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皮膚科の専門性が導く美容皮膚科の質とトラブルの防止、正しい診断が治療選択の起点に、天神竹井皮膚科 美容皮膚科院長の竹井賢二郎氏に聞く 第3回

天神竹井皮膚科 美容皮膚科 院長 竹井賢二郎氏(写真/編集部)

天神竹井皮膚科 美容皮膚科 院長 竹井賢二郎氏(写真/編集部)

竹井賢二郎(たけい・けんじろう)氏
天神竹井皮膚科 美容皮膚科 院長

  • 皮膚科専門性の活用→皮膚科の知識や診断力は美容医療においても有効で、細胞や構造的な異常を捉えて適切な治療に結びつける姿勢が重要。
  • 一問一答式の施術→ニキビ=ピーリング、シミ=レーザーなど短絡的な施術選択は、来院者ニーズに応えつつも専門的な判断を欠くとトラブルの元に。
  • 小さな不満が問題に→「軽いやけど」「思ったより効果がない」など、納得感を欠いた結果になりやすい。

──美容に皮膚科の専門性が活きてくる。

竹井氏: 皮膚科を専門にやってきた経験は、美容医療の分野でも役立っていると感じています。

 現象を丁寧に理解しようとする姿勢や、これまで得た知識や経験が、やはり活きてきます。

 「ハリがほしい」「ツヤを出したい」といった希望を聞きますが、くすみなどは医学的に見るとそれ自体が病気というわけではありません。

 しかし、治療の基本は、皮膚を構成する細胞や、炎症を起こしている細胞など、どんな問題が起きているかを突き止めることにあります。

 病原体や免疫細胞の異常があるのか、角質などの異常があるのか、機能的な問題なのか、構造的な問題なのかなどを見極めていきます。「どの異常がこの症状を引き起こしているのか」を考えて、一つずつ対処していくのが医療の基本的な考え方です。

──一般の皮膚科と美容皮膚科は通じている。

竹井氏: 美容皮膚科の診療を始めて7年ほどになりますが、最終的には、赤みや皮膚炎といった肌のトラブルにどう対応するかが重要と実感しています。実践的な経験を重ねる中で、診療の幅や深みが増していくと感じています。

 例えば、ニキビやシミを見たとしても、それは単なるニキビやシミだというだけにとどまりません。その背景には、赤みや慢性的な炎症、皮膚全体の状態など、より複雑な問題が絡んできます。年を重ねるとなおさらです。シミと思っていたけれども、実際にはイボだったというケースもあります。

 同じ「皮膚」というフィールドの中で、どちらの分野も互いに関連しています。皮膚の構造をあらためて見直してみると、本当にシンプルでありながら奥深い世界だと感じています。しっかり診断し、「今の状態に対して、何をすべきか」を見極めることが重要になります。きちんと診察を受けて、適切な治療方針を立てた方が、結果として遠回りせずに済むケースも多いと感じています。

──「ニキビにはこの治療」「シミにはこの施術」と単純な対応になりがち?

竹井氏: 最近では、皮膚の症状に対して単純に一問一答式に特定の施術がひも付けられ、実施されることもよくあるでしょう。

 実際、ニキビに対してはピーリング、シミに対してはピコレーザーといった選択肢が考えられます。実際、それらの治療が行われることもあるでしょう。

 クリニックの方が、特定の機械や施術をアピールして受けてもらうことがあるでしょう。クリニックを運営するための手法としては理解できます。それを見た方が、特定の施術を希望して来院するケースもあるでしょう。

 それ自体は必ずしも悪いことではありません。美容医療では、来院者に寄り添う姿勢が大切になります。美容医療は病気ではありませんが、本人にとっては深刻な悩みであることも少なくありませんから。

 一方で、「とにかく安く」「薄利多売で」といった発想から、簡単な施術を大量にこなすというビジネスモデルにつながりやすい面もあります。簡単な施術であれば、施術を受ける本人に任せることも考えられます。決まった治療が行われるスタイルに満足されている方もいらっしゃいますし、一定のニーズがあるのも理解できます。

 しかし、行き過ぎて、希望された施術をそのまま提供する、素人判断を安易に許してしまうならば心配です。専門的な視点が抜け落ちてしまうと、トラブルの原因になることもあります。施術する側にしっかりとした理解がないと、「なんとなく違う」といった仕上がりになってしまう恐れがあります。

 さすがに命に関わるような大きな問題になるケースは少ないですが、だからこそ、軽視されやすいという側面もあるのかもしれません。

 「ちょっとヤケドしました」とか、「思ったほど効果が出なかった」というくらいで、不満が残るものの、それ以上の問題に発展はしない。

天神竹井皮膚科 美容皮膚科 院長 竹井賢二郎氏(写真/編集部)

天神竹井皮膚科 美容皮膚科 院長 竹井賢二郎氏(写真/編集部)

  • HIFUトラブルの背景→十分な知識を持たない施術者による対応がトラブルを招いている。適切な熱量設定と深い理解が安全かつ効果的な施術には不可欠。
  • 信頼関係が満足度を高める→来院者の要望を尊重しつつ、医師の判断を少しずつ提案する形が、より良い施術と満足感につながる。
  • 費用と施術の質のバランス→施術の質を上げるには、それに見合った費用設定や時間の確保が必要。単に安さを求めるだけでは質が担保されにくい。

