レーザーを用いて、針なしで薬剤を皮膚内に注入する技術「ミラジェット」が、若返りや傷跡治療など幅広い用途に応用され始めている。痛みが少なく、均一な深さで注入できる点が大きな利点だ。
韓国の皮膚科医で、OZ Dermatology院長のチャングン・オー(Chang-Keun OH)氏は、2024年11月に東京都内で開催された「AMWC JAPAN 2024」にて、ミラジェットの特徴とその多様な応用について講演を行った。
レーザーにより無針での注入
AMWC JAPAN 2024は24年11月10日から2日間にわたり開催され、国内外の医師らが参加し、美容や抗加齢に関する最新技術や治療法が紹介された。「匠の技術 海外の最新治療法」と題したセッションで、オー氏はミラジェットの技術の仕組みや施術方法を解説した。
ミラジェットは、従来の針を用いた注入や、スプリングやエア圧を利用した針なしジェットインジェクターとは異なり、レーザーを使用して薬剤を皮膚内に注入する技術だ。この技術では、レーザーを水に照射して蒸発させる際の体積変化によって衝撃波を発生させ、これがピストンを押すことで薬剤が噴射され、皮膚に注入される。この仕組みにより、痛みを最小限に抑えつつ、均一な深さでの薬剤注入が可能になる。
ストレッチマークや傷跡にも高い効果
オー氏は、リジュビネーション(若返り)、妊娠線や肉割れといったストレッチマーク、傷跡、酒さ、色素沈着などの治療にミラジェットが効果を発揮することを症例を用いて解説した。例えば、傷跡に対するバイオスティミュレーターであるPDLLAを用いた治療では、施術後に滑らかな肌の状態が確認され、施術前後の比較からその効果が明らかであることが示された。
ミラジェットは、対象部位に応じた注入方法の選択ができる。特定部位を重点的に施術する「スタッキングモード」、広範囲にわたって注入する「接触移動モード」、非接触で広範囲に注入する「非接触移動モード」といった異なるモードを備え、治療部位の広さや症状に合わせて使い分けることができる。講演で示された動画からは、範囲の広いストレッチマークの治療にはこの技術が効果を発揮することがうかがわれた。
ミラジェットは2020年代から利用が開始された新しい技術で、日本国内でも徐々に広がりつつある。身体への傷を最小限にとどめる非外科的治療が広がる中で、ミラジェットは今後さらに多くの用途への応用が考えられ、長期的な効果や安全性の情報が今後注目される。