
暑さが老化と関連?画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
暑さが、私たちの体の老化を静かに進めている可能性がある――。
米国の高齢者約3700人を対象とした全国調査により、暑い地域に住む人ほど、体の中で老化が進みやすい傾向があることが明らかになった。
この研究結果は、2025年2月に米南カリフォルニア大学などの研究チームによって発表された。
「暑さ」と「老化」の意外な関係とは

エピジェネティック・クロックで体の年齢を測定。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- DNAメチル化による老化測定→DNAメチル化は遺伝子の働きを調整する仕組みで、環境要因で変化する。これをもとに体の老化度を測る「エピジェネティック・クロック」が注目されている。
- 高齢者3700人を対象に分析→アメリカの高齢者約3700人の血液を使い、居住地域の気温や湿度から算出された「ヒートインデックス」と老化の進行の関係を調査。
- 暑さと老化の関連を複数期間で検証→採血前後の短期から6年にわたる長期まで、暑さの影響が老化とどう関係しているかを詳細に評価した。
近年、地球温暖化の影響で極端に暑い日が増えており、熱中症や心臓病などのリスクが高まっている。こうした健康リスクの裏側にある“体の中の変化”を捉える新たな手がかりとして、今回の研究では「DNAメチル化」という分子レベルの仕組みに注目している。
「DNAメチル化」は、遺伝子の働きを調整するスイッチのような役割を持ち、環境の影響を受けて変化することが知られている。
こうしたDNAメチル化の変化をもとに「体の年齢(生物学的年齢)」を推定できる「エピジェネティック・クロック」という指標が注目されている。この時計は、実年齢よりも老化の進み具合を測定でき、病気のなりやすさや寿命の予測にも使われ始めている。
研究チームは、2016年の米国「健康と引退に関する調査」に参加した高齢者約3700人の血液サンプルを分析し、体内の老化の進み具合と、住んでいる地域の暑さとの関係を調べた。
具体的には、採血した日を起点に、過去6年間にわたる居住地域の「ヒートインデックス」(気温と湿度から計算される体感温度)を基に、どれだけ「暑い日」があったかを分析した。全米の気象データを使い、各地域の日ごとの暑さを「注意レベル」「極めて注意レベル」などに分類して評価している。
短期間(採血の前後1週間~1カ月)や中期間(2カ月)、さらには1年・6年といった長期間にわたる暑さの影響が、体の中で進む老化の度合いと関係しているかを調べた。
暑さが体の老化を加速 特に長期間の暑さが影響大

暑さと老化の関連とは?画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 暑さが老化を加速→短期~長期の暑さにより、DNAメチル化指標で老化が進行。PCPhenoAgeでは短期間で最大1.15年、長期では2.88年の老化加速が確認された。
- 老化の静かな進行→これまでの熱中症などの急性リスクに加え、慢性的な暑さが“静かな老化”を引き起こすことが示された。
- 美容医療への応用視点→ロンジェビリティ(長寿・若さの維持)を重視する美容分野でも、暑さ対策の重要性が示された。
調査の結果、暑さが体の中で進む老化に影響を与えていることが明らかになった。
特に「PCPhenoAge」という老化の指標では、短期間に全日が高温であった場合、最大1.15年相当の老化加速が見られた。30日・60日といった中期の暑さにより、主にPCPhenoAgeで影響が見られた。
さらに、1年~6年といった長期的な暑さの蓄積では、「PCGrimAge」や「DunedinPACE」といった他の老化の指標にも影響が現れ、老化のスピードが全体的に加速していた。
例えば、6年間にわたって「極めて注意」レベルの暑さが続いた地域に住んでいた高齢者では、長期的な極端な高温にさらされたことによりPCPhenoAgeが最大で2.88年加速したケースもあった。DunedinPACEの指標で、老化の速度が最大5%上昇していた。
また、年齢、性別、人種、教育、所得といった背景の違いによる影響はほとんど見られず、暑さによる老化の加速は広く社会的背景に関わらず一貫した傾向が見られた。
研究は、短期間の暑さから6年に及ぶ長期的な暑さまで、異なる時間軸における高温曝露が体の老化にどう影響するのかを明らかにしたものであり、これまでにない視点での関係性が示された。
特に、わずか1週間という短期間の暑さでも体の中で老化が進んでいること、また長期間にわたる暑さでは、老化の加速がより深刻で、複数のエピジェネティック指標に影響が見られた点は重要である。
これまで「暑さ=熱中症や死亡リスク」といった急性の健康被害ばかりが注目されてきたが、今回の研究は、暑さが目に見えない形で“静かに老化を進める”可能性があることを示しており、日々の気温や住環境が体に与える影響を再認識させる結果となった。
なお、研究で確認されているわけではないが、暑さが睡眠や運動量に影響し、それが老化に寄与する可能性もあると考察されている。
今後、気候変動にともなう猛暑の頻度増加が見込まれる中で、こうした分子レベルの生物学的影響をふまえた「エアコン使用の補助」や「高齢者向けの住環境整備」などの将来的な公衆衛生施策への示唆を与える可能性がある。
美容医療の分野で、ロンジェビリティが注目されているが、暑さにも気を付ける必要がありそうだ。
