ヒフコNEWS 美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイト

「3LTBST」と「BONSAI」が導くジャパンビューティーとこれからの美容医療、日本の美意識から施術の理想を考え続けてきた、自由が丘クリニック理事長 古山登隆氏に聞くVol.2

カレンダー2025.2.28 フォルダーインタビュー
古山登隆(ふるやま・のぶたか)氏。自由が丘クリニック(東京都目黒区)理事長(写真/秋元忍)

古山登隆(ふるやま・のぶたか)氏。自由が丘クリニック(東京都目黒区)理事長(写真/秋元忍)

古山登隆(ふるやま・のぶたか)氏
自由が丘クリニック(東京都目黒区)理事長

──美容医療がどうあるべきかを「3LTBST」や「BONSAI」のように言葉で表現している。

古山氏: 日本の美容医療をアピールする必要があると考えてきました。

 日本をアピールしなければいけない理由は、グローバル化が進んでいるからです。情報はどんどん共有され、技術的な面では世界中のクリニックが横一線で並びます。

 その中で、例えば韓国は“KOREAN LOOKING(コリアン・ルッキング)”のコンセプトを国策として推進しました。その結果、化粧品やファッション、エンタメにまで広がり、国際的な学会でも“コリアン・ルッキング”が認知されるようになりました。

 日本は安全性が高く、技術も優れている国です。しかし、その魅力が十分に伝わっていない。日本の強みは、緻密さや正確性にあります。韓国のように、顔立ちを統一するのではなく、多様性を生かしながら「美しさの基本」を確立できるのではないかと考えています。そのために、「3つのポイント」や「ジャパンビューティーの定義」など、言語化することが重要になってきます。

──「3LTBST」の言葉で美容医療で求められる要素を言葉にした。

古山氏: そうですね、「3LTBST」という言葉は、私がずっと追求してきた“顔のデザイン”を整理したもので、簡単に言うと「3つのライン(3 Line)」「三角形(Triangle)」「バランス(Balance)」「肌のトーン(Skin Tone)」という4つの要素をまとめているんです。

 例えば、「3つのライン」って、輪郭とか頬から口元にかけての曲線とか、横顔の鼻・顎のラインといったものを指しています。これらがうまく調和していると、ぱっと見たときに「自然できれいだな」と感じますよね。

※3Lは、「Facial Line(輪郭のライン)」「Ogee Line(頬から口元にかけての緩やかなカーブ)」「Aesthetic Line(鼻・唇・顎を結ぶ横顔のライン)」。

 それに加えて、顔を横から見たときの三角形の構造──若いときは頬が高くて下に向かってすっと締まっている“逆三角形”なんですが、年齢を重ねるとそこが崩れていくので、適度に調整してあげる。また、左右対称とかパーツ同士の配置バランスもすごく大事で、そこが崩れると違和感が出てきます。

 最後が肌のトーンです。形が整っていても、肌がくすんでいたり色むらがあったりすると、どうしても印象が冴えない。そこを補ってあげることで、より美しさを引き立てることができます。

 こうした4つの視点を常に意識しながら施術デザインを組み立てると、“やりすぎ感”のない、自然な仕上がりを目指せるんですよ。

──最近は「BONSAI」のコンセプトに着目している。

古山氏: この発想は、ヨーロッパの先生との会話がきっかけでした。私たちは「内・外・心」の三方向から美容医療を通して人生に貢献するというコンセプトを掲げています。海外の先生が「Inside out」と表現しましたが、私はさらに精神面の要素も加えたいと考えました。そして、日本の特徴を表すものとして「BONSAI」という概念が浮かびました。

 盆栽は、もともと自然にある美しさに少し手を加え、さらに美しくするというものです。これは美容医療の考え方と似ています。派手ではなく、「品」や「華」がある。これはまさにジャパンビューティーの本質ではないかと考えました。

 韓国は“コリアン・ルッキング”のコンセプトを広めましたが、一方で、日本の美容医療は技術の高さや丁寧な施術が評価されながらも、十分にアピールできていません。だからこそ、日本独自の「ジャパンビューティー」を早急に確立する必要があると考えています。

 例えば、「盆栽エステティック」や「無作為の中の作為」、さらには「歌舞伎メイク」などを考えています。日本の伝統的な美意識を取り入れた概念を学会でも積極的に発信し、海外に向けて日本ならではの美容の魅力を広めていきたいですね。

──美容医療においてデザインは重要。

古山氏: 大阪で基調講演をした際、若い先生から「先生のデザインの美しさに感動しました」と言われたことがありました。私は「世界一美しいデザインができる美容外科医」を目指しています。そのために、「3LTBST」や「BONSAI」の考え方、「無作為の中の作為」といった要素を取り入れながら、常にデザインを意識しています。

 「無作為の中の作為」は、日本庭園の思想から来ている概念です。一見、自然のままの景観に見えても、実際には計算し尽くされた配置やバランスによって美しさが生み出されています。例えば、石の配置や植栽の間隔は、偶然に見えて実は綿密に計算され、意図的に「自然らしさ」を演出しているんです。

 美容医療においても、この考え方は重要だと考えています。施術後に不自然にならないように微調整を重ねます。いかにも「手を加えました」という仕上がりではなく、自然に美しく見えることを重視します。そのためには、どこまで手を加えるか、どこをあえて残すかというバランスが求められます。

