厚生労働省が美容医療に特化した検討会開催の準備を進めている。
各種の美容医療関連の施術による健康被害や経済的な被害が問題になっているほか、美容医療で行われている施術が法的に規制されていない中、エステサロンで提供されるなど、美容医療に関連する問題が広がりを見せている。国は専門家と共に課題解決へ協議していくことになる。
トラブル連発で対策が求められる
- 背景→美容医療関連のトラブルが増加し、国による対策が求められている
- 具体例→2024年に入ってからの脂肪吸引による死亡事故で医師が書類送検された事件、糸リフトや高周波、美容痩身での健康被害の報告
- エステ業界との関連→法的規制がないため、エステサロンや通販でハイフが行われ、事故の温床に
背景にあるのは、美容医療関連のトラブルが増加しており、国による対策が求められていることだ。かねてトラブルの増加が問題視されていたが、2024年に入ってからも昨年の脂肪吸引での死亡事故により、医師が書類送検される事件が報道された。また、糸リフト、高周波、美容痩身での健康被害が消費者庁に報告されている。
HIFU(高密度焦点式超音波治療、集束超音波治療、ハイフ)に関連した健康被害の実態が厚労省のプロジェクトとして調査されているが、東海大学形成外科教授の河野太郎氏がこの4月に学会で中間報告しており、神経障害が事前の予想を超えて3割に達するなど、被害の重さが際立っていることが明らかになった。また、これらの施術が美容クリニックばかりではなく、エステサロンやセルフエステなどの形でも提供されている。
また、美容医療で使われる医薬品や医療機器については、国から承認されていないものが医師の裁量で使われているケースが多く、その有効性や安全性が確かでなく、実態がよく分からないという問題もある。この場合、何らかのトラブルが起きたときに国からの救済を得られないという問題もある。
美容医療に関連した経済的な被害も問題になっている。例えば分割払いにした1回分の支払いを強調して顧客を集めて、その後、高額な施術を組み合わせて請求額を膨らませるような“ぼったくり商法”も報告されている。
美容医療は健康保険を使って行われるのではなく、自費で行われる自由診療として提供されている。このため診療の実態が国や保険者による見えづらく、法律に基づくチェック体制の不備も課題になり得る。
このほか、エステ業界との関連についても問題はある。ハイフは現在のところ制度上は法的に規制されていない状況にあり、エステティックサロンで行われたり、通販で販売される機械で自分でハイフをしていたりする状況がある。これは事故の温床になっており、規制を求める声も出ている。
美容医療に特化した検討会に
- 検討会の準備→厚労省医政局医事課企画法令係が担当
- 現状→開催時期や具体的な内容は未定だが、開催が決定
- 議論の焦点→美容医療に関連した問題に特化
検討会の準備を進めているのは、医療法や医師法などの法律に関連した仕事をしている厚労省医政局医事課企画法令係。現在のところ開催時期や具体的な内容は固まっていないものの、検討会の開催が決まったという。
検討会の議論は美容医療に関連した問題に特化する予定だ。
今後、美容医療に関連した法的な規制や安全対策など、各種のルールがどのように定まっていくのか注目されることになる。