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GLP-1関連薬で乳がん発見が約3割少ない傾向 11万人超の女性を解析 米国研究グループが予防の可能性に関心

カレンダー2026.6.16 フォルダー最新研究
胸の違和感や体調変化を確認する女性。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

胸の違和感や体調変化を確認する女性。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 GLP-1関連薬(以下、GLP-1薬)を使っていた女性では、乳がんが見つかる割合が低かった。

 米国ペンシルベニア大学医学部などの研究グループが、11万人超の女性を調べた研究を2026年6月に発表した。

過体重や肥満と乳がんの関係から注目

腹部に自己注射を行う場面。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

腹部に自己注射を行う場面。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

  • 肥満と乳がんに注目→ 過体重や肥満は乳がんリスクと関わるため、体重減少を促すGLP-1薬との関係が調べられた。
  • 11万人超を解析→ 乳房画像検査を受けた45〜80歳の女性11万1646人を対象に分析した。
  • 乳がん発見が少ない傾向→ GLP-1薬を使っていた女性では、乳がんが見つかる割合が約30〜35%低かった。

 過体重や肥満は、乳がんのリスクと関わることが知られている。そこで注目されるのが、体重減少を促すGLP-1薬だ。これらの薬は、もともと糖尿病治療薬として使われてきたが、その後、肥満症の治療薬としても承認されるようになった。

 日本でも、オゼンピック(一般名セマグルチド)やマンジャロ(同チルゼパチド)は糖尿病薬として承認され、ウゴービ(同セマグルチド)やゼップバウンド(同チルゼパチド)は肥満症治療薬として使われている。マンジャロがダイエット目的で使用されていることが、最近問題となっており、美容医療の分野で、良くも悪くも注目されている。

 これらは体重管理の薬として関心が高まる中で、肥満との関係を通じて、乳がんにどう関わるのかも、新たな研究テーマになりつつある。

 今回、研究グループは、2022年1月から2025年6月までの電子カルテを使い、乳房画像検査を受けた女性のデータを調べ、GLP-1薬と乳がんとの関係を分析した。

 解析の対象になったのは、45〜80歳でBMI25以上、検査結果が確認できた11万1646人である。このうち1万5264人には、GLP-1薬の処方歴が記録されていた。

 その上で、GLP-1薬を使っていた人と、使っていなかった人で、乳がんが見つかる割合を比べた。すると、GLP-1薬を使っていた女性では、乳がんが見つかる割合が低かった。全体でみると約35%低く、年齢やBMI、乳腺濃度、糖尿病の有無などが近い人どうしで比べても、約30%低い傾向が続いた。

 研究チームは、年齢や体格、糖尿病などの違いだけでは説明しにくい関連が見られたと整理している。過体重や肥満が乳がんリスクと関わることを踏まえると、減量や代謝改善に使われてきたGLP-1薬が、今後は乳がん予防の候補としても検討される可能性が出てきた。

予防効果はまだ断定できない

注射薬と飲み薬を組み合わせた治療を表す場面。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

注射薬と飲み薬を組み合わせた治療を表す場面。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

  • 予防効果は未確定→ 今回の研究は過去のカルテ情報に基づくため、乳がん予防効果を証明したものではない。
  • 詳細な検証が必要→ 薬の種類や使用期間、乳がんのタイプ、遺伝的リスクなどは十分に確認されていない。
  • 今後は臨床試験へ→ GLP-1薬と乳がんリスクの関係について、多施設共同試験で検証が進む見通し。

 ヒフコNEWSでは以前、チルゼパチド(商品名マンジャロ/ゼップバウンド)を使ったマウス実験で、体重や体脂肪の減少とともに乳がん腫瘍の縮小が見られた研究を紹介した。

 今回の論文はそれとは異なり、人を対象に、乳がんが見つかる割合を調べた研究であり、GLP-1薬と乳がん予防の関係を一歩先に進めた内容といえる。

 ただし、ここで予防効果が証明されたと受け取るのは早い。研究チームの説明でも、この研究は過去のカルテ情報を基にしたものであり、乳がん発見の低下との関連を決定的に証明するものではないとされている。

 実際、この研究ではGLP-1薬の種類や使用期間、遺伝的リスク、見つかった乳がんの病期やタイプまでは十分に見られていない。

 研究チームは、GLP-1薬はもともとがん治療薬として作られたものではないが、がんの発生に関わる複数の経路に影響し得る点が興味深いとしている。

 既に乳がん高リスク女性や乳がん既往歴のある女性も含め、今後、多施設共同試験を進める準備を進めているという。

 減量薬として広がったGLP-1薬が、今後は乳がん予防の文脈でも本格的に検証される。

参考文献

McDonald ES, Gillis LB, Gabriel P, Xapakdy K, Young A, Doucette A, Schnall MD, Buse JB, Pisano ED. GLP-1 Agonists Are Associated With a Significant Reduction in Breast Cancer Incidence in Women. JCO Oncol Pract. 2026 Jun 2:101200OP2600485. doi: 10.1200/OP-26-00485. Epub ahead of print. PMID: 42227662.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42227662/

GLP-1 use linked to lower breast cancer incidence in large cohort study The Penn Medicine study sets the stage for a multi-site clinical trial to determine whether GLP-1 drugs are associated with a lower risk of developing breast cancer.
https://www.pennmedicine.org/news/glp-1-use-linked-to-lower-breast-cancer-incidence

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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