2024年8月31日から9月1日に名古屋市で開催された第42回日本美容皮膚科学会では、「保険委員会企画」として、レーザー脱毛と美容医療に関するトラブルへの対応の現状と課題が議論された。
新宿南口皮膚科院長であり、東京医科大学皮膚科兼任教授である乃木田俊辰氏は、レーザー脱毛の普及に伴うトラブルの現状について講演し、帝京大学形成外科教授の小室裕造氏は非外科的美容医療に関するトラブルおよび賠償問題に焦点を当て、医療のリスクマネジメントの必要性を強調した。
レーザー脱毛の普及と問題点
- レーザー脱毛の普及→ 1997年に日本で導入され、女性の美意識向上に伴い需要が拡大。
- 脱毛ニーズの拡大→ 脱毛部位は「VIO」ラインを含めた全身に広がり、男性にもひげ脱毛などの需要が増加。
- 施術リスク→ ヤケドや色素沈着、硬毛化などのトラブルが依然として報告されている。リスクの説明が重要。
新宿南口皮膚科の乃木田氏は、レーザー脱毛が1997年に日本で導入され、皮膚科や形成外科の分野で26年間にわたり実績を積み重ねてきたと説明した。
同氏によると、レーザー脱毛は美容目的だけでなく、社会的マナーの一環としても広く受け入れられており、特に女性の美意識向上によってその需要が高まっている。脱毛部位も、初期のわきやすねの毛から全身脱毛、特に下腹部「VIO」ラインへ広がり、男性にもひげ脱毛を始めとする全身脱毛のニーズが増加している。
しかし、レーザー脱毛の普及に伴い、施術後のヤケドや色素沈着、硬毛化といったトラブルが依然として頻繁に報告されている。特に、産毛や色素の薄い毛に対するレーザーの効果が限定的で、硬毛化に至る可能性がある。このようなリスクを伴う施術が希望された場合などは、十分な説明が不可欠であると述べた。
さらに、施術者の知識と技術の向上も重要であり、エステサロンでの施術と医療機関での施術の違いを理解する必要があると述べた。
美容医療のトラブルとリスクマネジメント
- 非外科的美容医療のトラブル→ レーザー治療やフィラー注射、糸リフトに関するトラブルが増加している。
- トラブル回避の重要性→ 十分なインフォームドコンセント、治療効果に個人差があることを施術者が説明することなどが重要。
- リスク管理→ 医療従事者と施術を受ける側の双方が正しい知識を持つこと、準備や情報収集が必要。
小室氏は、目下増加している非外科的美容医療、特にレーザー治療やフィラー注射、糸リフトなどの手法に関するトラブルが多様化している現状を報告した。
同氏が専務理事を務める日本美容医療リスクマネジメント協会には多くのトラブル症例が寄せられており、23年には同協会に加入する医師2574人のうち75件の新たな事故やクレームが報告されている。これには、手術後の傷跡への不満、レーザー照射後の色素沈着、ヤケド、ヒアルロン酸注入による血行不全などが含まれている。
小室氏は、医療トラブルを回避するためには、施術前に十分なインフォームドコンセントを得ること、治療効果には個人差があることを、施術を受ける本人に伝えることが重要と強調した。また、トラブルが発生した場合には、誠実に対応し、信頼関係を維持する努力が求められると指摘。最悪の場合、弁護士の仲裁を求めることが適切であるとし、第三者の意見を仰ぐことが推奨されると述べた。
美容医療のリスクを最小限に抑えるためには、医療従事者と施術を受ける側の双方が正しい知識と理解を持つことが不可欠になる。国の調査などで美容医療関連のトラブルが増加しており、万が一トラブルが起きた場合を念頭に置いて事前に準備や情報の収集などが求められている。