を切って行う「表ハムラ」と、まぶたの裏を切って行う「裏ハムラ」がある。

原岡氏: はい。「表ハムラ」と「裏ハムラ」という二つの手術方法があります。下まぶたの手術には、医師の名前に由来する「ハムラ法」という方法があります。これから派生して、「表ハムラ」と「裏ハムラ」という二つの手術法が生まれました。

 これまでの経験から、私はまぶたの形態や患者さんの状態を重視して手術法を選択しています。特に下まぶたの手術では、安易な脱脂術で脂肪を取られすぎてへこんでしまうケースを多く見てきました。脂肪を取られすぎてへこんでしまった下まぶたの修正は非常に困難です。そのため、安易に脂肪を切除することはお勧めできません。

脂肪を切除せずに、移動させる手術には、まぶたの表側からアプローチする方法(表ハムラ)とまぶたの裏側からアプローチする方法(裏ハムラ)がある。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

脂肪を切除せずに、移動させる手術には、まぶたの表側からアプローチする方法(表ハムラ)とまぶたの裏側からアプローチする方法(裏ハムラ)がある。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

──現在はどのように手術法を選んでいる?

原岡氏: 患者さんの満足を最優先に考え、一例一例丁寧に取り組んでいます。表ハムラと裏ハムラ、それぞれにメリットとデメリットがあります。例えば、皮膚のたるみが非常に大きい場合は表ハムラが適していますが、皮膚を切らない裏ハムラにも大きな利点があります。特に裏ハムラは眼輪筋を傷つけずに温存できるため、より自然な仕上がりを目指すことができます。

──目のたるみが目立つ人には表ハムラが適しているという考えがある。

原岡氏: 確かに「目のたるみが目立つ人には表ハムラが適している」とされています。皮膚がたるんでいる方には表ハムラを行い、余分な皮膚を切除してたるみを解消するのが良いとされます。

目の下のたるみ、溝の状態を見て、適切な手術法を判断する。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

目の下のたるみ、溝の状態を見て、適切な手術法を判断する。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 表ハムラでは、まぶたの表面の皮膚を切開し、その下にある眼輪筋を切開して手術を行います。溝の原因となっている眼輪筋や靭帯を処理して、その部分に脂肪を移動させて溝を改善します。最終的に眼輪筋を吊り上げて固定しますが、これにより、まぶたを引き締めて緊張感を高めることが可能です。

──裏ハムラはどう考える?

原岡氏: 最近では少し考え方が変わってきています。

 皮膚のたるみが明らかにある場合には、依然として表ハムラが適していると考えています。表ハムラの皮膚を切るというデメリットは、その切開部を用いてたるんだ皮膚を切り取ることができるメリットでもあるのです。

 一方で、私は皮膚の余りが少しある場合でも裏ハムラを行うことがあります。裏ハムラは非常に有効な手術法で、それは間違いありません。

 裏ハムラは皮膚を切らないことが大きなメリットですが、それは上述した表ハムラの逆でたるんだ皮膚を切り取ることができないというデメリットでもあります。これが表ハムラと裏ハムラの最もわかりやすい適応の違いです。

──まぶたを切るかどうかが大きい。

原岡氏: 図にすると分かりやすいのですが、表ハムラは眼輪筋の前面を切開して、その裏側にアプローチします。一方、裏ハムラはまぶたの内側からアプローチし、眼輪筋に到達します。

下まぶた。薄い皮膚と眼輪筋の間には脂肪がない。筋肉の下はすぐ骨がある。下まぶたを後方から押すように眼窩脂肪がある。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

下まぶた。薄い皮膚と眼輪筋の間には脂肪がない。筋肉の下はすぐ骨がある。下まぶたを後方から押すように眼窩脂肪がある。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 表ハムラと裏ハムラの違いは、皮膚を切るか、切らないかという点に思えます。しかし、二つの手術の内容を理解すると、眼輪筋を切るか、切らないかという違いがあることにもお気づきいただけるかと思います。私はこの眼輪筋を切開する、つまり傷つけることが、不利益だと考えています。実際、海外では眼輪筋を傷つけるリスクが指摘されており、例えば外反(まぶたが外側に反り返って、あっかんべぇをしたようになること)のリスクを高めると考えられています。そのため、海外では表ハムラよりも裏ハムラが好まれる傾向にあります。

