
天神竹井皮膚科 美容皮膚科 院長 竹井賢二郎氏(写真/編集部)
竹井賢二郎(たけい・けんじろう)氏
天神竹井皮膚科 美容皮膚科 院長
- PN製剤は慎重に導入→竹井氏は「プルリアル」を導入。他の医師の臨床経験や症例を参考に、安全性を確認したうえで活用している。
- 肌質改善の目的で選ぶ施術→肌質改善だけが目的なら注入系製剤が効率的。高周波はたるみ改善との併用で一石二鳥の効果が狙える。
- 施術の間口を広げる選択肢→他の治療で仕上がっている人の「あと一歩」に有効。慎重に選定しながら、肌の状態に応じて選択している。
──「肌育」「バイオスティミュレーター」「スキンブースター」についても取り組もうとしている。
竹井氏: 私自身は、現在のところ、PN(ポリヌクレオチド)製剤の一つ「プルリアル」を導入しています。物理的にテンションをかける行為に確かに効果があり、そこに注入による反応のメリットが出てくる場合もあると見ています。その効果としては、「この一発で絶対に結果を出す」という姿勢よりも、他の治療との組み合わせの中で総合力を付けるために間口を広げる治療と考えています。
そもそも私は新しい製剤には慎重な立場を取るようにしています。バイオスティミュレーターの分野は、明確なエビデンスが十分に揃っていない世界です。だからこそ、専門的に取り組んできた方の臨床経験や判断を聞いて、その先生方が「これはいいですよ」と言えれば、「じゃあ、自分もやってみようか」と考えるようにしています。私の導入しているPN製剤についても、「炎症が落ち着くケースが多い」「アトピーの患者さんにも使っています」といった結果を聞いた上で、医師として試してみたいと考えました。
──他の治療と比べつつ位置づけを探っている。
竹井氏: 肌質改善だけを目的としたときには、それらの注入系を選ぶのが賢明である可能性も考えています。
高周波による肌質改善の効果に注目していますが、肌質改善だけを目的にする場合には、高周波はもったいないかもしれません。たるみも改善したいという方が、肌質の改善もできるという一石二鳥を狙える施術ですから。
肌育系の注入には、ヒアルロン酸やアミノ酸を組み合わせた注入製剤が複数あります。一方で、バイオスティミュレーターやスキンブースターと呼ばれる製剤としては、大きくPN(ポリヌクレオチド)製剤やPDRN(ポリデオキシリボヌクレオチド)製剤と呼ばれる核酸系のものと、PCL(ポリカプロラクトン)製剤やPLA(ポリ乳酸)製剤という重合させるプラスチック系の製剤があります。
バイオスティミュレーターは注入することで物理的に皮膚を持ち上げるだけではなく、異物反応をあえて起こして組織内に微小な肉芽腫を作るという、ある意味で「強引」な効果を発揮し、確かに効果は高いと考えています。それらの治療の異物反応に対して抵抗感があったり、しこりが心配であったりする場合があり、そうした安全性を重視したいという方には、肌育系の方が受け入れやすいと考えています。
──肌質を改善する上で有効な選択肢になり得る?
