2024年は、美容医療における倫理観が問われた一年であった。記事を取り上げて振り返る。
献体写真のSNS投稿が大きな問題に
12月の終わりに社会で注目を集めたのが、献体写真SNS投稿の問題だ。これは記憶に新しいことであるが、女性美容外科医が、献体を用いたトレーニングであるCST(Cadaver Surgical Training)を米国グアムで受講した際に、献体となった遺体を背景に写真を撮影し、それをSNSに投稿したことが強い非難を招いた。
献体を軽率にSNS投稿、女性の美容外科医に非難殺到、悪貨が良貨を駆逐するのか、過去には医師のモラルハザードは懲戒解雇も、美容医療の倫理観への厳しい視線を重く見よ【編集長コラム】
https://biyouhifuko.com/news/japan/10557/
CSTに関連して、医療分野の解剖に関するガイドラインは、元々日本解剖学会などから発表されていた。このガイドラインが発表されたのは、2013年のことであり、10年以上前にさかのぼる。このガイドラインには、その当時から人体解剖に関連する写真がネット上に投稿されることが問題視されていたことが記されている。
日本解剖学会、2013年の提言再掲、撮影や投稿禁止を強調、解剖画像のネット掲載禁止などを求める3カ条、献体SNS投稿問題が大きく注目される中で
https://biyouhifuko.com/news/japan/10632/
今回の献体SNS投稿問題は、遺体に対する敬意の欠如が露呈し、社会から強い顰蹙を買う出来事となった。
日本美容外科学会(JSAPS、JSAS)は声明を発表し、倫理観の欠如を指摘するとともに、管理体制や教育体制の強化を進めることを表明した。
【速報】日本美容外科学会(JSAPS)が声明を発表、献体のSNS投稿問題で、「医療従事者としての倫理観を著しく欠いたもの」、学会内外で啓発活動と管理体制の強化を図る
https://biyouhifuko.com/news/japan/10586/【速報】日本美容外科学会(JSAS)が声明を発表、献体のSNS写真投稿問題を受けて見解を述べる、「美容外科医師が高い倫理観を持って行動」
https://biyouhifuko.com/news/japan/10641/
社会からの非難は収まらず、女性医師は院長職を解任されるに至った。
美容医療への社会からの厳しい視線
冒頭に示した通り、24年は、美容医療に関連する医師や医療関係者に対し、倫理観を求める声が高まった年であった。
厚生労働省は、「美容医療の適切な実施に関する検討会」を開催し、その中で医師の倫理観に関する議論が継続的に行われていた。美容医療に関連した医療機関の倫理観の欠落がうかがわれる事例がさまざまな観点から紹介された。
美容医療の発展と課題と求められる倫理観、厚生労働省の検討会でも構成員として意見、共立美容外科理事長の久次米秋人氏に聞く、前半
https://biyouhifuko.com/news/interview/9403/美容医療の「直美」問題と専門医資格を取得する意義、信頼ある美容医療を提供するための課題、共立美容外科理事長の久次米秋人氏に聞く、後半
https://biyouhifuko.com/news/interview/9492/
美容クリニックにおける倫理観の欠如が問題視されるケースは後を絶たない。例えば、美容クリニックが脅迫まがいの手法で高額な契約を迫るケースが問題視されることがある。国民生活センターが具体的な事例の解決を仲介し、その詳細を公表した例もある。そのような契約トラブルを引き起こす美容クリニックが存在する限り、美容医療全体の評価が低下するのは避けられない。
280万円の美容外科手術 キャンセル料230万円請求、結局140万円で和解の経緯、契約解除の課題が浮き彫りに、国民生活センターが交渉の経緯を公表
https://biyouhifuko.com/news/japan/9579/医療脱毛クリニック突然閉鎖、医療ローン返金不可に、美容医療の落とし穴、お金が返ってこない問題の内情とは、国民生活センターがトラブル詳細を公表
https://biyouhifuko.com/news/japan/8287/
美容医療が健全に発展するためには、倫理観に関する対策が不可欠である。25年には、美容医療に関する対策が引き続き打ち出される予定であるが、倫理観に関する問題が引き続き注目されることになるだろう。