ヒフコNEWS 美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイト

眉のアートメイク後にオレンジ色の皮膚症状が現れた、肺やリンパ節にも異常 「マイクロブレーディング」と「サルコイドーシス」 スロベニアの研究グループが2症例を報告【アートメイクの研究を見ていく】

カレンダー2026.7.17 フォルダー最新研究
施術者が手袋を着け、専用器具で眉にアートメイクを施している様子。

眉毛を1本ずつ描くように色素を入れるマイクロブレーディング。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

 アートメイクの研究について引き続き見ていく。

 眉のアートメイクの一種であるマイクロブレーディングを受けた後、皮膚にオレンジ色の症状が現れ、全身性の「サルコイドーシス」が見つかった症例が報告されている。スロベニアの研究グループが2024年4月に、33歳の女性2人の事例を発表した。

眉のオレンジ色を帯びた皮膚症状(皮疹)

眉のアートメイク後に、眉周辺へオレンジ色を帯びた皮膚症状が出ている症例写真。

眉のマイクロブレーディング後に現れたオレンジ色を帯びた皮膚症状。サルコイドーシスとの関連が報告された。(出典:Journal of Medical Case Reports. 2024;18:221.)

  • 施術後にオレンジ色の皮膚症状→ 眉のマイクロブレーディング後、赤みや盛り上がりを伴う皮膚症状が現れた。
  • 2人ともサルコイドーシス→ 皮膚の生検で特徴的な肉芽腫が確認され、全身性の病気と診断された。
  • 肺やリンパ節にも病変→ 胸部画像検査で異常が見つかり、皮膚だけの反応ではないことが分かった。

 症状が現れたのは、眉毛を1本ずつ描くように色素を入れる「マイクロブレーディング」と呼ばれる施術の後だ。

 マイクロブレーディングは、細い針を使って眉の形に沿って皮膚へ色素を入れる美容施術だ。一般的なタトゥーよりも浅い部分に色素を入れる方法で、効果は通常12~18カ月程度続くとされる。

 今回報告されたのは、いずれも33歳の女性。2人ともマイクロブレーディングを受けた後、眉周辺の皮膚にオレンジ色を帯びた皮膚症状(皮疹)が現れた。赤みを帯びた斑点や盛り上がりができる状態だ。

 詳しい検査を行ったところ、皮膚だけでなく全身に影響する「サルコイドーシス」であることが判明した。サルコイドーシスは、免疫反応によって「肉芽腫」と呼ばれる小さな炎症のかたまりが体内にできる病気である。

 2人の眉周辺から皮膚の一部を採取して調べたところ、サルコイドーシスに特徴的な肉芽腫が確認された。さらに胸部の画像検査を行うと、肺やリンパ節にも異常が見つかった。

 1人目の女性は、マイクロブレーディングを1回受けた約1年後に、眉周辺へ赤く盛り上がった皮疹が現れた。医療機関を受診した時点で、症状は約3年間続いていた。

 当初は、色素などに対するアレルギー性の皮膚炎も疑われたものの、皮膚に接触させる検査であるパッチテストによって否定された。皮膚の組織を調べる生検を行った結果、サルコイドーシスに一致する肉芽腫性の炎症が確認された。

 胸部X線検査では、肺の入り口付近にあるリンパ節の腫れに加え、肺に網目状や小さなしこり状の影が見つかった。本人にせきや息苦しさなどの症状はなかったものの、その後の検査で肺の病変の進行と、肺が硬くなる「線維化」の初期変化が確認された。

 このため、全身の炎症を抑えるステロイド薬による治療が始まった。治療開始から3カ月後には眉の皮膚症状が消失した。その後の経過観察では、肺に見られた網目状の異常も改善した。

 2人目の女性は、6年間にわたり毎年マイクロブレーディングを受け、その後、眉周辺に同じような皮疹が現れた。皮膚の組織検査でサルコイドーシスと診断され、肺やリンパ節にも病変が確認された。尿に排出されるカルシウムの量が増える変化も見られた。

