再生医療の安全性に関する重大な問題が発生し、問題を起こした医療機関が厚生労働省から行政処分を受けた。
2024年12月24日、厚労省は安確法に基づき、東京都内の医療法人輝鳳会が運営する3つの施設に改善命令を出した。同施設で提供された治療を受けた患者2人が敗血症を発症し、特定細胞加工物から微生物が検出された。その後、厚労省などによる同施設への立入調査により複数の管理体制に関わる問題が発覚した。
※「安確法」は「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」の略称である。
無菌であるはずなのに微生物が見つかる
ヒフコNEWSで既に伝えているが、この医療法人は今回の重大な感染症を引き起こしたことから、厚労省から、再生医療の提供などを一時停止するように緊急命令を受けていた。調査を経て、厚労省は東京都中央区の「THE K CLINIC」、豊島区の「池袋クリニック」と「池袋クリニック培養センター」に対して改善命令を出した。
この医療法人は、「自家NK細胞療法」と呼ばれるがん治療を提供していた。これは、がんの患者の血液から白血球を採りだし、この中で、がんを攻撃する「ナチュラルキラー(NK)細胞」を培養、増殖して、再び患者の体内に戻すことで、がんを治療しようというものだ。
日本では自由診療により、このような細胞を使った治療を行うプロセスが決まっている。これは安確法と呼ばれる法律に基づくもので、認定再生医療等委員会による審査を経て実施可能になる。
24年9月、同法人の施設で、2人の患者に対して自家NK細胞療法を実施したところ、この2人が帰宅後に体調不良になり緊急搬送され、ICU(集中治療室)に入院するという事例が発生した。同医療法人での検査により、「シュードザンゾモナス・メキシカーナ(Pseudoxanthomonas mexicana)」という微生物を同定。同法人は、認定再生医療等委員会に報告。審査を経て厚労省に報告が上げられ、同省は緊急命令を出すことになった。
その後、厚労省、国立感染症センターによる立入調査が行われ、調査の結果、適切な同意取得が行われなかったほか、厚労省への報告の不備、衛生管理の問題などの、複数の法令違反が明らかになった。
厚労省では、今回の事態を受け、3つの施設に対し、提供計画の見直し、品質管理の徹底、輸送方法の改善、適切な教育訓練の実施など、具体的な改善命令を出した。
杜撰の管理体制は健康のリスクにつながる
今回の改善命令は、がん治療を行う再生医療の施設に対して行われたものだったが、細胞を扱う治療という意味では、美容医療関連の施設においても同様なリスクは存在するといえる。
厚労省の改善命令の内容を見る限りは、対象施設では、杜撰な管理体制が敷かれていたことが分かる。こうした施設で再生医療を受けることは、健康にとってのメリットにつながるどころか、自らを危険にさらすことになる。
再生医療を実施するところが衛生管理を適切に実施しているのかどうか、その実施施設選びは慎重に行うべきだろう。