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肌の老化防止のためのヒアルロン酸注入、保湿やツヤに効果、6件の研究データから効果と限界を分析、中国の研究グループが美容皮膚科誌で報告

カレンダー2025.1.17 フォルダー最新研究
ヒアルロン酸注入の効果は?写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

ヒアルロン酸注入の効果は?写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 ヒアルロン酸注入は、肌の老化を防ぐための治療としても行われている。その具体的な効果や限界についての統一的な見解は得られていないが、保湿やツヤの向上に効果的であるようだ。

 中国の研究グループが2025年1月、過去の国際的な研究を統合的に分析し、ヒアルロン酸注入の肌の老化防止効果について検討し、美容皮膚科誌に報告した。

ヒアルロン酸注射の効果とその限界

ヒアルロン酸注入の効果と限界。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

ヒアルロン酸注入の効果と限界。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 ヒアルロン酸注入は、非外科的治療の一つとして、形成やシワ改善に加え、肌質の改善目的でも使用されている。そうした使用目的の一つとして、肌質の改善という用途もある。

 研究グループは2024年5月までに報告された12件の論文を調査し、その中で十分なデータが揃っていた6件を詳細に分析した(メタ解析を実施した)。

 この結果、ヒアルロン酸注入によって得られた効果がいくつかの点から確認された。確認された効果は保湿と肌のツヤ。「標準化平均差(SMD)」というスコアで見ると、保湿は1.34で、ツヤは0.51だった。標準化平均差は、0.5程度で中程度の効果、0.8以上で大きな効果と判断できる。保湿の標準化平均差1.34は、大きな効果を示しており、一般的な保湿製品やスキンケア手法と比較しても顕著な改善が確認された。

 しかし、肌の弾力性は標準化平均差が0.25、肌の色の濃さにつながるメラニン指数は-1.74で、いずれも改善が見られなかった(統計学的な有意差がなかった)。

 なお、弾力性については年齢が低いほど、ヒアルロン酸注入の効果が出やすい傾向が認められた。メラニン指数については、遺伝や紫外線などの環境要因が影響を与えるため、ヒアルロン酸注入の効果が直接現れるのは難しいと考えられる。

 こうした分析の結果により、ヒアルロン酸注入の肌質改善の効果と限界が示された。

副作用とオーバーフィルド症候群のリスク

ヒアルロン酸注入の副作用も考慮。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

ヒアルロン酸注入の副作用も考慮。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 ヒアルロン酸注入については、副作用には、赤み、痛み、腫れ、かゆみなどの注射部位の反応があり、多くは短期間で解消される。一方で、まれにより深刻な合併症が報告されることもある。例えば、血管閉塞の合併症は非常にまれではあるものの、発生した場合は深刻な結果を招く可能性があるため、施術者の熟練度が重要である。

 このほか、ヒアルロン酸の注入量が過剰であることによる「オーバーフィルド症候群」といった副作用も知られている。オーバーフィルド症候群は、過剰なヒアルロン酸注入によって顔が不自然に膨らむ症状であり、そのため、施術計画の段階で適切な量を調整することが重要だ。

 今回の研究では、副作用やオーバーフィルド症候群など、こうしたトラブルについては十分に検討されていない。施術の限界や副作用を理解し、治療計画を立てることが重要であると指摘している。また、今回の分析では、ヒアルロン酸注入の効果を確かめるためのランダム化比較試験(RCT)と呼ばれる研究のみを調査したが、一般的な使用環境における長期的な効果や安全性についてもさらに研究が求められる。

参考文献

Zhou R, Yu M. The Effect of Local Hyaluronic Acid Injection on Skin Aging: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Cosmet Dermatol. 2025 Jan;24(1):e16760. doi: 10.1111/jocd.16760. PMID: 39807700; PMCID: PMC11731322.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39807700/

ヒアルロン酸フィラー注入による抜け毛、まれながら重大な合併症、血管が塞がれることで毛が抜ける、美容皮膚科誌で報告
https://biyouhifuko.com/news/research/9982/

非吸収性フィラーの長期リスク、炎症・感染・しこりに、吸収性のヒアルロン酸やバイオスティミュレーターの合併症も拡大中、オランダの研究グループが報告
https://biyouhifuko.com/news/research/9214/

ヒアルロン酸フィラー逆風、バイオスティミュレーター移行、TikTok顔が人気、世界的拡大は続く、経営コンサルのマッキンゼーが見る美容医療トレンド
https://biyouhifuko.com/news/world/8343/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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