東京都が2024年9月13日に発表した最新の医師数などの統計から、美容医療に従事する医師の急増があらためて確認された。
初期研修を終えた直後に美容医療に進む「直美」と呼ばれる医師の増加が影響している可能性もあり、医療現場の変化がうかがわれる。
美容外科医師数が急増、女性医師の割合も上昇
東京都が公表したのは、「医師・歯科医師・薬剤師統計 東京都集計結果報告(令和4年)」。過去の資料と照らし合わせた結果、平成30年(2018年)に412人だった美容外科に従事する医師数は、令和4年(2022年)には670人に達し、4年間で62.6%の増加を記録したことが確認された。
美容外科・形成外科・皮膚科の医師数の推移(東京都)
診療科 | 平成30年(2018年) | 令和2年(2020年) | 令和4年(2022年) |
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美容外科 | 412 | 541 | 670 |
形成外科 | 688 | 767 | 832 |
皮膚科 | 2,614 | 2,775 | 2,713 |
全体の医師数は18年の4万2497人から22年には4万5562人へと6.0%増加。内科医師数は18年の1万1147人から22年には1万2257人へと6.8%増加した。美容医療に関係した診療科として形成外科を見ると、医師数は688人から832人へと20.9%増加している。
おなじく美容医療に関連する皮膚科の医師数は微減傾向にある。18年の2614人から22年には2713人へと約3.8%増加したが、20年の2775人から22年にかけては62人減少した。
美容外科医師の増加率(62.6%)は東京都の医師全体の増加率と比べると約10倍に達することになる。同様に内科の約9倍、形成外科の約3倍に相当し、美容医療への需要拡大や、医師のキャリア選択の多様化が背景にあると推測される。
美容外科の平均年齢は45.7歳から43.2歳へと若年化が進んだ。また、女性医師の割合は28.4%から32.5%へと上昇。若い医師や女性医師が美容外科を選択する傾向が強まっている。
「直美」の増加と医療偏在の課題
初期研修を終えた直後に美容医療に進む医師、「直美」の増加が美容外科医師数の急増に影響している可能性がある。
直美の存在は最近になって厚生労働省も認識し、その対策に関心を寄せるようになっている。この動きは医師のキャリア選択の自由を示す一方で、医師の地域偏在や診療科偏在を助長する要因ともなっている可能性も考えられている。
厚生労働省は、医師の偏在問題を解決するため、「医師偏在対策推進本部」を設置し、その対策の一つとして直美の増加への対策も検討している。具体的には、保険医制度の見直しや、新規開業規制の強化などが議論されている。直美の増加が地域医療や小児科など、医師不足が深刻な診療科に影響を与えているとの指摘もあり、今後の動向が注目される。
今後、こうしたデータが参考になって、ルールが変更される可能性もある。