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光老化によるシワと毛穴にフラクショナルレーザーが有効、ピコ秒とナノ秒を比較、いずれも肌質改善に効果、中国の研究グループが美容皮膚科誌で報告

カレンダー2025.7.11 フォルダー最新研究
フラクショナルレーザーの効果。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

フラクショナルレーザーの効果。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 光老化(フォトエイジング)によるシワや毛穴の目立ちに対して、フラクショナルレーザーの効果が報告された。

 中国の研究グループが、2025年7月に美容皮膚科学専門誌「Journal of Cosmetic Dermatology」で発表した。

シワが減少し、毛穴改善

肌質の改善を求めて。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

肌質の改善を求めて。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 研究目的→
    光老化に対する2種類のフラクショナルNd:YAGレーザー(ピコ秒レーザー〈FxPico〉とQスイッチNd:YAGレーザー〈QSF-Nd:YAG〉)の効果を比較検討。
  • 試験の概要→
    フィッツパトリックスキンタイプIII〜IVの30人(平均年齢46.8歳)を対象に、2週間おきに計5回治療を実施。顔を左右に分け、片側にピコ秒、もう片側にナノ秒を照射。
  • 結果→
    両レーザーとも3カ月後にシワ、毛穴、肌の質感が有意に改善。コラーゲンの増加も確認され、両者間で有意な差は認められなかった。

 研究グループが検討したのは、光老化に対する2種類のフラクショナルNd:YAGレーザーの効果。一方はピコ秒レーザー(FxPico)、もう一方はQスイッチNd:YAGレーザー(QSF-Nd:YAG)であり、それぞれの効果を比較することを目的とした。いずれも非アブレーティブのレーザーなので、皮膚に強い熱損傷を与えるものではない。

※ナノ秒レーザー、ピコ秒レーザーはそれぞれ1億~10億分の1秒、10億~100億分の1秒という単位の短いパルス幅でレーザーを照射する技術。なお、100万分の1秒はマイクロ秒単位のレーザー。Qスイッチルビーレーザーのパルス幅は20〜40ナノ秒、Nd:YAGは5〜10ナノ秒、アレキサンドライトは50〜100ナノ秒とされる。ピコ秒レーザーはさらに短い250~750ピコ秒のパルス幅でレーザーを出すことができる。これらの技術により、レーザーにより発生させる熱エネルギーをターゲットに集中させやすくなる。

 試験の対象としたのは、フィッツパトリックスキンタイプIII〜IV(中等度の肌色と日焼け反応)に該当する30人(平均年齢46.8歳)。2週間おきに計5回の治療を実施。6mm×6mmの照射範囲に対し10×10または9×9の密度でレーザー照射した。顔を左右に分け、片側にピコ秒レーザー、もう片側にナノ秒レーザーを照射し、その効果は、肌解析機器「VISIA」による画像解析、顕微鏡による組織観察、および組織学的評価により検討された。

 その結果、両レーザーとも3カ月後にはシワ、毛穴、肌の質感が有意に改善した。例えば、シワの平均数はピコ秒レーザー側で84.5本から52.1本、ナノ秒レーザー側で89.4本から50.2本に減少した。毛穴数や肌質スコアも同様に改善が見られた。真皮におけるコラーゲンの増加など、組織学的変化も確認された。効果の大きさに、両レーザー間で有意な差はみられなかった。

ナノ秒レーザーは経済的

光老化の問題は避けたい。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

光老化の問題は避けたい。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 副作用と安全性→
    両レーザーとも副作用は一時的な赤み、点状出血、軽いかゆみにとどまり、重大な有害事象は確認されなかった。
  • 痛みの比較→
    痛みの平均スコアはピコ秒レーザー群で2.84、ナノ秒レーザー群で1.48。ピコ秒レーザーの方が痛みはやや強かった。
  • コスト面での評価→
    ナノ秒レーザーは機器・運用コストが比較的低く、経済的な選択肢としての有用性があるとされた。

 副作用はいずれのレーザーでも一時的な赤み、点状出血、軽いかゆみにとどまった。重大な有害事象は確認されていない。痛みの平均スコアは、ピコ秒レーザー群で2.84、ナノ秒レーザー群で1.48と、ピコ秒レーザーの方が高かった。

 ナノ秒レーザーは機器コストや運用コストが比較的低く、経済的な選択肢としての有用性が指摘されている。

 身体への負担やダウンタイムが少ない光老化の治療において、フラクショナルNd:YAGレーザーの有効性と安全性を支持する結果となった。

 光老化は、紫外線に長期間さらされて、皮膚の構造を保つ、体内で最も豊富なコラーゲンの一種であるI型コラーゲンが破壊され、シワやたるみを引き起こす現象。紫外線が強まる季節を迎え、皮膚の光老化リスクが高まっている。その改善の方法として、フラクショナルレーザーの効果が注目されつつある。

参考文献

Tang Q, Che Q, Xie Y, Liu L, Gao Y, Zhou Z, Zhao P, He Q, Xie L, Wang W, Wa Q. The Comparison of the Efficacy and Safety of Fractional 1064 nm Nd:YAG Picosecond Laser and Fractional Q-Switched 1064-nm Nd:YAG Laser in the Improvement of Photoaging: A Split-Face Study. J Cosmet Dermatol. 2025 Jul;24(7):e70307. doi: 10.1111/jocd.70307. PMID: 40589289; PMCID: PMC12210001.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40589289/

やってはいけない、タトゥーの白い色素のレーザー除去──刺青レーザー除去の進化と課題とは、東海大学形成外科教授の河野太郎氏に聞く
https://biyouhifuko.com/news/interview/6208/

ヒアルロン酸フィラーに光老化への効果、コラーゲン増やし肌の若返り、米国ミシガン大学が解明
https://biyouhifuko.com/news/research/5830/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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