幹細胞の点滴や注射、リスクを理解して受けるべき、日本再生医療学会が提言公開
ポイント
- 幹細胞注射には血管が詰まるなどのリスクがあり、日本再生医療学会は提言を発表
- 提言では、特に肺塞栓や脳梗塞などの重篤な問題が起きた場合への対処を強調
- 治療を受ける人は、塞栓症の可能性などリスクの詳細な説明を受けることが欠かせない
治療としての幹細胞の注射は、その副反応として細胞が血管に詰まるなどのリスクをはらんでいる。想定される問題に迅速に対処するために、十分に備えがなされることは欠かせない。日本再生医療学会が2023年7月14日に安全な実施のための提言を公開している。
起こり得る副反応への備えが重要
幹細胞を血管内に直接注射する治療が行われていることがある。例えば、美容医療では、アンチエイジングなどの目的で幹細胞の点滴といった名称で、静脈内への注射による治療が行われていることがある。体内で減少した幹細胞を補う考え方だ。こうした治療は細胞が血管の中に入ることにより、血管が詰まってしまうなど、副反応も伴うことが知られている。
このような背景の下、今回、日本再生医療学会は、「間葉系幹細胞等の経静脈内投与の安全な実施への提言」を発表した。この提言では、幹細胞を血管内に直接注射する治療を行う場合に、安全性を確保するため精査すべきポイントを説明している。
提言の中では、起こり得る副反応として、幹細胞を注射した後に病気が発生する可能性を指摘している。病気が起きたときには、医療の提供体制などの問題がなかったかの確認、迅速な措置を講じることを求めている。
入院可能な施設をあらかじめ確保することを指摘している。病気が起きたときには定期的に医学的な評価を行う重要性を強調している。特に、細胞の注射によって、肺、心臓、脳の血管が詰まる、肺塞栓、心筋梗塞、脳梗塞を起こした場合、血管の詰まりが解消されてからも、別の場所で詰まる可能性を指摘。投与中に症状が出た際は症状が治まっても入院管理を求める。
リスクについて詳細な説明を受けて
学会では「患者への適切な説明」「実施時の注意点:骨髄・脂肪組織採取時のリスクおよび対策」「投与物の検討」「投与にあたっての準備」「投与時、投与後の観察」という項目に分けて、チェックすべきポイントを列挙している。
冒頭では、インフォームドコンセントで治療を受ける人に伝えるべき項目を挙げている。細胞などが血管に詰まる塞栓症の可能性、補償制度の説明、緊急時の対応などの詳細な説明を不可欠なものと位置づけている。
提言では、このほか医療機関に安全な治療を徹底するため、チェックすべきポイントを挙げている。
幹細胞の点滴といった、直接細胞を注射する治療には潜在的なリスクが伴うことについて把握することは不可欠だ。
参考文献
間葉系幹細胞等の経静脈内投与の安全な実施への提言
https://www.jsrm.jp/news/news-13520/
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