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【2025年美しさとは】老化を遅らせる、アンチエイジング医療の最前線、「10歳若返り」が世界で本格的に動き出す、日本抗加齢医学会の山田秀和理事長に聞く Vol.1

山田秀和(やまだ・ひでかず)氏。近畿大学医学部皮膚科客員教授。近畿大学アンチエイジングセンターファウンダー。日本抗加齢医学会理事長。(写真/編集部)

山田秀和(やまだ・ひでかず)氏。近畿大学医学部皮膚科客員教授。近畿大学アンチエイジングセンターファウンダー。日本抗加齢医学会理事長。(写真/編集部)

山田秀和(やまだ・ひでかず)氏
近畿大学医学部皮膚科客員教授
近畿大学アンチエイジングセンターファウンダー
日本抗加齢医学会理事長

  • XPRIZE Healthspanコンペティション→ 老化速度を抑え、10歳若い状態を証明することを目指す国際プロジェクト。2030年を目標に開催。
  • ターゲットとなる機能→ 脳、免疫、筋肉の3つの機能を若返らせることで老化速度をコントロールすることを目指す。
  • アンチエイジングの視点→ 「若返り」という言葉よりも、「老化速度のコントロール」に重点を置く考え方。

──「若返り」が本格的に注目されている。

山田氏: 以前から「若返り」の研究に注目してきましたが、ここにきてそれが大きく動きそうなのです。「健康寿命の延伸」、つまり心身の若返りの時代に入ったといえると考えています。

 健康寿命を延ばすというのは、言ってみれば予防医学の領域です。運動や栄養、メンタル面、そして周囲の環境といった多面的な要素が重要になり、これらはさらに細かく解析されるようになっています(つまり、健康寿命を延ばす際の治療の領域に入ることを意味しています)。

 いわゆる「生物学的年齢」もよりきめ細かくなってきています。生物学的年齢は、遺伝子のオンオフのパターンである「DNAメチル化」の状態からその人の生物学的な年齢を測るものです。従来は、DNAが何をしているか分からない状態で解析していましたが、DNAメチル化の状態がどの遺伝子に影響を及ぼすかを理解し、因果関係まで含めて詳細に解析できるようになっています。これについて「ブロック」に注目してメカニズムが見えるようになってきているということがあります。また、DNAメチル化の程度について「スコア」と呼ばれる指標を用いて、より詳細に解析する試みも始まっています。

 このようなアプローチによって生物学的年齢がより正確な情報として利用できるようになってきています。

──若返りが目に見えるようになる。

山田氏: そうした中で、23年の秋頃から、アラブの財団Hevolution foundationなどが支援する「XPRIZE Healthspan」という国際コンペティションが動き出しています。

 ここでは30年を目標に老化を遅らせて10歳くらい若い状態にできることを証明したら莫大な賞金を用意するという壮大なプロジェクトです。CO2削減や宇宙開発などと並ぶ人類の課題として健康寿命の延伸を掲げているのです。

──「若返り」を本当に実現する。

山田氏: このコンペには、世界中から約400のチームが参加しているとされます。この中から10チームに絞られます。何がすごいかといえば、今まで漠然とした「若返り」や「老化」といった概念をより明確に定義し実証しようとしています。「脳」「免疫」「筋肉」の3つについて老化速度を抑えたかどうかを証明するということが重要視されます。今までは「どこかの臓器だけ若返ったから若返り」という曖昧さがありましたが、複数の臓器すべてで老化速度を落とすことを示します。

──何を目安にすればよいかがはっきりした。

山田氏: そこで初めて、みんなが「ああ、そうか」と理解したわけです。

 つまり、「適当に若返る」とか「特定の臓器だけ若返る」ことが若返りではないのです。コンペでは、いわゆる老化のコントロールとは、少なくとも3つの機能を若返らせることを前提としています。そして、そのターゲットとなる3つの機能に基づいて「10歳若返る」、1年で老化速度を抑えるなど、具体的な加速や減速の目標を設定できるようになります。

