
韓国のライアン美容外科クリニックのチェ・サンムン院長。(写真/編集部)
- 豊胸手術→ 年間約1000件の症例のうち95%が豊胸手術。多数のデータと経験が専門性の評価につながっている。
- 安全体制→ 麻酔専門医と連携し、術中・術後の痛み管理や緊急対応体制を整備。
- 医療観光政策との関係→ 公的なファシリテーターに頼らず、すべてクリニック独自で対応。公的セクターの取り組みは評価しつつも、柔軟な診療のため独自路線を重視。
──チェ院長は、自身のイングリッシュネーム「RYAN」に基づき、クリニックの理念を定めている。
チェ氏: クリニックの名前である「RYAN」は私のイングリッシュネームですが、その綴りの各文字に意味を持たせ、「Rebirth(再生)」、「Younger(若返り)」、「Advance(先進)」、「Natural(自然美)」という4つの価値観を表すキーワードを掲げています。
自分本来の美しさを再生し、若々しさを保ち、最先端の医療技術を取り入れながらも、自然な仕上がりを追求するという私たちの理念を象徴しています。実際の施術でも、人工的ではない、自然な美しさを最優先に考えています。自然なバランスを目指し、一人ひとりに合ったアプローチを行うのが私たちの基本方針です。
──海外からの来院者も多い。
チェ氏: 私たちは年間で約1000件の症例を手がけ、95%が豊胸手術です。多くのデータと経験値を蓄積してきたことが豊胸手術の専門家としての評価につながっていると考えています。
大型のチェーン展開をしている医療機関では、1日に多数の人々がバスで来院することもあるようですが、私たちはオーダーメイドの美容医療を大切にし、1対1で向き合う姿勢を重視しています。
来院される方々の悩みに寄り添うため、「じっくりお話を伺う」カウンセリングを、何よりも重視しています。特に海外から来院される方には言語面や文化面のハードルがあり、当院では英語や日本語の通訳対応を行います。来院される方の職業、生活スタイル、希望する仕上がりを丁寧に聞き、3Dスキャンなどを用いて最適な施術プランを提案します。
──海外からの医療観光を受け入れる上で重視しているポイントは?
チェ氏: クリニックを運営するうえで大切にしているのは、ビジョンに基づいた施術です。
韓国だけでなく、日本や中国、香港、シンガポール、欧米など各国から来院される中で、それぞれのニーズや体格、文化的背景に合わせて手術をカスタマイズします。一方で、施術を標準化する取り組みも進めています。
また、私たちのクリニックは大きな病院やチェーンクリニックと異なり、手作りの温かさを感じていただけるよう工夫しています。チーム全体が家族のように来院する方々をお迎えしています。
院内設備はスタイリッシュで清潔感のある雰囲気を保つだけでなく、無菌手術室や最新の除菌システムを導入しています。超音波検査機器や3Dスキャンなどを駆使して正確に身体の状態を把握しています。
安全第一主義を貫くためには、一人の医師だけでなく複数のスタッフや専門医が連携する仕組みが不可欠です。手術の際には25年以上の経験を持つ麻酔専門医と連携し、術中、術後の痛み管理を行います。万が一の緊急時にも即座に対応できる体制を整えています。
──どのような施術を望むかの聞き取りなど、コミュニケーションは重要だ。
チェ氏: カウンセリングから術後フォローに至るまで、迅速かつ丁寧な対応を徹底しています。
具体的には、術後の状態をオンラインで報告できる体制を整え、緊急時の連絡や定期的な経過観察もスムーズに行っています。海外からの来院に対してもオンライン相談や通訳を通じ、言語や文化の違いによるストレスを感じさせないよう配慮したサポート体制を築いています。
──韓国政府が運営する「コリアメディカル」などの公的な取り組みがあり、医療観光のファシリテーターもある。
チェ氏: 私たちのような独自に海外からの来院者を集められる美容クリニックにとっては、公的な窓口は必ずしも必要ないと感じています。国の支援に依存する必要はありません。外部のファシリテーターを通して人の紹介を受けてはいません。民間のクリニックですべて対応できるならば、その自由度を生かし、診療に柔軟に取り組めます。
公的セクターの取り組み自体はポジティブに捉えています。言語の壁や説明不足によるトラブルのリスクを最小限に抑えるためには、通訳体制やオンラインサポートの充実が重要だと考えます。

同院は豊胸バッグモティバ(Motiva)の日本のトレーニングセンターとなっている。(写真/ライアン美容外科クリニック)
- Preservé(プリザベ)技術→ 傷跡やダメージを最小限に抑えた負担の少ない乳房形成術。専用器具を用いて回復を早め、安全性を向上。
- 限定された技術提供→ プリザベは研修修了者のみが施術可能で、韓国では導入初期段階。アジア全域への普及が期待される。
- 高い技術力と効率性→ 通常2時間かかる豊胸手術を40分で実施可能。出血も少なく、海外からの医師に驚かれることも。
──2024年、豊胸バッグの主要ブランドであるモティバ(Motiva)のグローバルKOL(キー・オピニオン・リーダー)に選ばれた。
チェ氏: モティバのグローバルKOLとして、ドイツやイタリア、日本など各国の専門医と交流しています。当院はモティバ公式の日本トレーニングセンターに指定されており、日本の医師も研修に訪れています。
──手術の技術が評価されている。
チェ氏: 私自身、海外との技術交流に取り組んでいます。国際学会への参加に加え、私自身が海外に赴くほか、日本やドイツなどから医師を当院に受け入れることもあります。
過去にイタリアのパレルモで研修を受けたことがあります。ですから、イタリアとの交流は今でも続いています。最近では、ドイツで脂肪注入技術に関するディスカッションを行いました。日本も頻繁に訪れています。
また、中米コスタリカにあるモティバのヘッドクオーターに置かれるイノベーションセンターでの技術を習得することもあります。ここには世界中から美容外科医が集まります。最新技術の研究成果が共有されるのです。
──中米は米国からの美容医療が盛んと聞くが、そのセンターで学べる技術とは?
チェ氏: コスタリカの施設で修得できる技術の一つが、モティバが提唱する身体への負担が低い「Preservé(プリザベ)」と呼ばれる技術です。プリザベは乳房本来の状態を可能な限り温存しながら形を整える、組織の保存を重視する術式です。組織を優しく広げてポケットを形成する専用のバルーンや、最小限の切開で挿入できるスリーブを用いることで、傷跡を最小限に抑え、回復を早め、安全性を高めます。
プリザベは、研修を修了した限られた医師のみが対応可能です。このように認定の仕組みを作ることで技術水準が保たれているのでしょう。これは韓国においても入り始めたばかりの技術であり、アジアにも広がっていくことになるでしょう。
グローバルの拠点で得た最新の技術を提供できることは、私たちのアドバンテージでもあります。
──負担の小さな手術を可能にしている。
チェ氏: 通常2時間ほどかかるとされる手術を、私たちは40分ほどで行うことができます。いや、40分での施術でもまだ遅いと言って良いかもしれません。研修に訪れた医師は、みんな出血の少なさに驚いています。さらに高水準を目指すべく日々研鑽を重ねています。私が目指しているのは、来院される方々がご自身の美しさを最大限に引き出せるようにすることです。

韓国のライアン美容外科クリニックのチェ・サンムン院長。(写真/編集部)