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バイオスティミュレーター、合併症の6割が1カ月以降に出現、顔面・しこりが最多、治療成功は1割未満、製剤増加の中で安全性の情報蓄積は急務に

カレンダー2025.4.5 フォルダー最新研究

 皮下に注入してコラーゲンの生成を促すバイオスティミュレーターが人気を集めている。

 「新しい施術であるため、有効性だけでなく安全性のデータも理解した上で施術を受けることが重要である。

 ブラジルの研究グループは2024年9月、バイオスティミュレーターによる合併症が生じた55例について報告した

顔面で高頻度に生じるしこり

 論文では、「コラーゲンバイオスティミュレーター」と表現している。以下では、バイオスティミュレーターと呼ぶこととする。一般には、スキンブースターやコラーゲンブースターなどと呼ばれることもある。

 バイオスティミュレーターとは、ポリ-L-乳酸(PLLA)、カルシウムハイドロキシアパタイト(CaHA)、ポリカプロラクトン(PCL)などを有効成分とする注入剤。さらに、ポリーD-乳酸(PDLA)、ポリーDLー乳酸(PDLLA)、ポリヌクレオチド(PN)、ポリデオキシリボヌクレオチド(PDRN)などの新しい製剤が登場している。組織内でコラーゲン生成を誘導し、皮下組織のボリュームアップや皮膚再生を促す。ヒアルロン酸のフィラーとも併せて使われる。

 今回の論文では、ブラジルで使用されているPLLAとPCL、CaHA、CaHA+ヒアルロン酸についての合併症が報告されている。研究グループは、ブラジル全国から合併症を起こした55ケースを集めた。

 合併症のうち最も多かったのはPLLA(商品名エレーヴァ、Elleva、49.1%)。PLLA(商品名スカルプトラ、Sculptra、20.0%)、CaHA(ラディエッセ=Radiesse、ダイアモンド=Diamond、18.2%)、PCL(商品名エランセ、Ellanse)によるものは7.3%だった。CaHA+ヒアルロン酸(商品名ハーモニーCA=HArmonyCA)は5.4%だった。

首に出現したPLLA(Elleva)によるしこりとその超音波の画像。(出典/J Cosmet Dermatol. 2024;23:2829-2835.)

首に出現したPLLA(Elleva)によるしこりとその超音波の画像。(出典/J Cosmet Dermatol. 2024;23:2829-2835.)

側頭部に出現したPLLA(Sculptra)のしこりと誤った注入層の超音波の画像。(出典/J Cosmet Dermatol. 2024;23:2829-2835.)

側頭部に出現したPLLA(Sculptra)のしこりと誤った注入層の超音波の画像。(出典/J Cosmet Dermatol. 2024;23:2829-2835.)

CaHA(Radiesse)による首のしこりと特徴的な超音波の画像。(出典/J Cosmet Dermatol. 2024;23:2829-2835.)

CaHA(Radiesse)による首のしこりと特徴的な超音波の画像。(出典/J Cosmet Dermatol. 2024;23:2829-2835.)

側頭部中央に出現したPCL(Ellansé)のしこりと顆粒腫の可能性を示唆する超音波の画像。(出典/J Cosmet Dermatol. 2024;23:2829-2835.)

側頭部中央に出現したPCL(Ellansé)のしこりと顆粒腫の可能性を示唆する超音波の画像。(出典/J Cosmet Dermatol. 2024;23:2829-2835.)

 合併症の症状として最も多かったのはしこり(89.1%)で、次いで浮腫が16.4%、細菌感染が10.9%であった。部位は顔面が72.7%と最多だった。このほかは首21.8%、腹部7.3%。

 さらに、発症は注入から1カ月以上経ってからの遅発性が60.0%を占めた。注入された製剤のほとんどは、適切な皮下層に注入されていた。このため、施術技術よりも製剤特性が合併症の要因である可能性が示された。

合併症に対する治療の効果は限定的

 合併症の治療は、生理食塩水の注入(45.5%)、ヒアルロニダーゼ(25.5%)、希釈したステロイド注射(23.6%)などが行われた。完全に解消した症例は5件(9.1%)にとどまった。特に、CaHA+ヒアルロン酸製剤のハーモニーCAに対しては、ヒアルロニダーゼが有効だった。合併症の治療は多くの場合、うまくいかず、約3分の2が複数の治療を受けながらも十分な改善を得られなかった。

 研究報告によると、リスク要因としては、バイオスティミュレーターの粒子サイズ、不適切な希釈、注入深度、動きの多い部位への投与などが挙げられた。

 バイオスティミュレーターの治療は広がりを見せており、今回の報告に含まれていない製剤も多数登場している。ヒフコNEWSでは、オランダの研究についても伝えているが、バイオスティミュレーターによる合併症は一定の割合で発生していると報告されている。日本でも同様な施術は行われており、現在はあまり安全性の問題について報告が出ていないものの、水面下でトラブルが発生している可能性がある。日本における実態も早急に明らかにする必要があるだろう。安全性についての情報を蓄積した上で、施術に関するガイドラインの整備が求められている。

参考文献

Ianhez M, de Goés E Silva Freire G, Sigrist RMS, Colpas PT, de Faria IA, Parada MOAB, Miot HA. Complications of collagen biostimulators in Brazil: Description of products, treatments, and evolution of 55 cases. J Cosmet Dermatol. 2024 Sep;23(9):2829-2835. doi: 10.1111/jocd.16343. Epub 2024 May 1. PMID: 38693639.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38693639/

非吸収性フィラーの長期リスク、炎症・感染・しこりに、吸収性のヒアルロン酸やバイオスティミュレーターの合併症も拡大中、オランダの研究グループが報告
https://biyouhifuko.com/news/research/9214/

PLA、PDLLA、CAHA 若返り注入療法、韓国医師が語る、バイオスティミュレーターの評価、AMWC 2024でKorean Trendの講演
https://biyouhifuko.com/news/japan/10227/

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ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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