美容医療で行われるPRP(多血小板血漿)とbFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)の混合注入で、しこりや皮膚の盛り上がりが報告され、改めて注意喚起が行われた。
bFGFを含む医薬品「フィブラストスプレー」を製造販売する科研製薬が2026年10月、適正使用を求める文書を公表した。
注入後のしこりなど、報告事例の約4割がPRP+bFGFに関連

PRPでは、自分の血液の成分を分けて使う。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- PRP+bFGFとは→自分の血液から取り出したPRPに、細胞の増殖を促すbFGFを加え、シワや皮膚のへこみの改善を目指す施術。
- しこりなどの報告→学会調査では、細胞加工物や増殖因子製剤による注入療法の合併症報告の約4割がPRP+bFGFに関連。施術を受けた人の4割という意味ではない。
- 製薬会社の注意喚起→フィブラストスプレーは本来、傷の治療に使う外用薬。注入による有効性や安全性は確立されておらず、承認された用途での使用を求めた。
PRP+bFGFの混合注入は、自分の血液から取り出した血小板を多く含む成分に、細胞の増殖を促すbFGFを加えて注入する施術だ。シワや皮膚のへこみなどを改善する目的で、美容医療に利用されている。
今回、科研製薬が注意を呼びかけたのは、bFGFを含む「フィブラストスプレー250・500」の使い方についてだ。
この薬は本来、床ずれ(褥瘡)や皮膚潰瘍、やけどによる傷などを治療するための外用薬であり、患部に噴霧して使用する。一方、美容医療では、PRPにこの薬を加えて顔に注入する施術が行われている。
科研製薬によると、こうした混合物の注入後に、皮膚の下にしこりができたり、皮膚が過剰に盛り上がったりした事例が報告されている。
また、日本美容外科学会(JSAPS)が会員を対象に実施した調査では、細胞加工物や増殖因子製剤を使う注入療法によって、しこりや皮膚の盛り上がりなどが生じた報告事例のうち、約4割がPRP+bFGFの混合注入によるものだった。
この調査結果は2020年に論文として報告されたものだ。約4割という数字は、施術を受けた人の4割に合併症が起きるという意味ではなく、報告された合併症の内訳を示している。
科研製薬は、しこりにはbFGFによる線維化が、皮下脂肪層の盛り上がりには脂肪組織の増加を促す作用が関係していると考えられると説明している。
同社は、フィブラストスプレーが外用薬であり、注入による有効性や安全性は確立されていないとして、承認された用途に従って使用するよう求めている。
国内ではしこりをめぐる訴訟も発生

裁判。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 国内の訴訟→2026年2月、施術後にしこりが生じたとして女性3人が美容クリニックを提訴。2025年には別の訴訟が解決金の支払いで決着。
- 診療指針の見解→日本の美容医療診療指針では、科学的根拠の不足やしこりなどの合併症を踏まえ、PRP+bFGFを「行わないことを弱く推奨(提案)する」としている。
- 施術前の確認→フィブラストスプレーの注入投与は国内未承認。期待される効果だけでなく、薬剤の承認状況や合併症のリスクを確認することが重要。
PRP+bFGFをめぐる問題は、以前から指摘されている。
ヒフコNEWSでは2026年3月、PRP+bFGFを用いた「プレミアムPRP皮膚再生療法」の施術後にしこりが生じたとして、3人の女性が同年2月に美容クリニックを提訴したことを報じた。女性らは、施術の危険性について十分な説明を受けていなかったと主張している。
また、同様の施術をめぐる別の訴訟では、2025年1月に解決金の支払いによって決着した事例があった。
日本の「美容医療診療指針2021年度版」では、PRP+bFGFについて、質の高い科学的根拠が不足しており、しこりなどの合併症も報告されているとして、「行わないことを弱く推奨(提案)する」としている。
フィブラストスプレーを顔に注入する使用方法は国内で承認されておらず、十分な効果や安全性が確認されていない。承認された用法とは異なる使用が直ちに違法になるわけではないが、施術を受ける人に対するリスクの説明と同意が重要になる。
今回、製薬会社が改めて注意喚起したことは、美容医療で使われる薬剤の使用方法や、合併症に関する情報を正確に把握することの重要性を示している。施術を受ける側も、期待される効果だけでなく、使用する薬剤の承認状況や安全性について確認することが大切だ。
参考文献
科研製薬「適正使用に関するお願い フィブラストスプレー250・500」(2026年10月)
https://www.pmda.go.jp/files/000283053.pdf
PRP+bFGFで再び裁判、この施術には3つの問題、副作用情報には敏感になる必要性あり 美容クリニック提訴の報道から考える美容医療【編集長コラム】(ヒフコNEWS、2026年3月1日)
https://biyouhifuko.com/news/column/16763/
PRP+bFGF、施術後しこりの訴えで美容クリニックが解決金、「リスクなどの説明義務を怠った」と裁判所は指摘(ヒフコNEWS)
https://biyouhifuko.com/news/column/10825/
美容医療診療指針(令和3年度改訂版、2022年刊行)
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/biyo2v.pdf
