国民生活センターは2024年8月、23年度の全国の消費生活相談の状況をまとめた。
この報告によれば、医療サービスとエステティックサービス(以下エステ)に関する消費者相談において、前年と比較して顕著な増減が見られることが明らかになった。
医療サービス関連の相談は増加し、美容整形などの高額な契約に関するトラブルが多発しており、特に30歳代以下の若年層が影響を受けていた。一方、エステに関する相談件数は減少したが、依然として20歳代以下の若年層で高い割合を占めた。
医療関連相談が増える
23年度における医療サービス関連の消費者相談件数は1万86件に達し、前年の7721件から31.3%増加した。この増加は、美容整形やその他の関連する医療サービスにおいて、無料カウンセリングの際に高額な契約を強引に勧められるケースが多く報告されたことが一因だった。
今回の報告で、国民生活センターは他の分野の相談を含めて件数の順位をまとめているが、ランキングにおいても医療サービスは16位に位置し、年齢別では20歳未満から40歳代までの幅広い層でトラブルが発生していることが分かった。
特に20歳代の相談件数は全体の中で上位に位置し、若年層の美容に対する意識が高まりを見せる一方で、美容整形を含めた医療サービスを利用するプロセスでトラブルが増加していることが示された。
他の分野を含めた20位までのランキングを年代別に見ると次の通り。女性ばかりではなく男性の相談も少なくない。20歳未満も相談を寄せている。
年齢層 | 全体順位 – 件数 | 女性順位 – 件数 | 男性順位 – 件数 |
---|---|---|---|
20歳未満 | 12位 – 357件 | 8位 – 245件 | ランク外 |
20歳代 | 7位 – 2,426件 | 6位 – 1,415件 | 7位 – 1,003件 |
30歳代 | 11位 – 1,650件 | 8位 – 987件 | 10位 – 659件 |
40歳代 | 14位 – 1,370件 | 13位 – 906件 | ランク外 |
50歳代 | 20位 – 1,186件 | 15位 – 809件 | ランク外 |
60歳代 | ランク外 | ランク外 | ランク外 |
この医療サービスには、美容医療以外も含まれていると考えられるが、以前にヒフコNEWSが国民生活センターに問い合わせたところ、美容医療に関連したトラブルの相談件数が23年度に5833件となり、前年の約1.57倍に増加したことが確認できた。22年度の相談件数は5年前の約2倍となっていたが、さらにそこから約1.6倍に増加しており、美容医療に関連するトラブルの急増が懸念される状況となっている。
※美容医療サービスには、「医師による医療のうち、専ら美容の向上を目的として行われる医療サービス」が含まれ、具体的には医療脱毛、脂肪吸引、二重まぶた手術、包茎治療、審美歯科、植毛などの施術が主な対象とされている。
美容医療に関連するトラブルには、ヤケドや神経障害、視力障害などの健康被害に加え、返金や解約に関する経済トラブルが含まれている。健康被害に関する相談件数は839件に上っていた。
エステは減るが依然として件数は多い
一方で、エステに関する相談件数は、22年度の2万2338件から1万5104件へと32.4%の減少した。エステ業界全体のサービス提供における改善や消費者の意識の変化が背景にあると考えられるが、消費者トラブルが依然として後を絶たない状況である。
年齢別では30歳代以下の若年層からの相談が多く、特に20歳代の女性からの相談が全体で最も多いという結果が報告された。美容に対する高い関心が、エステサービスの利用増加とそれに伴うトラブルの温床となっていると考えられる。
年代別の順位は次の通りでだ。
年齢層 | 全体順位 – 件数 | 女性順位 – 件数 | 男性順位 – 件数 |
---|---|---|---|
20歳未満 | 3位 – 1,172件 | 2位 – 1,041件 | 15位 – 124件 |
20歳代 | 1位 – 9,064件 | 1位 – 8,325件 | 12位 – 706件 |
30歳代 | 3位 – 2,450件 | 3位 – 2,174件 | ランク外 |
40歳代 | 18位 – 1,089件 | 9位 – 950件 | ランク外 |
50歳代 | ランク外 | ランク外 | ランク外 |
60歳代 | ランク外 | ランク外 | ランク外 |
これらのデータから、消費者が美容や健康に関連するサービスに対して高い関心を持っている一方で、トラブルに巻き込まれるリスクが依然として存在することが浮き彫りとなった。美容サービスの利用に際しては、事前の情報収集と慎重な判断が求められる。