2024年は、以前から美容医療に関連したトラブルが増える中で、美容医療の安全と安心が重視された一年だった。今年注目された記事を取り上げながら振り返っていく。
「直美」の経歴に注目が集まった
そうした中で「直美」という言葉が新たに注目された年になった。
ヒフコNEWSでは4月に美容医療の経歴に注目したが、それは学会の講演を取材する中で、医学部を卒業して2年間の研修を終えた直後に美容クリニックに進出するケースが議論されていたためだ。こうした直接的に美容クリニックに入職することが「直美」と呼ばれることがあると聞いた。
その一方で、ヒフコNEWSは、美容クリニックのチェーンの院長を対象として専門医資格の取得状況を調査していた。これは美容医療でトラブルが起こる中で、国内外で専門医資格が注目されるようになっていたためだ。このプロセスで、院長の中に直美の経歴を歩んだ人がいることも認められ、それを集計した。
美容医療医師「直美」の経歴とは?美容医療チェーン院長の独自調査、初期研修後すぐに美容クリニックに入職4人に1人も
https://biyouhifuko.com/news/japan/7018/
結果として美容クリニックのチェーンごとに、直美の経歴を持つ院長の割合にはばらつきが見られた。
この後、直美に関する報道が増える中で、国では診療科ごとの医師の偏りを是正しようと議論されるようになっていた。なぜならば、美容医療に進む医師の割合が増加しすぎていると見なされるようになり、他の診療科に悪影響を及ぼす可能性が懸念されるようになったからだ。
東京都の美容外科医師数が4年間で1.6倍に、平均年齢が低下し、女性医師の割合は上昇、東京都が令和4年度の医師数などの最新情報を発表
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結果、国も美容医療で注目された「直美」という動きを重視し、医師の偏在という問題の解決を目指し対策に乗り出すことになった。
「直美廃止」と「美容クリニック開業規制」へ新たな動き、都道府県や分野などでの医師の偏りを是正、9月5日「厚生労働省医師偏在対策推進本部」発足
https://biyouhifuko.com/news/japan/8964/
厚生労働省は24年12月25日に「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」を公表した。この中で、保険診療を提供する医療機関(保険医療機関)の管理者になるためには、2年間の初期研修に加え、3年間、保険医療機関で保険診療に従事することを条件とすることを示した。これは今後開業することを考えた場合に、保険診療の経験が重要になるため、初期研修を終えた後に、まずは保険医療機関に進出しようという動機づけとなることが期待される。
一方で、美容外科などでは、自由診療のみを提供する医療機関もあり、保険医療機関の管理者になるための条件には適用されない。また、院長などを目指さない場合には、直美を選んでも影響を受けないことになる。
この「保険医療機関の管理者要件」がどれほど有効かは未知数ともいえる。
厚生労働省の検討会が7つの対応策を示す
厚労省は24年に「美容医療の適切な実施に関する検討会」を開催し、最終報告書で、25年に業界ガイドラインを策定することや、美容クリニックへの定期報告の義務付けを含む7つの対応策が示された。
厚生労働省、美容医療7つの対応策、検討会がまとめる、25年からガイドライン整備、直美の検討は別会議で継続、「美容医療の適切な実施に関する検討会」報告書案
https://biyouhifuko.com/news/japan/9883/
美容医療に関連したトラブルが増える中で、厚労省の報告書には安心と安全を向上させる内容が含まれた。安心という観点では、健康被害を防ぐとともに、経済的な被害を回避することも重要だ。24年12月には、医療脱毛大手のアリシアクリニック運営会社の経営破たんが問題になった。9万人を超える人が、施術も返金も受けられない恐れがあり、問題が解決する見通しは立っていない。
24年は美容医療の安心と安全が重視されたものの、この課題の解決までは道半ば。来年も継続的に取り組むべき課題として注目される。