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厚生労働省、培養上清やエクソソームの安全性に関する通知、幹細胞培養上清液やエクソソームなどの自由診療、再生医療など提供する施設に注意喚起

カレンダー2024.8.1 フォルダー 国内
厚生労働省。(写真/Adobe Stock)

厚生労働省。(写真/Adobe Stock)

 美容クリニックなどで「幹細胞培養上清液」や「エクソソーム」という言葉を目にすることは珍しくない。これらは美容などの目的で自由診療として利用されている。一方で、これまで国から認められたものはなく、有効性や安全性には懸念の声も上がっていた。

 そうした中で厚生労働省が2024年7月31日、これらを用いた医療の安全性などについて注意喚起する通知を、再生医療を提供する施設などに対して発表した。

培養上清やエクソソームは「未承認」

点滴などの医療が行われている。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

点滴などの医療が行われている。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 細胞からはさまざまな物質が分泌され、この中には人の健康にとって望ましい成分も含まれているとされる。それを利用したのが幹細胞培養上清液やエクソソームだ。

 エクソソームとは、細胞から分泌される粒子のことで、細胞の機能を調整する働きがあると知られている。日本では、再生医療を扱う施設で、美容などの目的で使用されている。一方で、幹細胞培養上清液は、幹細胞の培養液を指す。この培養液には細胞から分泌されたエクソソームが含まれているとされる。

 幹細胞培養上清とエクソソームはいずれも国によって認められた医薬品ではなく、医師や歯科医師が自己責任で、自由診療の中で使っているのが現状だ。そうした中、ヒフコNEWSで伝えているが、幹細胞培養上清やエクソソームに関連したトラブルも明らかになっている。

※自由診療とは、医療を受ける人が自己負担で受ける医療のこと。また、国が公式に医薬品の製造や販売を認めることを承認または薬事承認といい、承認を受けていないことを未承認という。

 今回、厚労省は、再生医療などを提供する施設に対して、幹細胞培養上清液やエクソソームなどを用いた医療は、国内外で有効性と安全性が確立されておらず、薬事承認を得ていないことに注意喚起した。

 その上で、医療機関がこれらの技術を使用する際には、医師や歯科医師の責任の下で、特にその安全性について十分な注意が求められると指摘した。

 さらに、日本再生医療学会が「細胞外小胞等の臨床応用に関するガイダンス(第1版)」を発表したことを紹介するとともに、エクソソームなどを使った医療を行う際には、ガイダンスを参照して、品質管理やリスク管理を徹底することが求められると強調した。

※細胞外小胞とは、細胞から分泌される膜を持った粒子で、これにはエクソソームが含まれている。

再生医療に関連した法律の見直しにも動き

厚生労働省で議論が始まっている。(写真/Adobe Stock)

厚生労働省で議論が始まっている。(写真/Adobe Stock)

 ヒフコNEWSは、既にこのガイダンスについて報じている。ガイダンスでは、細胞外小胞等の品質チェックや有効性評価の適切な実施を重視し、安全な使用法について詳しく説明している。

 幹細胞培養上清液とエクソソームは細胞から分泌されるものを利用することから、再生医療に関連する医療と見なされることがある。日本では、再生医療については、研究目的や自由診療で実施する場合には、民間の審査などを受けることで利用できるようになっている。このルールを定めているのが安確法と呼ばれる法律だが、エクソソームなどは細胞そのものを含んでいないため、安確法で規制対象外となっている。厚労省は6月に今年改正されたばかりの安確法の新たな議論も開始していた。

※安確法は、再生医療等の安全性の確保等に関する法律の略称。再生医療法と呼ばれることもある。

 そうした中で、厚労省からの今回の通知は、法律を見直す前に、エクソソームなどの問題を伴った利用をなくしていこうとする狙いがある。今後も議論が進むが、幹細胞培養上清液やエクソソームなどの医療を受けるときには、医療機関が学会のガイダンスに従っているかを確認するとよいだろう。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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