2024年10月18日、厚生労働省は「美容医療の適切な実施に関する検討会」第3回を開催し、美容医療の現状と課題について議論を行った。
検討会では、厚生労働省のほか、専門団体の立場として日本美容外科学会JSAPSと日本美容外科学会JSAS、個別の美容医院の立場として共立美容外科から、多くの情報が提供された。
特に注目されたのは、検討会の終盤で示された厚労省による美容医療の実態調査の内容だった。経験の少ない医師による施術や無資格のカウンセラーや受付スタッフによる違法な施術の実態など詳細が明らかにされたからだ。
検討会で示された情報が幅広いので、全体像について前半と後半に分けた上で、前半では実態調査を伝えていく。
※検討会で示された情報が多いので、前後半の記事を届けた後に、さらに詳しく調査結果などは紹介することを予定している。
「直美」問題にも関連、経験浅い医師の施術実態
- 医療機関向け調査→ 2223件の美容外科・皮膚科を対象に実施し、19%の回答率(417件)。
- 患者向け調査→ 1万9042人のパネルから美容医療経験者4138人を対象に、600人(約14.5%)が回答。
- 経験回数ゼロ→ 脂肪吸引や豊胸手術で経験回数ゼロの医師が施術に関わるケースが存在。
- カウンセラーや受付スタッフの違法行為→ 医師以外が診察や施術を行う違法行為が確認された。カウンセラーが診察をしていたという回答が20.5%、施術をしていたという回答が13.8%の割合で確認されたほか、受付スタッフもそれぞれ8.7%、6.3%の割合で確認された。
調査結果は、医療提供体制に大きな問題があることや、非医療関係者による無資格施術が行われている実態を明らかにし、多くの美容クリニックで法令遵守が不十分であることが浮き彫りとなった。
調査は大きく3つに分類されている。医療機関向けの調査、患者向け調査、保健所向け調査。
医療機関向け調査は、美容外科や皮膚科を掲げている医院2223件を対象に行われ、417件回収(約19%)された。患者向け調査は、1万9042人のパネルから美容医療を受けたことがある4138人を対象に行われ、600人の回答が得られた(約14.5%)。保健所向け調査は、全国468件中、222件回収(約47.3%)された。
医療機関向け調査では回答率が約19%と低いので、実態を正確に反映しているとは限らないものの、それでも、医療機関の課題を理解するために重要な情報が得られた。
まず、調査結果で注目されたのは、経験の浅い医師がどのように施術に関わっているかが示された点だ。これはいわゆる「直美」の問題とも関係してくる。直美は、医学部卒業後の2年間の初期研修を終えたばかりの医師が美容医療に参入する問題だ。この問題への注目度はかねて高い。
施術内容の違いごと、医師の経験年数ごとに、どのような医師が一人あるいは責任者として施術に関わっているかのデータが次の通り示された。他の医師をサポートする立場ではなく、施術を行う医師が中心的な役割を果たしていることになる。
このデータだけからもさまざまな事実が読み取れる。例えば、非外科的治療では、25~37%の医師が、経験年数半年未満で一人または責任者として施術に当たっている。さらに麻酔を伴うような外科的な治療でも、約17%の医師が、経験年数1年未満で実施に携わっていることも分かる。
別の角度から調べたのが、医師の経験回数ごとに違いを示したデータだ。このデータでは、医師が中心的な役割を果たすまでの経験回数が分かる。
注目されるのが、麻酔を伴う脂肪吸引や豊胸手術でも、経験回数ゼロの医師が関わるケースが存在することだ。非外科的治療でも、経験のない状態から施術に関わるケースが一定割合存在する。
全体的に、医師が中心的な役割を果たすまでに経験する件数が、20件未満というケースが多いことが読み取れる。
経験の浅い医師が高リスクな施術を行うことで、トラブルや医療事故のリスクが高まっている可能性をうかがわせる結果となる。
もう一つ、患者を対象にした調査から、無資格施術が横行している可能性も示された。これは違法行為に該当し、警察による摘発に発展する可能性もある。
調査結果によると、医師以外のカウンセラーや受付スタッフが治療方針を決定し、さらには施術まで行っている状況がある。
これを見ると、カウンセラーによって診察が行われているケースが20.5%あり、施術が行われているケースが13.8%と、決して少なくない割合であった。
さらには、受付スタッフによる診察や施術も、それぞれ8.7%、および6.3%行われていた。
カウンセラーと受付スタッフの定義ははっきり示されていないが、カウンセラーであっても、受付スタッフであっても、医師が行うべき診察や施術を行っているとすれば、いずれにしても違法行為となる。
命の関わる合併症や生活に影響大きい後遺症が発生
- 合併症や後遺症の報告→ 美容医療を受けた患者の約40%が何らかの合併症や後遺症を経験。
- 再施術や治療が必要なケース→ ヤケド、重度の形態異常、皮膚壊死、骨折、出血多量、低酸素脳症、敗血症、脳梗塞など命に関わるケースが発生。
- 後遺症の詳細→ 軽度の脱毛や傷跡、色素沈着のほか、失明、知覚障害、開瞼障害、閉瞼障害、運動機能障害、可動域制限など、生活に大きな影響を及ぼすケースが報告。
合併症や後遺症の発生状況も報告された。
美容医療を受けた患者の約40%が何らかの合併症や後遺症を経験しており、このうち施術後長期にわたって自然回復が見込めない状況(後遺症など)に陥った人が19.2%も存在した。
施術後の早期に再施術や治療が必要となったケース(合併症など)の発生状況は次の通りだ。
ヤケドや重度の形態異常、皮膚壊死が多く報告されている一方で、骨折、出血多量、低酸素脳症、敗血症、脳梗塞といった命に関わるケースも発生していることが判明した。
さらに、施術後長期にわたって自然回復が見込めない状況(後遺症など)の発生状況は次の通りだ。
軽度の脱毛や傷跡、色素沈着が多いが、失明、重度の知覚障害、まぶたを開いたり閉じたりが難しくなる開瞼障害や閉瞼障害(兎眼など)、まひなどの運動機能障害、可動域制限など、生活に大きな影響が及ぶと考えられるケースが発生していることが報告されている。
検討会では、こうした調査結果が示されたことで、問題の深刻さがあらためて認識され、「広く一般の人々に理解を広める必要性がある」と口々に強調されていた。
引き続き、後半では、厚労省に示された課題や今後の対策案について伝えていく。