HIFU(ハイフ)の安全性と問題点を理解する、東海大学形成外科教授の河野太郎氏に聞く
HIFU(集束超音波治療、以下ハイフ)は、レーザー治療に比べて設置が容易で制約が少ないことから、日本でも急速に普及した。しかし、ハイフに伴う合併症が大きな問題になっている。東海大学形成外科教授の河野太郎氏に、ハイフに関連する問題を聞いた。
河野太郎(こうの・たろう)氏
東海大学形成外科教授
──HIFU(集束超音波治療、以下ハイフ)が日本国内で普及している。
河野氏 ハイフが日本に入ってきておよそ14年になります。最初の臨床試験は東海大学と東京女子医科大学が行いました。
ハイフは導入するために特殊な設備が要らないため、広く普及しました。
ハイフと対照的に、レーザー治療の設備を導入する場合、レーザー製品の安全基準に基づき、「管理区域の設定」「障害予防対策」など設置上の制約があります。さらに、レーザー製造業者が行う安全対策が必要です。それすらやっていないところがあり問題になっていますが、本来はそのような義務があります。超音波診断装置には安全性に関する規格がありますがハイフではそうした規格がないのです。
──ハイフの治療で注意すべき点は何か。
河野氏 そもそもハイフは超音波を照射して熱を発生させることにより、真皮を引き締めたり、脂肪を融解させたりします。照射の深さ、強度、範囲が適切であるかどうかが肝心で、そうでないと効果が出なかったり、場合によって合併症を引き起こしたりすることがあります。
このほど消費者庁が報告書をまとめましたが、全国で合併症が報告されています。
例えば、超音波が出るトランスデューサーを皮膚表面からやや浮かせて照射した場合に問題になることがあります。トランスデューサーから出た超音波がジェルを通過し、意図したよりも浅い層を加熱するために皮膚表面にヤケドを引き起こすのです。
特にエステティックサロン、セルフエステ、自宅での施術など、知識や経験の少ない施術者が、皮膚や神経など解剖やハイフのメカニズムを正しく理解せずに行うことで合併症が起きていると推察されます。
──合併症の実態についてあまり知られていない。
河野氏 皮膚の表面のヤケドは何とか対処はできますが、一番心配なのは目の障害です。水晶体に障害が生じると白内障になり、硝子体に障害が生じると飛蚊症という問題が起こります。目の障害が起きると取り返しのつかないことになるので特に注意しなければなりません。その他の重篤な合併症として、手や顔が動かないという運動神経の障害や痺れる等の感覚神経の障害も大きな問題です。
──目や神経の障害も起きている。
河野氏 厚生労働省もハイフの問題としてヤケドについて強調していましたが、個人の健康を考える上で、特に注意すべきは目と神経の問題が発生しているという点です。
形成外科医をはじめ医療の知識を持つ者であれば、ハイフを瞼に行おうという発想はありませんし、神経の上を治療する場合は損傷を避けることを考えます。そのような合併症が医療機関以外で起きていることは問題です。
プロフィール
河野太郎(こうの・たろう)氏
東海大学形成外科教授
鹿児島大学医学部卒業後、東京女子医科大学形成外科、東海大学医学部外科学系形成外科学准教授を経て現職。日本大学医学部形成外科学系形成外科学分野客員教授も務める。
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