ヒフコNEWS 美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイト

「直美廃止」と「美容クリニック開業規制」へ新たな動き、都道府県や分野などでの医師の偏りを是正、9月5日「厚生労働省医師偏在対策推進本部」発足

カレンダー2024.9.4 フォルダー 国内
厚生労働省。(写真/Adobe Stock)

厚生労働省。(写真/Adobe Stock)

 厚生労働省が9月5日、「第1回厚生労働省医師偏在対策推進本部」を開催する。

 今後、都市部に医師が集中するなどの、医師の偏在の問題を解決するための議論が行われるが、ここで検討されるテーマの柱の一つとして美容医療の問題が浮上している。

 それはどういうことだろうか。

「直美」を減らす対策強化へ

未来健康活躍社会戦略で示された総合的なパッケージの骨子案。(出典/厚生労働省)

未来健康活躍社会戦略で示された総合的なパッケージの骨子案。(出典/厚生労働省)

  • 直美の規制→ 美容医療に進む「直美」が今後、規制される可能性がある。直美は、初期研修を終えた直後に美容医療に進む医師を指す。
  • 保険医制度の変更→ 厚労省は「保険医制度」のルールを変更することで、直美の問題を解決しようとしている。
  • 直美廃止の方向→ 厚労省は直美の廃止に向けて動いており、関連する医師や医学生はキャリアの見直しが必要になるかもしれない。

 そもそもこの推進本部が作られたのは、8月30日に公表された「近未来健康活躍社会戦略」を進める目的があるためだ。この戦略では、医療全般に関わる課題が整理されており、今後の対策の大枠を示した「総合的なパッケージの『骨子案』」が示された。厚労省の一部の部署では、「骨子案」がある種のキーワードのように語られている。これに基づいてこれからの医療の改革が進められる方向が広く認識されているようだ。

 この骨子案の中に、医師偏在に関連した対策も含まれており、上の図に示した通り3つの柱が挙げられた。

  • 医師確保計画の深化
  • 医師の確保・育成
  • 実効的な医師配置

 厚労省によると、この3つの柱の下にさらに細かい対策が掲げられているが、公表された資料だけでは抽象的な対策が挙げられているので何を示しているのか分かりづらいが、ここに美容医療に関連した対策が含まれている。

 それぞれ関係し合っているので、特定の項目だけに関係するものではないようだが、厚労省によると、「医師の確保・育成」の中に挙げられている「保険医制度における取り扱い等の規制的手法の検討」という部分が美容医療に関連が深い対策の一つになる。

 今後、この部分の対策として「直美」を規制する動きが出てくる可能性があるという。直美とは、医学部を卒業して2年間の初期研修を終えた直後に美容医療に進む経歴を指す。ヒフコNEWSで伝えている通り、厚労省の美容医療に関連する検討会でも、直美は、医師の知識や技術が不足することが問題視されている。この直美は、医師の偏在という観点からも課題となっている。

 というのも、直美の人数が年間200人近くに及んでいることが認識されており、医師を都道府県や分野などに偏りなく配置しようという観点からも解決すべき課題になっているからだ。

 厚労省によると、「保険医制度」というルールを変えることなどで直美の問題にメスを入れたい考えだ。保険医は、健康保険を使って行われる医療に携わる医師で、主に自由診療で行われる美容医療とは異なるように見える。いったいどのように関連するのだろうか。

 これに関連して、日本医師会の提案を関係づける報道がある。同会は、「保険診療の実績」を医療機関の管理者の条件の一つにする案を掲げている。医療機関の管理者は、要は院長などだ。つまり、一般的な保険診療の医療機関で一定の経験を積んだ医師でなければ、実質的に院長として独立できなくなる可能性があるという意味であると理解される。

 これが国の制度につながってくるかはまだ分からないが、こう解釈することは可能だろう。美容医療クリニックがいくら自由診療だといっても、一部では保険診療も行われている。独立した医療機関で保険診療を全くできなくなるというのは医療機関の信頼にも関わる。保険診療の実績が院長の条件になれば、独立するならば、まずは通常の保険診療に関わる必要がある認識が医師の間に広がる可能性がある。

 厚労省の話を聞く限り、直美は廃止の方向で動くことはほぼ確定だ。直美を検討する医師や医学生は早めにキャリアの見直しを検討する必要があるかもしれない。

開業関連の「ガイドライン」を強化

9月5日から本格的な検討が始まる。(出典/厚生労働省)

9月5日から本格的な検討が始まる。(出典/厚生労働省)

  • 開業規制と美容医療→ 厚労省は「医師の確保・育成」の一環として、「外来医師多数区域の都道府県知事の権限強化」などを通じて、美容医療に関連する開業規制も検討している。
  • 規制強化の可能性→ 「外来医療に係る医療提供体制の確保に関するガイドライン」に基づき、新規開業希望者に地域で不足している医療機能を補うよう求める指針があり、これを基に規制が強化される可能性がある。
  • 美容医療クリニックへの影響→ 美容医療クリニックは保険適用外の自由診療を提供するため、一般の医療機関とは異なる扱いを受けていると考えられるが、新しい規制が適用されれば、開業に対する強力な規制が課される可能性がある。

 「開業規制」が美容医療に関連するとされることもある。厚労省によると、これは「医師の確保・育成」の中の「外来医師多数区域の都道府県知事の権限強化」という対策などで検討される方向だという。

 厚労省によれば、開業規制に関連した指針があり、これをたたき台に規制強化が行われる可能性がある。「外来医療に係る医療提供体制の確保に関するガイドライン」では、新規開業希望者に、地域で不足している医療機能を示し、それを補ってもらえるように求めることができると定めている。合意できない場合には、臨時の協議をして、その結果を公表するなど、特段の理由がなければ拒否しづらい内容になっている。これをさらに法律として成立されるなどの対応の可能性がある。

 美容医療クリニックは保険適用外の自由診療を提供するため、一般的な医療機関とは異なる扱いを受けていると考えられるが、新しい規制が適用される可能性もある。美容医療クリニックの開業は増えていると見られるが、新しい法律などが適用されれば強力な規制が課される可能性もある。

 9月5日の推進本部の会議がキックオフとなる。この推進本部は美容医療のことだけを議論するわけではないが、美容医療のテーマが大きな柱の一つとなる。今後の検討で、幾度も美容が注目されるのは間違いない。

ヒフコNEWSは、国内外の美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイトです。美容医療に関連するニュースを中立的な立場から提供しています。それらのニュースにはポジティブな話題もネガティブな話題もありますが、それらは必ずしも美容医療分野全体を反映しているわけではありません。当サイトの目標は、豊富な情報を提供し、個人が美容医療に関して適切な判断を下せるように支援することです。また、当サイトが美容医療の利用を勧めることはありません。

Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

お問い合わせ

下記よりお気軽にお問い合わせ・ご相談ください。