竹井氏: ある程度、他の施術にも取り組んできて仕上がっていた方で、ほんの少し厚みが足りないと感じるようなとき、さらに状態を改善させたいという場合に向いた選択肢ととらえています。「少しでも効果があるなら」と導入を考える姿勢自体は技術の間口を広げるという意味で理解できます。実際、そういうスタンスで取り入れている先生も多いと思います。
肌質改善を行うときに、熱が届く範囲を考えると、レーザーでは1~2mmにアプローチできるのですが、真皮の深層の2mm前後に作用するアプローチは限られていた感覚があり、その深さにアプローチする上でバイオスティミュレーターは選択肢として良い印象があります。
ただし、高周波でもそれくらいの範囲の肌質の改善ができるようになりましたから、それらの選択肢の中で検討しながら進めています。

天神竹井皮膚科 美容皮膚科 院長 竹井賢二郎氏(写真/編集部)
- ポテンツァの総合力→深さやチップの使い分けで多様な効果を発揮。汗管腫やニキビ痕、肌質改善にも対応できる万能型のニードルRF機器。
- 症状に応じた最適化→シングルニードルは汗管腫に有効、ダイヤモンドチップは肌育に近い効果、ローリング型のニキビ痕にも適しているが、赤みや色調の改善は難しい側面も。
- 美容皮膚科の本質→皮膚の構造や症状の微細な違いを理解し、それに応じた施術を行うことが美容皮膚科の重要な姿勢と位置づけている。
──肌の表面近くの施術としてはニードルRFのポテンツァ(Potenza)なども評価が高い。
竹井氏: ポテンツァも0.5~1.75mmなど、ニードルの刺入の深さを目的により0.25mm単位で変えながら使い分けます。ポテンツァは、ニードルの使い分けをすることで幅広い効果を狙えるので総合力のある機器だと考えています。
例えば、シングルニードルを使うことで、汗管腫に対応できるという、その治療を得意とするアグネス(AGNES、ニードルRFの一種)という機器のような機能を発揮します。汗管腫の治療目的だけで導入メリットがあるような印象もあります。
一方で、ダイヤモンドチップを使うことで、出力は弱いものの、浅い層を照射できる、肌育効果を発揮するXERF(ザーフ)のような機能の類似の効果を期待できます。
ポテンツァについては一般にはニキビ痕(アクネスカー)の対応に適していると言われますが、なだらかに凹むローリング型のスカーを治療する効果があります。
ただし、ニキビ痕の多くはなかなかポテンツァだけでも治しきれないものが多いのも事実です。ニキビ痕の赤みや色調などを改善するのは簡単ではありません。
様々な症状を考えた時に、個別の症状に対して有利な機器はあるのですが、ポテンツァはオールラウンドに対応することができるのが利点です。
──最近では、針なしで空気により製剤の注入も行えるエアジェット方式の機器も注目されている。
竹井氏: エアジェット系の機器は未導入ではありますが、ニキビ痕の治療に有用という印象を持っています。例えば、小さいクレーターが多い方に早く、的確に治療できる可能性を考えています。現在でも、注射により対応できていますが、浅いところに対応できる点で注目しています。
鋭角に凹んでいるアイスピック型のスカーには効果は限られるようですが、もう少し大きなボックス型のスカーなどには効果がある印象です。
──どういった機器を導入するかによりクリニックの特徴が定まってくる。
竹井氏: 機器を増やすことで、そのクリニックの治療能力を高められることになります。例えば、ニードルRFの一つであるシルファームXを導入したとすると、そのクリニックでは肝斑の治療をよりうまくできるようになります。機器の導入は必ずしも収入を増やすために行うわけではありません。あくまでより良い治療を可能とするためということが多いわけです。どういう能力を高めるべきか、可能性の広がる機器を優先的に入れていくことになります。
──皮膚の繊細な構造を理解し、治療手段をきめ細かい判断の下で増やしていく。
竹井氏: 美容皮膚科は微細な差に注目して、そこにアプローチして、改善効果を引き出すものです。皮膚科のことを分かってこそ、理解できるのが美容皮膚科という分野ではないかと考えています。(続く)

天神竹井皮膚科 美容皮膚科 院長 竹井賢二郎氏(写真/編集部)
プロフィール
竹井賢二郎(たけい・けんじろう)氏
天神竹井皮膚科 美容皮膚科 院長
2007年、九州大学医学部卒業後、九州大学病院にて初期研修。2009年、九州大学皮膚科学講座に入局し、立正佼成会附属佼成病院(東京都)勤務を経て、2010年に長崎県中対馬病院、2011年に九州大学病院に勤務。2012年より九州大学大学院にて皮膚科学を専攻し博士課程に進む。2014年には飯塚市立病院皮膚科医長を務め、2017年に九州大学皮膚科を退局後、宮崎県の医療法人中野会中野医院で美容皮膚科に従事。2018年からは福岡市のクリニックで院長を務め、2019年に天神竹井皮膚科 美容皮膚科を開設。
