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体の女性化手術、52人中3人に血栓塞栓症 無症状の深部静脈血栓症も、複合手術のリスクに注意 スペインの研究グループが報告

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体の女性化手術の前後で、正面から見た胸腹部と腰まわりのシルエット変化を比較した写真。

体の女性化手術の前後比較。正面から見た体幹部の輪郭変化が示されている。(出典:Aslaniら、Aesthetic Plastic Surgery 2026)

 ウエストを細くし、お尻にボリュームを持たせるなど、体全体のシルエットを女性的に近づける「Body Feminization Surgery(BFS、体の女性化手術)」。

 スペインの研究グループが2026年8月、こうした手術を受けた人で血栓症が起きるケースがあることを美容形成外科学誌で発表した。

脂肪吸引、お尻の形成、肋骨の手術を一度に

体の女性化手術の前後で、横から見たウエストと臀部のラインを比較した写真。

体の女性化手術の前後比較。横から見たウエスト、腹部、臀部のラインの変化が示されている。(出典:Aslaniら、Aesthetic Plastic Surgery 2026)

  • 研究対象→体の女性化を目的に複数の美容外科手術を受けた52人を対象に、血栓塞栓症の発生を調べた。
  • 手術内容→全員が360度脂肪吸引、お尻への脂肪注入、肋骨のリモデリングを受け、一部ではお尻のインプラントも併用された。
  • 血栓対策→予防薬や圧迫を行った上で、手術後1、3、7、10日目にドップラー超音波検査を実施した。

 体の女性化手術は、性器を対象とする性別適合手術とは異なり、体の輪郭そのものを女性的なシルエットに近づけることを目的とする美容外科手術だ。研究グループによると、米国では女性化手術が、MTF(Male to Female、出生時に男性と割り当てられ、女性への移行を希望する人)のためのジェンダー肯定手術(gender-affirming surgery)の約28.3%を占めるとされる。特に脂肪吸引やお尻の形成が発展し、さらに下部の肋骨を調整してウエストを細く見せる方法も組み合わせられるようになっている。

 研究グループは、こうした体の女性化を目的に複数の手術を組み合わせて受けた人を調査した。対象となったのは、2023年11月から2025年2月までにハイブリッドBFSを受けた52人で、平均年齢は32.1歳。全員が360度の脂肪吸引、お尻への脂肪注入、肋骨のリモデリングを受け、18人ではお尻のインプラントも併用された。手術時間は、お尻のインプラントを使わない場合で平均140分、使う場合で180分だった。

 こうした複合手術では、単に手術する部位が多いだけではなく、術後の管理も複雑になる。対象者は手術後最初の24時間を仰向けで過ごした後、4週間にわたってうつ伏せ姿勢を取るよう指示され、肋骨を支える装具や圧迫コルセットも使用した。

 研究グループが特に注目したのが、静脈内に血の塊ができる血栓塞栓症だ。対象者の血栓リスクは平均的には中くらいと評価されており、血液を固まりにくくする薬の投与や、機械的な圧迫による予防策も実施された。それでも血栓が生じる可能性を調べるため、手術後1、3、7、10日目にドップラー超音波検査を行った。

血栓塞栓症、症状がない人も

体の女性化手術の前後で、背中から見た腰、臀部、体幹のシルエット変化を比較した写真。

体の女性化手術の前後比較。腰のくびれや臀部の形状変化が示されている。(出典:Aslaniら、Aesthetic Plastic Surgery 2026)

  • 血栓塞栓症→52人中3人(5.7%)に血栓塞栓症が確認され、2人は深部静脈血栓症、1人は肺血栓塞栓症だった。
  • 無症状で発見→深部静脈血栓症の2人には症状がなく、定期的な超音波検査によって血栓が見つかった。
  • 複数の要因→手術時間や術後の姿勢、圧迫装具、動きにくさなど、複数の要因が血栓リスクに関係する可能性が指摘された。

 調査の結果、52人中3人(5.7%)に血栓塞栓症が確認された。このうち2人(3.8%)は深部静脈血栓症だった。重要なのは、この2人には症状がなく、定期的な超音波検査などによって血栓が見つかったことだ。

 さらに1人(1.9%)では肺血栓塞栓症が起きた。このケースでは、手術を受けた本人が医療側の指示に反して、手術後早期に長距離の航空機移動をしており、研究グループはこれが手術とは別のリスク要因になった可能性を指摘している。そのため、3件すべてを手術そのものによる合併症と単純に捉えることはできない。

 なぜ血栓が問題になるのか。研究グループは、手術時間の長さに加え、術後に求められる姿勢、圧迫用の装具、動きにくさなど、複数の周術期要因が重なる可能性に注目している。

 研究グループは今回の結果について、手術そのものが危険だと結論づけるものではないとしながらも、血栓リスクを考える上で注意すべき結果としている。

 体の女性化手術は、望むボディラインを実現する新しい美容外科領域として発展している。一方、手術を組み合わせるほど、個々の施術だけを見ていては把握しにくいリスクが生じる可能性がある点には注意が必要だ。

参考文献

Aslani A, Frontado G, Arani A. Body Feminization Surgery 4.0: Do We Need a Safety Update? Aesthetic Plastic Surgery. Published 24 August 2026.
https://link.springer.com/article/10.1007/s00266-026-06206-2

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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