 一方、肺病変には線維化や進行が認められなかったため、全身に作用する薬による治療は行われなかった。肺の病変は約6カ月後の画像検査で消失し、眉の皮膚症状も1年後には大きく改善した。

美容施術後の長引くオレンジ色の皮疹に注意

横たわる女性の眉に、施術者が専用ペン型器具でアートメイクを行っている様子。

眉のアートメイクは美容施術として広がる一方、長引く皮膚症状には注意が必要。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

  • 長引く皮疹は要注意→ 赤色やオレンジ色の斑点、盛り上がり、しこりが続く場合は皮膚科での評価が必要になる。
  • 美容施術がきっかけの可能性→ 色素などの異物が免疫反応を刺激し、潜在していた病気が表面化した可能性がある。
  • 因果関係は未確定→ 2症例の報告にとどまり、マイクロブレーディングが直接の原因と証明されたわけではない。

 これまでにも、タトゥーやマイクロニードリング、皮膚充填剤の注入、ボツリヌス製剤の注射などを受けた後に、サルコイドーシスや肉芽腫性の炎症が見つかった症例が報告されている。

 一方、マイクロブレーディング後にサルコイドーシスが確認された例は極めて少ない。過去に報告された症例では皮膚だけに病変が見られたが、今回の2人では、眉周辺の皮膚に加えて肺やリンパ節にも異常が確認された点が特徴だ。

 サルコイドーシスは、症状が軽かったり、病気に特有の症状が現れなかったりするため、診断が遅れることがある。皮膚症状は患者の20~35%に見られ、病気を見つける最初の手掛かりになることもある。ただし、湿疹やアレルギー反応など、ほかの皮膚疾患と見分けにくい場合もあり、外見だけで判断するのは難しい。

 研究グループは、皮膚や皮下組織に入った色素などの異物が、発症しやすい体質を持つ人の免疫反応を刺激し、サルコイドーシスが表面化するきっかけになった可能性を指摘している。

 また、施術を繰り返すことで色素が皮膚内に蓄積し、一定の量を超えた段階で症状が現れる可能性も考えられた。1人目は1回の施術から約1年後、2人目は施術を6年間繰り返した後に皮膚症状が現れており、発症までの期間には大きな違いがあった。

 ただし、今回の報告は2人の症例に基づくもの。マイクロブレーディングがサルコイドーシスを直接引き起こしたと証明されたわけではないとされる。施術前から存在していた病気が、眉の皮膚症状をきっかけに発見された可能性も残されている。

 とはいえ、アートメイクなどの施術を受けた場所に、赤色やオレンジ色の斑点、盛り上がり、しこりなどが長く続く場合には注意を要する。単なるアレルギーや色素への反応と判断せず、皮膚科を受診して組織検査を検討することが重要だろう。

 既にサルコイドーシスと診断されている人に対しては、皮膚や皮下に色素や薬剤などを入れる美容施術が症状に影響する可能性を、事前に伝える必要があると研究グループは指摘している。

 マイクロブレーディング後のサルコイドーシスの報告は極めて少ないと考えられるが、アートメイクの後に起こり得る問題の一つとして理解しておくとよいだろう。

参考文献

Merzel Šabović EK, Starbek Zorko M, Hosta V, et al. Microblading reaction as a manifestation of systemic sarcoidosis: two case reports and a review of the literature. Journal of Medical Case Reports. 2024;18:221.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11040864/

ヒフコNEWSは、国内外の美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイトです。美容医療に関連するニュースを中立的な立場から提供しています。それらのニュースにはポジティブな話題もネガティブな話題もありますが、それらは必ずしも美容医療分野全体を反映しているわけではありません。当サイトの目標は、豊富な情報を提供し、個人が美容医療に関して適切な判断を下せるように支援することです。また、当サイトが美容医療の利用を勧めることはありません。

Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

お問い合わせ

下記よりお気軽にお問い合わせ・ご相談ください。