──美容医療においてデザインは重要。

 私たちが目指しているのは、ただ整えることではなく、その人本来の美しさを引き出すことです。日本庭園の「無作為の中の作為」のように、あくまで自然に見せながらも、細部にこだわり、計算されたデザインを施すことで、より洗練された美しさを創り上げる。それこそが、日本の美容医療が持つべき哲学だと思います。

 また、あるとき、自分のデザインを見返してみると、歌舞伎の隈取(歌舞伎ならではの化粧法)と共通点があることに気づきました。歌舞伎のメイクは色の濃淡で凹凸を表現しますが、美容医療では実際に凹凸をつくるという違いはあるものの、本質的な考え方は似ています。私は絵を描くのが好きで、手書きのデザイン画を来院された方々にも見せるのですが、その手法もまた歌舞伎メイクと共通するものがあります。

 そうした視点から、盆栽、日本庭園、歌舞伎メイクといった日本の伝統美をエステティックと結びつけることを、この数年のテーマとして取り組んできました。現在は海外の先生方とも議論を重ね、京劇なども含めた「アジアンビューティーとは何か」という研究を進めています。ブランドは細部へのこだわりと手間の積み重ねによって成り立ちます。雑に仕上げるのではなく、いかに精密に作り込むか。これを日本なりに言語化し、世界に発信していくことに大きな価値があると考えています。

──「言語化の必要性」を感じるようになった経緯とは。

古山氏: 海外での経験が大きかった。特に2009年にメルボルンで参加した、特訓のようなプログラムが転機になりました。選ばれたドクター10人ほどと1週間缶詰になり、技術だけでなくプレゼンテーションの方法を学ぶことがありました。そこで日本と海外の大きな差を痛感しました。

 当時、日本の学会発表はパワーポイントのスライドに、青い背景の中に文字をずらずらと並べるだけのものが多かったのですが、海外ではストーリー性を持たせ、スライドを効果的に切り替えたり、アニメーションを使って印象的に見せたりするのが一般的でした。

 それを若い先生に「日本の発表、ちょっと野暮ったくないですか?」と言われて、正直ショックでした。そこから、「日本の美をどう伝えるか」を本気で考え始めました。

──アイデアを生むのは容易ではない。

古山氏: 常に考えています。日本の美の特性とは何か、ジャパンビューティーとは何か。調べたり、プレゼンで示したり。「通じるだろうか」など思うことはありますが、それでも「BONSAI」を示してみると、海外の方からも「なるほど、日本らしいね」と共感を得ることができました。欧州の人々にとっても、日本文化のアイコンとして馴染みがあるので、伝わりやすかったんです。

 日本では、美の基準が個々の感覚に委ねられがちですが、言語化することで初めて共通の価値観として認識されます。

 「3LTBST」という言葉も、最初はなかなか理解されなくても、発信し続けることで「面白いかもしれない」と関心を持つ人が増えてきます。また、「BONSAI」という言葉も、最初は「なぜ急に?」という反応でしたが、今では「なるほど、日本の美意識を表現する言葉」と認識されるようになっています。

 私たちの世代がこの土台を作り、それを次の世代がさらに発展させていく。そんな未来を描いています。

プロフィール

古山登隆(ふるやま・のぶたか)氏。自由が丘クリニック(東京都目黒区)理事長(写真/秋元忍)

古山登隆(ふるやま・のぶたか)氏。自由が丘クリニック(東京都目黒区)理事長(写真/秋元忍)

古山登隆(ふるやま・のぶたか)氏
自由が丘クリニック(東京都目黒区)理事長

1980年、北里大学医学部卒業。北里大学医学部形成外科入局。85年、チーフレジデント。86年、北里大学形成外科研究員。89年医学博士取得。北里大学形成外科講師。91年、日比谷病院形成外科医長。95年、自由が丘クリニック開設。19年、国立大学法人千葉大学医学部形成外科非常勤講師。

記事一覧

  • 「地域性」と「ノンサージカル」の力で30年、自由が丘クリニックが注目した強みとは、美容クリニックの選び方を考える、自由が丘クリニック理事長 古山登隆氏に聞く Vol.1
    https://biyouhifuko.com/news/interview/11530/
  • 「3LTBST」と「BONSAI」が導くジャパンビューティーとこれからの美容医療、日本の美意識から施術の理想を考え続けてきた、自由が丘クリニック理事長 古山登隆氏に聞く Vol.2
    https://biyouhifuko.com/news/interview/11546/
  • 男性美容が本格化、「かっこよさ」だけではなく「魅力」を追求、シワやたるみのケアが「エチケット」にも、自由が丘クリニック理事長・古山登隆氏に聞く Vol.3
    https://biyouhifuko.com/news/interview/11580/
  • 再建外科の視点で変わる美容医療、美容クリニックで口唇口蓋裂も、若手ドクターの「直美」は技術的な課題も、自由が丘クリニック理事長 古山登隆氏に聞く Vol.4
    https://biyouhifuko.com/news/interview/11595/

ヒフコNEWSは、国内外の美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイトです。美容医療に関連するニュースを中立的な立場から提供しています。それらのニュースにはポジティブな話題もネガティブな話題もありますが、それらは必ずしも美容医療分野全体を反映しているわけではありません。当サイトの目標は、豊富な情報を提供し、個人が美容医療に関して適切な判断を下せるように支援することです。また、当サイトが美容医療の利用を勧めることはありません。

Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

お問い合わせ

下記よりお気軽にお問い合わせ・ご相談ください。