──最近ではHIFU(高強度焦点式超音波治療、ハイフ)によるトラブルが話題になった。

竹井氏: 結局のところ、よく理解していない人が施術に関わってしまうからこそ、問題が起きたと予想します。おそらく「何が起こりうるのか」を深く考えずに施術を行っている人も、少なくないのではないでしょうか。専門的な知識を持ったうえで施術にあたるのであれば、そうしたトラブルもある程度は防げるはずです。

 ところが、現場では、施術を受ける側のリスクに対する捉え方や意識が甘いことも目立っているように感じます。

 照射系の施術で難しいのは、トラブルを恐れて単純に弱い照射をしただけでは効果も出ないことです。効果を出すためには、ハイフや高周波ではしっかり熱をかけることが欠かせません。知識を持った上で施術に取り組むことで適切な効果が現れるのです。

──チェーンクリニックなどで未熟さゆえの問題は報告されることがある。

竹井氏: 「直美」と呼ばれるような立場で、専門性がまだ十分でない医師もいます。経験が浅いまま進めてしまうと、失敗のリスクも高まります。もっとも経験を積んでいけば、対応の幅が広がってきますから、直美だからといって問題だとは言いません。本来の意味で医師としての機能を果たせていないケースも、一部には見られる可能性もあるということです。

 せっかく医師という専門家が関わることができるのに、その力を十分に活かさずに進めてしまうのは、もったいない。本来、医療はまず診察をして、診断をして、そのうえで必要な施術や処方をする。医師がしっかりと関与し、必要な判断を行ったうえで進めることが、やはり良い結果につながると信じています。例えば「薬だけ出して終わり」という形ではうまくいかないこともあります。丁寧な診断と判断は欠かせないと感じます。

──医師の関与が不足していると満足度にも影響が出る?

竹井氏: 一問一答式の選択肢が提示されるだけでは、ある程度お金に余裕がある方や、「安さ」の裏側にある理由を理解できる方にとっては、魅力を感じにくいのもまた当然だと思います。

 極端な話ではありますが、本人はたるみが気になっており、私はシミに注目するということはあります。そういう場合、まずは本人の要望を優先的に受け止め、基本的にはその方の気持ちに寄り添って施術を進めていきます。

 信頼関係ができて、少しずつ距離が縮まってくると、「こういった施術もどうですか?」とご提案できるようになります。その方の性格を見ながら、段階的に進めていくのが理想的ですね。

──実際の施術においては、医師ではなく、看護師が対応することも多い。

竹井氏: 施術を医師が行うか、看護師が行うかという視点については、医師が手掛けた方が施術の質は確実に上がっていくと思います。

 ただ、すべてに対して医師が関わる必要があるかというと、必ずしも医師と看護師の差が問題になりにくい施術があるのも事実だと考えています。例えば、IPL(光療法)のような施術については、経験を積んだ看護師であれば、十分適切に照射できることも多いです。

 その意味では、危険性に注意し、機器の設定や照射方法を正しく行えば、熟練した看護師が十分に良い結果を出せる施術も多く存在しています。

 一方で、医師が自分自身で技術を磨き、継続的に経験を積み上げていった方が、高い効果を出せることも実感しています。そこには適切な費用設定もする必要と考えています。(続く)

天神竹井皮膚科 美容皮膚科 院長 竹井賢二郎氏(写真/編集部)

天神竹井皮膚科 美容皮膚科 院長 竹井賢二郎氏(写真/編集部)

プロフィール

竹井賢二郎(たけい・けんじろう)氏
天神竹井皮膚科 美容皮膚科 院長
2007年、九州大学医学部卒業後、九州大学病院にて初期研修。2009年、九州大学皮膚科学講座に入局し、立正佼成会附属佼成病院(東京都)勤務を経て、2010年に長崎県中対馬病院、2011年に九州大学病院に勤務。2012年より九州大学大学院にて皮膚科学を専攻し博士課程に進む。2014年には飯塚市立病院皮膚科医長を務め、2017年に九州大学皮膚科を退局後、宮崎県の医療法人中野会中野医院で美容皮膚科に従事。2018年からは福岡市のクリニックで院長を務め、2019年に天神竹井皮膚科 美容皮膚科を開設。

記事一覧

  • 高周波の肌質改善効果、機器の特徴を見極める目、満足度を高める美容皮膚科、たるみの効果で使われていた高周波に一石二鳥の特徴、天神竹井皮膚科 美容皮膚科院長の竹井賢二郎氏に聞く 第1回
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  • 肌育やバイオスティミュレーター、ポテンツァの「深さ」を読み解く、0.25mmで効果を見極める、美容皮膚科の繊細な診断と治療、天神竹井皮膚科・美容皮膚科 院長の竹井賢二郎氏に聞く 第2回
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  • 皮膚科の専門性が導く美容皮膚科の質とトラブルの防止、正しい診断が治療選択の起点に、天神竹井皮膚科 美容皮膚科院長の竹井賢二郎氏に聞く 第3回
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  • 美容皮膚科と美容外科、福岡と東京の“温度差”を読む、情報発信と診療現場のリアルから見る可能性、天神竹井皮膚科・美容皮膚科 院長の竹井賢二郎氏に聞く 第4回
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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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