
大阪国税庁などが税務調査。(写真/Adobe Stock)
麻生美容クリニックグループが、大阪国税局などの税務調査で2023年までの5年間に約60億円の申告漏れを指摘され、約10億円の追徴課税を受けていたことが朝日新聞などにより報じられた。
同グループはすでに修正申告と納税を終えたとされる。追徴課税の内訳には、法人税や消費税などが含まれると見られる。
美容クリニックに国税当局が監視強化?

追徴課税が求められた。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 過去の事例 → 2025年2月、TCB(東京中央美容外科)を運営するメディカルフロンティアが、院長を「個人事業主」扱いするスキームを利用し消費税を免れたとされ、約9億円の追徴課税を受けた。
- 今回の麻生美容クリニックグループの件 → それ以来の大規模な税務問題として注目されており、美容医療業界への国税当局の監視強化を象徴する動きの可能性。
- 税務当局の狙い → 国税庁は注目度の高い業界・企業を調査対象に選び、「一罰百戒」的効果を狙うことがある。大手への厳正対応で、同業他社への警告的メッセージを発する意図があるという。
美容クリニックをめぐる大型の追徴課税としては、2025年2月にTCB(東京中央美容外科)を運営に関連するメディカルフロンティアが、グループの各院長を「個人事業主」として扱うスキームを用い、消費税の納税を免れていたと判断され、約9億円の追徴課税を受けたケースが記憶に新しい。
今回の麻生美容クリニックグループへの指摘は、それ以来の大きな美容クリニックによる税金関係の事件となった。
これは美容医療業界における国税当局の監視強化の流れを象徴している可能性がある。
税務関係者によると、国税庁などは税務調査の対象に注目度の高い業界や企業を選び、「一罰百戒」の効果を狙うことがある。ある程度の規模や影響力を持つ事業者に対して厳正な対応を取ることで、同業他社にも「適正な申告を行うべき」というメッセージを発する狙いがあるという。
ヒフコNEWSで何度も取り上げたように、美容クリニック業界はここ数年、脱毛、美肌、アンチエイジング、美容外科など、自由診療の需要が高まり、急速に市場を拡大してきた。
その一方で、複雑なグループ経営や委託契約スキームが増え、税務上の取り扱いが難しくなっている。
「通報」や「内部告発」も税務調査につながる

情報提供から明るみに出るケースも。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 内部通報の可能性 → 複雑な税務構造の中で申告漏れなどが生じるリスクがあり、関係者間で問題視されると内部告発につながる可能性がある。
- 税務関係者の見解 → 「内部で不信感が高まると、税務通報につながることがある」と指摘。
- 今後の注目点 → 美容医療業界では安全性・広告表現に加え、経営や税務の透明性も新たな焦点に。収益拡大に伴い、コンプライアンス強化が求められる段階に入っている。
こうした複雑な税務の中で、申告漏れなどが起こっている可能性も考えられるが、それが関係者から問題視される状況であれば、内部告発を呼び込む可能性もある。
国税庁では、公式サイト上で課税漏れや不正還付に関する情報提供フォームを公開している。
匿名でも通報が可能で、税務関係者によると、美容クリニックなどでも内部トラブルや退職者による情報リークがきっかけとなり、調査が入るケースも考えられるという。
同庁が公表している情報提供の具体例には、次のようなものがある。
- 実際よりも売上や利益を少なく見せる架空経理
- 虚偽の契約書や領収書の作成・依頼
- 課税対象のある輸出入や仕入れを装った不正還付
このように公表されている事例は、今回公表された麻生美容クリニックグループとも関連した内容であると見られる。
税務関係者は「今回の件の経緯は不明だが、一般的に内部で不信感が高まると、通報につながることがある」と話す。
美容医療はこれまで、施術の安全性や広告表現などが社会的議論の中心だったが、経営や税務の透明性も同様に注目される段階に入ったといえる。
収益規模の拡大に比例して、社会的責任を求められる水準も高まっている。
税務上の問題が表面化することは、医療機関にとって信頼に関わる。美容医療の健全な発展のためには経営のコンプライアンスもさらに注目される可能性がある。
