自分自身にパーソナライズされたiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使った美容製品の実証実験が2024年8月から都内で開始される。製品を開発するコーセー、アイ・ピース、レジュが発表した。
iPS細胞を美容医療に応用
iPS細胞は、個人の皮膚などの細胞を取り、人工的な操作を加えることで作製される幹細胞。美容医療では、脂肪幹細胞などがよく使われるが、これらは他人の細胞が使われている。それに対して、iPS細胞は本人自身の細胞であるため、個人に最適化された美容製品が提供できるという可能性がある。
24年5月に、化粧品企業であるコーセーに加えて、米国に拠点を置くiPS細胞を扱うアイ・ピースと、iPS細胞由来の抽出成分を扱うレジュが提携して、iPS細胞を使った美容製品の開発を行うことが発表されていた。24年内に実証実験が開始されると公表されていたが、8月から年間30人の参加者を募って試験されることになった。
実証実験では、連携先となる銀座よしえクリニック(東京都中央区)で参加者の血液を採取し、アイ・ピースがその体細胞からiPS細胞を作製。次に、レジュがこのiPS細胞から抽出された成分「iPSF」を製造する。これらのプロセスには約1年を要する。その後、コーセーが開発するパーソナライズされた製剤と「iPSF」を調合し、個々の顧客に最適化された美容商品が完成する。つまり美容製品が実際に提供されるのは、来院から1年経過した後になる。
効果と安全性の確認が重要に
化粧品企業がドクターズコスメに力を入れ他の美容医療の施術もある中で、iPS関連の美容製品がどのような位置づけになるかは注目されるところだ。
公表資料によると、iPS細胞を保存する費用として286万円(税込、以下同)がかかり、年間維持費6万円となる。クリニックでの年間契約費用は110万円。この費用には2カ月に1回の肌診断とカウンセリング、年間12本のパーソナライズ製品の提供費用が含まれる。1年目はパーソナライズされた製品の製造までの期間になり、この間には400万円ほどの料金が想定される。2年目からはiPS細胞保存の維持費用と、クリニックの契約費の合わせて120万円ほどの料金がかかる。月額10万円ほどと計算される。
一般的なドクターズコスメの価格帯と比べると、高価格な美容製品と位置づけられることになる。もっとも美容効果と安全性が確認されることが前提であるので実証実験の結果が重要となる。