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フェイスリフトは過去の美容施術で難易度が変わる 糸リフトのほか、注入や照射系など過去の履歴を伝えるのが重要、米国専門家がガイドライン提案

カレンダー2025.12.9 フォルダー最新研究
フェイスリフトでは、過去の施術次第で対策を考える必要がある。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

フェイスリフトでは、過去の施術次第で対策を考える必要がある。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 ボツリヌス療法やヒアルロン酸注入、糸リフト、超音波や高周波(RF)の施術が広がる中で、フェイスリフトの施術を行う際に、過去に行った「切らない美容医療」の影響があるようだ。

 そのため、フェイスリフトを行う際には、こうした影響に対応する必要があり、施術前に過去の美容医療の履歴を正確に伝えることが重要となる。

 米国の研究グループが2025年7月にガイドラインを提案している。

組織の状態が変わることに対応必要

フェイスリフトでは、過去の施術の影響を考える。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

フェイスリフトでは、過去の施術の影響を考える。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 非外科的施術では組織が変化 → フィラーやエネルギーデバイスの使用は、後の手術に影響する可能性があるとして、ガイドラインが示されている。
  • バイオスティミュレーター・糸リフト後6〜9カ月は注意が必要 → PLLAやCaHAなどの注入剤、糸リフト直後のフェイスリフトは、線維化や癒着で組織が動きにくくなる可能性がある。
  • 深部の加熱系デバイスは注意が必要 → 高周波やプラズマ機器などSMAS層まで届く施術は、血流低下や組織硬化を招く可能性がある。永久フィラー(PMMA・シリコン)は慢性炎症を残し、フェイスリフトの妨げになる可能性。

 論文によれば、非外科的施術は組織の状態が変わることに注意が必要になる。その判断をするためのガイドラインが示されている。以下では、その一部を見ていく。

 まず、ヒアルロン酸などのフィラー注入や皮膚の浅い層へのレーザーのようなエネルギーデバイスの施術は、その後の手術への影響は少ないという。

 一方で、PLLA(ポリ-L-乳酸)やCaHA(カルシウムハイドロキシアパタイト)など、コラーゲンを増やすタイプの注入剤であるバイオスティミュレーター、また糸リフトを行った状態で、6~9カ月以内に手術を行った場合には、手術への影響が現れる。

 さらに、高周波やヘリウムプラズマなど、フェイスリフトで引き上げる深い層であるSMAS(Superficial Musculo-Aponeurotic System)や筋層に届くような、皮膚深層へのエネルギーデバイスの施術は影響が大きい。組織が硬くなって動きにくくなる線維化や、皮膚の層がくっついてしまう癒着が起きやすくなるためだ。

 この場合、組織の層が剥がれにくくなるほか、過去の施術の影響で血流が低下する可能性もある。また、特に高周波では皮膚の脂肪、線維、血管、リンパ管に熱変化を加えるため、組織が硬く厚くなるなどの課題につながるという。

 このほか、ポリメタクリレート(PMMA)やシリコンなどの永久フィラーは、肉芽、硬結、慢性炎症が長期に残るケースがあり、フェイスリフトの障害になりやすい。

※肉芽とは皮膚の細胞が刺激に反応して異常に増殖する状態。硬結は組織が硬くなること、慢性炎症は赤みなどの組織反応が過剰に続く状態を指す。

 このように、非外科的施術によって顔内部の組織の「分布図」が変化するため、フェイスリフトの難易度が上がることは認識しておくと良さそうだ。

治療歴の見える化など必要に

医師には過去の施術について伝える。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

医師には過去の施術について伝える。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 非外科的施術後でも手術は可能 → 論文では「適切な管理を行えばフェイスリフトは実施できる」と明示。ただし術前・術中・術後の最適化が不可欠とされた。
  • 施術歴の共有と治療間隔の確保が鍵 → フィラーの種類や注入層、糸リフトや照射治療の履歴を医師に正確に伝えることが必要。施術の種類ごとに、数カ月〜1年のインターバルを空けることが推奨された。
  • 術前の溶解・術中の工夫・術後管理 → 影響が懸念されるヒアルロン酸は手術2週間以上前にヒアルロニダーゼで溶解。手術法の調整や術後の慎重な経過観察も求められる。

 論文が強調しているのは、非外科的施術を受けた後でもフェイスリフトは可能であるということだ。

 その上で、「術前〜術中〜術後の管理を最適化すること」が重要になる。

 術前には、注入剤の種類・量・注入層、糸リフトの有無と種類、さらにエネルギーデバイスの施術歴(種類や照射の深度など)を明確に伝える必要がある。皮膚の硬さ、癒着、リンパ流などを診察で確認することも必須とされている。

 ヒアルロン酸フィラーが手術に影響すると判断される場合には、2週間以上前にヒアルロニダーゼで溶解することが推奨される。

 治療間隔の調整も重要で、吸収型の糸リフトは6~9カ月、深層へのエネルギーデバイスは数カ月〜1年、デオキシコール酸注射は1カ月〜半年、レーザーやマイクロニードルは3〜6カ月の間隔を空けることが推奨されている。

 術中の手術方法にも工夫が求められ、術後も場合に応じた注意が必要になると説明されている。

 フェイスリフトは日本でも主要な美容外科手術の一つであり、非外科的施術の普及が進む中、このような海外のガイドラインは臨床現場での参考になるだろう。

参考文献

Shridharani SM, Palm MD, Jarmuz T, Somenek M, Nayak LM, Saadat D, Indeyeva Y, Sykes J. Optimizing Aesthetic Facial Surgery Outcomes Following Minimally Invasive Treatments: Guidelines for Perioperative Management. Aesthet Surg J Open Forum. 2025 Jul 4;7:ojaf087. doi: 10.1093/asjof/ojaf087. PMID: 40852439; PMCID: PMC12368962.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40852439/

糸リフトの技術がたるみを引き上げシワを改善する、美容皮膚科の医学誌で多彩なスレッドを解説、韓国の美容外科医らの論文
https://biyouhifuko.com/news/research/8835/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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