厚労省がアートメイクは医療行為と通知、タトゥーとの違いを最高裁判決などから判断
ポイント
- 最高裁判所は2020年、タトゥーが医療行為にあたらないとする判決を下した
- 厚生労働省はアートメイクについて検討し、医療行為に該当すると結論づけた
- タトゥーとアートメイクの違いは歴史的な背景や社会的な位置づけにあると判断された
2023年7月3日、厚生労働省はアートメイクが医師免許を持つ者が行うべき医療行為に該当するとする通知を出した。これは、タトゥー(刺青)は医療行為に当たらないとした20年の最高裁判所判決を受けて検討された結果出されたもので、タトゥーとアートメイクの違い、その解釈が最高裁判決以来、厚労省から公式に示されたのは初めて。
タトゥーは医療行為ではないとする最高裁判決
そもそもアートメイクとは、皮膚に色素を入れ、眉やアイラインを描くことである。アートメイクの施術は医療機関で行われていることがほとんどだが、医療機関以外でも一部行われている実態がある。
しかし、厚労省は01年、医師免許を持たずにアートメイクを行うことは、医師法17条の「医師でなければ、医業をなしてはならない」に違反すると通知を出していた。
一方、冒頭に示した通り、最高裁判所は20年、タトゥー施術行為は医療行為ではないと20年に判決を下した。この判決は、医師法17条違反に問われた大阪府のタトゥーショップに関する事件に端を発している。最高裁は最終的に、タトゥーは医療行為ではないと判断した。
これを受けて、美容医療とも関係の深いアートメイクが、医療行為に該当するかが改めて検討されてきた。厚労省によると、タトゥーに関する最高裁判決に加え、医師法17条に関する学説・判例などの分析を行ってきたという。
6月には、福島県保健福祉部長が、医師免許を持たない者による、針先に色素を付けながら皮膚表面に墨などの色素を入れて、(1)眉毛を描く行為(2)アイラインを描く行為が、医師法17条に違反するか、厚労省に説明を求めた。
これを受け、今回、厚労省は通知を出した。
タトゥーとアートメイクの実態に違い
検討の結果として、厚労省はアートメイクについては医療行為に該当すると結論付けた。同省は、タトゥーとアートメイクの違いについて簡潔に説明している。
同省によれば、タトゥー施術行為が医療行為ではないと判断された「最も重要で本質的な点」として、「タトゥーは、歴史的に、長年にわたり医師免許を有しない彫り師が行ってきた実情があることである」と指摘した。「すなわち、タトゥーの担い手は歴史的に医療の外に置かれてきたものであり、そのこと自体が、タトゥーの社会的な位置づけを示すものとして理解されうる」と述べている。要するに、タトゥーは医療機関とは別の場所で、芸術として行われてきたものであって、社会的に見て医療行為ではないと見なされてきたというのがポイントになる。
それに対して、アートメイクについては、「医療の一環として医師・看護師等の医療従事者が関与している実態」があるとして、「一定の侵襲性が認められることや、医療従事者による安全性水準の確保がきわめて重要と考えられること」から、アートメイクについては医療行為であると判断できると説明した。
その上で、今回の判断について都道府県関係者に知らせるために通知を出すに至った。今後、今回の通知が、医療機関以外でのアートメイクの実施に影響すると考えられる。
参考文献
・医師免許を有しない者によるいわゆるアートメイクの取扱いについて
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T230710G0020.pdf
・平成30年(あ)第1790号 医師法違反被告事件
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/717/089717_hanrei.pdf
・医師免許を有しない者による脱毛行為等の取扱いについて
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta6731&dataType=1&pageNo=1
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