2024年、脱毛サロン業界およびエステ業全体での倒産が過去最多を更新したことを、調査会社である帝国データバンクと、東京商工リサーチが相次いで報告している。
アリシアクリニック破たんが明らかになり、脱毛業界の不安定な状況と多数の被害者の発生が大きな注目を集めている。
「2年間で27.1万人が被害」と帝国データバンク
- 脱毛サロン倒産件数→ 24年11月までに12件、12月11日までに14件と過去最多を更新。
- アリシアクリニック破たん→ 被害者は9万人超で、施術未完了や返金困難の事態が発生。
- 利用者被害→ 直近2年間で27.1万人以上が被害を受けたと推定。
帝国データバンクによると、24年11月までの脱毛サロン倒産件数は12件となり、23年の11件を超えて過去最多を更新した。帝国データバンクの調査は、エステだけではなく、医療脱毛も含んでいる。
さらに同社によると、12月11日までの倒産件数は14件となった。24年12月10日、アリシアクリニック運営2社が経営破たん。脱毛利用者に衝撃を与え混乱が収束する気配はないが、医療脱毛にも影響が及ぶ事態で、脱毛という業態の厳しさが表面化している。アリシアクリニックの件では、被害者は9万人を超え、多数が施術を受けられない、または返金されない事態に直面している。
もともとエステ脱毛は競争が激化する中で、宣伝広告費用が増加し、しかもスタッフの採用費用が上昇し、コロナ禍で顧客が減少したことで、収益が減少することが問題になっていた。こうしたエステで見られた問題は、医療脱毛でも同様であると見られたが、アリシアクリニック破たんによって潜在した問題が誰しも知るところになった。医療脱毛は比較的安定した業態とされていたが、今回の破たんでその信頼性が問われている。
23年12月、エステ脱毛の大手の一角を占めた銀座カラーが倒産した際に問題になったが、低価格プランを軸にした自転車操業のビジネスモデルは、広告費などが増大する中で限界がある。そうでありながらも、業界では依然として多く採用されている。これは収益構造の課題であり続けている。具体的には、低価格をうたって顧客を集め、複数回のコースを分割払いで契約させ、その前金で広告を打つなどコストを使い、顧客を集めるというもの。医療脱毛も似たような仕組みで人を集めていると見られ、同じ課題を抱えている可能性がある。
23年「銀座カラー」や「C3」が破たん。24年には「アリシアクリニック」が破たん。帝国データバンクによれば、直近2年間で27.1万人以上の利用者が被害に遭ったと推定する。22年の脱毛ラボなども含めるとさらに増えるのは確実だ。
支払いや施設選びは大きな問題
- エステ業全体の倒産件数→ 24年11月までに99件で過去最多を更新(医療脱毛は含まない)。
- 利用者保護の必要性→ 経営破たん時の影響を軽減する仕組みを業界と行政が協力して構築する必要がある。
東京商工リサーチによると、11月までで24年のエステ業全体の倒産件数が99件に達し、こちらも過去最多を更新した。
こちらは医療脱毛は含んでいない。
東京商工リサーチは、上で述べた競争激化やコスト増加に加えて、消費者保護のために信用販売やクレジットの契約が厳しくなったことが要因であると分析している。分割払いで、無理して契約するような状況が減った一方で、エステの収入源が減り、経営状態はさらに悪化することになった。
最近では、都度払いが普及しつつある一方で、割高になるという課題も残る。とはいえ、複数回を現金一括払いして、複数回を契約した場合、その後、その施設が経営破たんすれば、返金の可能性は諦めるほかなくなる。脱毛の施術を安全に受けるためには、支払い形態や施設選びを慎重に検討する必要がある。
また、脱毛のサロンやクリニックにおいては、例えば、最新の高性能レーザー機器は導入コストが高額になる中で、低価格運営との両立には限界があるという意見を筆者は聞く。美容クリニックで高額なレーザー機器を導入し、高額な施術を提供するということが一般的になればよいが、高額な施術料を払える人は限られ、裾野が広がらない。
脱毛の施術を安全に、安心して受けられるようにするにはどうあるべきか、業界はもっと考える必要があるだろう。経営破たんした場合の影響が大きすぎる。行政なども役割もあるのだろう。利用者保護のため、業界が中心となり関係者が協力して具体的な仕組みを構築する必要もあるかもしれない。