 ここで重要なのは、今日何らかの治療をして明日すぐ元に戻るという話ではないことです。

 例えば、60歳からスタートし、老化速度をコントロールし続けることで、20年後に80歳を迎えた時、生物学的には70歳相当の状態を目指せる──こういう長期的な発想が必要ということです。

──20年近くの間で老化を遅らせる。

山田氏: コンペティションでは、直接、「若返り」といった言葉は使っておらず、老化を遅らせるという考え方です。80歳の人が70歳になることを「10歳若返った」とは言っていません。老化速度をコントロールするという視点から語っています。ですからアンチエイジングという言い方の方がふさわしいかもしれません。

 3つの機能を最終的に達成すべき課題「エンドポイント」とする老化のコントロールに関連した研究も本格化しています。

  • パーシャルリプログラミングの仕組み→ 細胞を完全に初期化せず、「ほんの少しだけ初期化」して細胞の年齢を戻す技術。
  • エピジェネティッククロック→ 細胞の老化状態を示す指標で、マウス実験では巻き戻しが成功。
  • 老化のホールマーク→ 老化に関与する複数の要因を同時に扱うため、多様な研究と治療法が求められている。

──注目される研究は?

山田氏: 老化に関連した細胞内の情報の理論が今は流行ですが、老化の本質が分かっているわけではありません。多くのルートをコントロールする必要があります。その中で、おそらくリプログラミングが今の時点では研究が盛んだと思います。「パーシャル(部分的)ダイレクト(直接)リプログラミング」が注目されています。

 マウス実験で「エピジェネティッククロック」を巻き戻したという報告が出てきて、人でも可能じゃないかと大きな期待があります。

 京都大学の山中伸弥教授が「iPS細胞」を作りノーベル賞を受賞しました。このiPS細胞を作るためには、「山中因子(4つの転写因子)」というものを使って、細胞を受精卵に近い状態まで初期化します。パーシャルリプログラミングでは、「ほんの少しだけ初期化」することで、細胞の年齢を戻そうというのです。しかも、初期にまで戻さないで、直接、適切な分化したところに戻すことになります。

 これは研究が始まったばかりですが、マウスではある程度成功例が見えてきました。人間でどうなるかは今後の臨床試験次第になります。29年頃の臨床試験を目標にしているようです。

──老化をいかに遅らせるか。その方法を見つける努力が始まっている。

山田氏: 例えば、老化細胞を除去すればいいという意見もありますが、それだけで済むとは考えにくい。老化のホールマーク、つまり老化に関わる要素は数多く存在すると考えられており、さまざまなアプローチが必要になりそうです。リプログラミングも大事だし、老化細胞の除去も大事だしという具合です。

プロフィール

山田秀和(やまだ・ひでかず)氏。近畿大学医学部皮膚科客員教授。近畿大学アンチエイジングセンターファウンダー。日本抗加齢医学会理事長。(写真/編集部)

山田秀和(やまだ・ひでかず)氏。近畿大学医学部皮膚科客員教授。近畿大学アンチエイジングセンターファウンダー。日本抗加齢医学会理事長。(写真/編集部)

山田秀和(やまだ・ひでかず)氏
近畿大学医学部皮膚科客員教授
近畿大学アンチエイジングセンターファウンダー
日本抗加齢医学会理事長

1981年近畿大学医学部卒業。1981年オーストリア政府給費生(ウィーン大学皮膚科、米国ベセスダNIH免疫学)。1989年近畿大学医学部皮膚科講師。1996年近畿大学在外研究員(ウィーン大学)。1999年近畿大学奈良病院皮膚科助教授。2005年近畿大学奈良病院皮膚科教授。2007年近畿大学アンチエイジングセンター副センター長(併任)。2022年近畿大学客員教授。日本抗加齢医学会理事長。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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