  • 皮膚と眼輪筋への影響→表ハムラは皮膚と眼輪筋を切開するが、裏ハムラは眼輪筋を傷つけず、外反リスクを軽減する
  • 裏ハムラの難易度→視野が限られるため詳細な解剖学的知識が必要であり、経験不足では成功が難しいが、経験を積めば効果的な治療が可能
  • 皮膚切除を伴う裏ハムラ→裏ハムラの欠点である「皮膚を切らない」点を補うため、手術の最後や後日に皮膚を切除して引き締める方法もある

──裏ハムラの手術も簡単ではない。

原岡氏: 裏ハムラの手術は、慣れていないと非常に難しい場合があります。

 表ハムラはまぶたの内側から広く切開するため、視野が確保しやすく、比較的取り組みやすい方法です。しかし、裏ハムラはまぶたの裏側からアプローチするため、視野が限定され、手術中には詳細な解剖学的知識が求められます。

 私は、形成外科医時代に顔面骨骨折の手術を多く経験してきました。実は表ハムラ、裏ハムラの手術は、顔面骨骨折の手術と共通する部分が非常に多いのです。その経験は、美容外科医として目の下のクマ取りの治療に大いに役立っています。経験が不足していると、裏ハムラを成功させることは難しいです。しかし、経験を積めば、限られた視野でも十分に手術が可能になります。

 裏ハムラをマスターすると、そのメリットを最大限に活かし、「皮膚がたるんでいる=表ハムラ」という従来の考え方にとらわれずに治療できます。裏ハムラの欠点である「皮膚を切らないために皮膚を取れない」という点については、手術の最後に皮膚を切除して引き締める方法を取り入れています。これにより、裏ハムラのメリットを維持しながら、皮膚のたるみも効果的に改善できます。この追加の皮膚切除は、後日に行うこともできます。その場合、手術回数が増えてしまうのですが、どうしても皮膚を切ることに抵抗があって踏み切れない患者さんには、有効な手段かと思います。

──表ハムラと裏ハムラを臨機応変に使い分ける。

原岡氏: 私は、表ハムラと裏ハムラ、そして単に眼窩脂肪を減量する脱脂術のすべてを行える医師を選ぶべきだと考えています。その上で「あなたにはこちらの方法が適していますよ」と、患者さん一人ひとりに最適な提案をすることが重要です。

 私自身の技術もアップデートしてきました。下まぶたの治療に取り組み始めた頃は表ハムラを中心に行ってきましたが、最近では皮膚の余裕が少ない方や、まぶたへの負担を軽減したい場合には裏ハムラを積極的に提案するため、完全にその割合は逆転し、裏ハムラが多くなっています。

 裏ハムラの台頭による大きな変化として感じるのは、若い患者さんが増えたことです。下まぶたのアンチエイジング手術としてのハムラは、表ハムラから裏ハムラへと進化することで、若い患者さんにも適応が広がったように思います。

 若い間に手術を行うということは、より効果が長持ちする手術を心がける必要があります。

 一方で、皮膚のたるみが明らかな場合や表ハムラが適していると判断した場合には、引き続き表ハムラを選択しています。このように考えてみると、やはり患者さんの個々の状態に合わせて、適した手術法を一緒に考えて、提案し、提供することが非常に大切だと思えます。

原岡剛一(はらおか・ごういち)氏

原岡剛一(はらおか・ごういち)氏

プロフィール

原岡剛一(はらおか・ごういち)氏
1994年大阪市立大学医学部卒業。神戸大学医学部附属病院美容外科診療科長兼特命准教授などを経て、23年、神戸大学大学院医学研究科形成外科学客員教授、ソウル大学 形成外科 海外教員、24年、RE_CELL CLINIC医師。日本形成外科学会美容医療に関する委員長、評議員、日本美容外科学会JSAPS理事、評議員、学術教育委員長、日本美容医療協会理事などの公職を務める。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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