中国で美容クリニックが急速に拡大している。特に深圳市では施設数が前年比で24%増え、最先端の医療機器が導入されている。現状について、第33回日本形成外科学会基礎学術集会の関連講演会「TAAT」で2024年10月、中国の医師ツァン・ワン氏が報告した。
美容クリニックが急増する深圳市
中国における美容医療の普及は急速だ。
「中国版シリコンバレー」と呼ばれ発展著しい深圳市では特に目立っている。深圳市衛生健康委員会の統計によれば、23年の美容医療機関数は前年比24%増の959施設に達したという。これには病院、クリニック、外来診療所が含まれ、全体のうち67%に当たる645施設が民間クリニックで、そのうち447施設は手術を行わない施設であるという。全体の半数近くは非外科的治療に特化していると見られる。
ワン氏の施設でも30台の機器が導入され、機器を使った施術が盛んに行われている。特に人気のある技術は、シワやたるみの改善に使われるHIFU(高密度焦点式超音波治療)やRF(高周波)。同氏によると、真空吸引のメカニズムを備えたRF照射機器Reactionは皮膚層を46~48度に加熱し、引き締め効果が期待できると評価している。さらに、別の機器であるTempsureはリアルタイムで温度を調整可能で、40度程度に保つことで目の周りの施術に適していると説明した。
レーザー治療や注入療法も最新のものが導入される
ワン氏によれば、レーザー機器を使った美容施術も普及し、ピコ秒レーザーがシミや色素沈着治療に使用されている。ピコ秒レーザーはコラーゲン生成を促進し肌再生を導く効果がある。注入療法でも、ボツリヌス製剤やヒアルロン酸が広く用いられているという。バイオスティミュレーターであるポリ-L-乳酸(PLLA)やヒドロキシアパタイト(CaHA)といった製剤も若返り効果が期待されて導入が進む。
このように非外科的治療の機器や製剤は、中国でも日本と変わらないものが導入されていると考えられる。美容施術は、国内外で合併症が報告されているが、中国で多数の施術が行われるようになれば、安全で効果的な使い方についても情報が増えてくると予想される。今後、より良い美容医療のために、中国を含めた国際的な協力が有効である可能性が高い。